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ゾゾタウンを展開するスタートトゥデイが、昨年の10月31日から運用を開始したショールーミングアプリ「WEAR」を4月30日で中止すると発表した。
開始から4月初めまでのダウンロード件数は、約200万件。3月ひと月だけで利用者数は何と250万人に及んでいる。売りもののコーディネート投稿も、40万件に達したというから、WEARはスマホによる販売起点のイグニションになったことは、間違いないだろう。
でも、実際の売上げは月間で1億円程度で、業界で注目されたほどマーケットは動かなかったようだ。ゾゾタウンと扱うブランドが競合する百貨店、駅ビル、ショッピングセンターは、ほっと胸を撫で下ろしたのではないだろうか。
ただ、WEARを含めたオムニチャンネル化は、「デザインし作って売る」といたって古典的なアパレルビジネスをより近代化させるには不可欠である。特に大手セレクトショップがブランド力にものを言わせてSPA化を進め、量産した商品を売り減らすチャンネルとしかEコマースを見ていないのなら、顧客をなおざりにしているように思える。
これだけ似通ったブランドやショップが溢れる中、作りすぎた服を顧客は高い金を出して買うはずがない。売り側はそうした在庫を捌くために、販売チャンネルを増やすというのも、おかしな話。いくら流通ルートを増やそうとも、売れない商品は売れないのである。
ゾゾタウンのサイトを見ても、ビルインテナントの店頭を見ても、SOLD OUTの商品に共通するのは、上質でデザインが優れ、こなれた価格。だからこそ、店頭に流れる商品の在庫を最適化し、店頭では秀逸なMDのもとできれいな売場演出をしなければならない。
売上げを上げるためには販売や機会のロスをなくしたいのはわかる。でも、余分な在庫投入で売場が汚いと店にも商品にも魅力を感じず、お客はドン引きしてしまう。無機質で整然としたラグジュアリーブランドの売場が良いとは言わないが、お客は見やすくきれいな売場で接客を受けるからこそ、買う気になれるというものだ。
特にセレクトショップが専門店の位置づけなら、きちんと接客して販売し、セット率や客単価を上げるのが本筋だ。だから、大手であればこそ、商品を絞り込んでキレのあるMDを作り上げ、余分な在庫は物流基地にストックすればいい。
Eコマースを店舗販売との連動ツールとしてオムニチャンネルを進めるなら、実店舗は余分なストックを排除できる。省スペース、省人数で低コストを実現できて、最大の売上げを期待できる意味で、大いに結構なことだと思う。
もっとも、個店レベルなら、商品は自社在庫で、販売管理も自由にできるから、オムニチャンネル化は進めやすい。ところが、百貨店のように委託販売、あるいは商業ビルのようにテナントの歩率家賃で食っているところは、そう簡単にいかない。
WEAR中止の背景には、「百貨店やデベロッパーが猛反発した」こともあると、業界では公然の事実として語られている。しかし、これだけインターネットが発達した中で、販売チャンネルを多面的にすることが、売上げを上げる有効な手段であるのは言うまでもない。彼らが自社の利害だけでそれに待ったをかけるのであれば、全くお客を見ていないということだ。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/4a/eb/e50894c92e845870a33fc7287c699452.jpg)
先日、三越伊勢丹グループ傘下にある岩田屋の「ワイズ」に出かけた。メンズは休止中だから、シーズンデザインや素材のトレンドをチェックするには、レディスを見なければならない。そこで売場のスタッフから、「5階メンズのプロモーションスペースで、ヨウジヤマモトが期間限定ショップを展開している」という話を聞いた。「えっ、聞いてないよ」である。
ヨウジヤマモトはかなり前に九州から撤退し、ブランドメーカー側の顧客管理ができていないのはやむを得ない。でも、告知は館内ポスターがエスカレーターの壁面の掲示されただけで、サイトにはいくら探しても見当たらない。これではせっかくの休眠顧客を逃し、販売ロスを生むのではないかと思う。
オムニチャンネル化は、何も販売手法の選択肢を拡大するだけではない。チャンネルが広がることで、店舗販売だけでは捕捉で来ないミニマムカスタマーにアプローチできる機会が得られるのだ。その意味でも、ヨウジヤマモトのような顧客が限定されるブランドこそ、ネットチャンネルの方が捕捉できる可能性は高いだろう。
駅ビルやショッピングセンターは、テナントの歩率家賃で運営するため、オムニチャンネル化になじまないところはある。むしろ、百貨店は場所貸しの委託販売、消化仕入れにより、自店の売上げを計上するのだから、ショールーミングとEコマースにもっと踏み出してもいいのではないかと思う。
さらに発展してパリやNYのプレコレクション、あるいはこだわりをもつ国内アパレルの高感度アイテムについて、春夏と秋冬の年2回くらい期間限定ショップをやってもいいのではないか。ネットだけでは購入に二の足を踏むお客も、試着ができれば顧客化される可能性は高いからだ。
ハコにして常時展開するには売上げが伴わないブランドでも、期間限定の催事ならお客を捉まえる可能性は高いはずだ。NBを中心に毎年デビューするものをただリーシングするだけでは、硬直化したマーケットを活性化できない。
WEARがスマホによるショッピングの新たなスタイルを創造した点では、「功」である。それを百貨店やデベロッパーが競合相手として「罪」と見るなら、そこから何も学んでいないということになる。
むしろ、ショールーミングとEコマースをオムニチャンネルと連動させることで、新たな顧客が発掘できると考えるなら、ビジネスは格段に広がるはずである。掘り起こせていない市場、休眠している顧客に目を向ける意味で、業界関係者はWEARから多くを学び、次なる展開を考えなければならないと思う。
開始から4月初めまでのダウンロード件数は、約200万件。3月ひと月だけで利用者数は何と250万人に及んでいる。売りもののコーディネート投稿も、40万件に達したというから、WEARはスマホによる販売起点のイグニションになったことは、間違いないだろう。
でも、実際の売上げは月間で1億円程度で、業界で注目されたほどマーケットは動かなかったようだ。ゾゾタウンと扱うブランドが競合する百貨店、駅ビル、ショッピングセンターは、ほっと胸を撫で下ろしたのではないだろうか。
ただ、WEARを含めたオムニチャンネル化は、「デザインし作って売る」といたって古典的なアパレルビジネスをより近代化させるには不可欠である。特に大手セレクトショップがブランド力にものを言わせてSPA化を進め、量産した商品を売り減らすチャンネルとしかEコマースを見ていないのなら、顧客をなおざりにしているように思える。
これだけ似通ったブランドやショップが溢れる中、作りすぎた服を顧客は高い金を出して買うはずがない。売り側はそうした在庫を捌くために、販売チャンネルを増やすというのも、おかしな話。いくら流通ルートを増やそうとも、売れない商品は売れないのである。
ゾゾタウンのサイトを見ても、ビルインテナントの店頭を見ても、SOLD OUTの商品に共通するのは、上質でデザインが優れ、こなれた価格。だからこそ、店頭に流れる商品の在庫を最適化し、店頭では秀逸なMDのもとできれいな売場演出をしなければならない。
売上げを上げるためには販売や機会のロスをなくしたいのはわかる。でも、余分な在庫投入で売場が汚いと店にも商品にも魅力を感じず、お客はドン引きしてしまう。無機質で整然としたラグジュアリーブランドの売場が良いとは言わないが、お客は見やすくきれいな売場で接客を受けるからこそ、買う気になれるというものだ。
特にセレクトショップが専門店の位置づけなら、きちんと接客して販売し、セット率や客単価を上げるのが本筋だ。だから、大手であればこそ、商品を絞り込んでキレのあるMDを作り上げ、余分な在庫は物流基地にストックすればいい。
Eコマースを店舗販売との連動ツールとしてオムニチャンネルを進めるなら、実店舗は余分なストックを排除できる。省スペース、省人数で低コストを実現できて、最大の売上げを期待できる意味で、大いに結構なことだと思う。
もっとも、個店レベルなら、商品は自社在庫で、販売管理も自由にできるから、オムニチャンネル化は進めやすい。ところが、百貨店のように委託販売、あるいは商業ビルのようにテナントの歩率家賃で食っているところは、そう簡単にいかない。
WEAR中止の背景には、「百貨店やデベロッパーが猛反発した」こともあると、業界では公然の事実として語られている。しかし、これだけインターネットが発達した中で、販売チャンネルを多面的にすることが、売上げを上げる有効な手段であるのは言うまでもない。彼らが自社の利害だけでそれに待ったをかけるのであれば、全くお客を見ていないということだ。
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先日、三越伊勢丹グループ傘下にある岩田屋の「ワイズ」に出かけた。メンズは休止中だから、シーズンデザインや素材のトレンドをチェックするには、レディスを見なければならない。そこで売場のスタッフから、「5階メンズのプロモーションスペースで、ヨウジヤマモトが期間限定ショップを展開している」という話を聞いた。「えっ、聞いてないよ」である。
ヨウジヤマモトはかなり前に九州から撤退し、ブランドメーカー側の顧客管理ができていないのはやむを得ない。でも、告知は館内ポスターがエスカレーターの壁面の掲示されただけで、サイトにはいくら探しても見当たらない。これではせっかくの休眠顧客を逃し、販売ロスを生むのではないかと思う。
オムニチャンネル化は、何も販売手法の選択肢を拡大するだけではない。チャンネルが広がることで、店舗販売だけでは捕捉で来ないミニマムカスタマーにアプローチできる機会が得られるのだ。その意味でも、ヨウジヤマモトのような顧客が限定されるブランドこそ、ネットチャンネルの方が捕捉できる可能性は高いだろう。
駅ビルやショッピングセンターは、テナントの歩率家賃で運営するため、オムニチャンネル化になじまないところはある。むしろ、百貨店は場所貸しの委託販売、消化仕入れにより、自店の売上げを計上するのだから、ショールーミングとEコマースにもっと踏み出してもいいのではないかと思う。
さらに発展してパリやNYのプレコレクション、あるいはこだわりをもつ国内アパレルの高感度アイテムについて、春夏と秋冬の年2回くらい期間限定ショップをやってもいいのではないか。ネットだけでは購入に二の足を踏むお客も、試着ができれば顧客化される可能性は高いからだ。
ハコにして常時展開するには売上げが伴わないブランドでも、期間限定の催事ならお客を捉まえる可能性は高いはずだ。NBを中心に毎年デビューするものをただリーシングするだけでは、硬直化したマーケットを活性化できない。
WEARがスマホによるショッピングの新たなスタイルを創造した点では、「功」である。それを百貨店やデベロッパーが競合相手として「罪」と見るなら、そこから何も学んでいないということになる。
むしろ、ショールーミングとEコマースをオムニチャンネルと連動させることで、新たな顧客が発掘できると考えるなら、ビジネスは格段に広がるはずである。掘り起こせていない市場、休眠している顧客に目を向ける意味で、業界関係者はWEARから多くを学び、次なる展開を考えなければならないと思う。