HAKATA PARIS NEWYORK

いまのファッションを斬りまくる辛口コラム

ビジュアル以上の軽薄さ。

2017-03-15 07:11:58 | Weblog
 3月18日から26日まで開催されるファッションウィーク福岡(F.W.F)の公式サイト(http://fwf.jp/2017/)がアップされた。テーマは「オシャレボリューション!」。マップではじまるライブコミュニケーションアプリ「Pass!」、360°くるっと一周スタイリングを撮影することができる「360° FASHION SHOOT」などコンテンツが登場するという。

 昨年12月、「街のあちこちにオンリーワンコンテンツを創る」との目的で募集された参加者企画は、どこの誰に決まり何が催されるのか。それともPass!や360° FASHION SHOOTをコンテンツと呼ぶくらいだから、これがそうなのか。でも、オンリーワンかどうかの説明は何もなされてはいない。開始まであと3日だが、果たしてどんなイベント週間になるのか。年度末だからと予算消化のためにやっているようでは、継続する理由は何も見えて来ない。

 そもそも、F.W.Fは福岡市の高島宗一郎市長が「3月にも集客イベントを」とのかけ声で2013年に始まった。今回で5年目を迎えるが、初回から一貫したコンセプトが見えず、企画も場当たり的な内容に終始している。

 当初に掲げられた目的には「福岡に買い物に来てもらう」があったが、それを実現するための販促企画は実効性が乏しく、客寄せにもほど遠い内容だ。いつの間にか、方向性は集客よりも「参加」型にすり替えられている。でも、賛同の裏付けとして参加店・企業を募ればエリアは拡大するわけで、中心への集客目的とのギャップが生じるのは否めない。

 実際、主催者の福岡商工会議所、福岡アジアファッション拠点推進会議が報告する参加店&参加企業の実数にしても、全く詳細が明らかにされておらず、誇大計上ではないかと思われるほどだ。

 事業の全体像は、代理店に丸投げされた企画と、商業施設が単独実施するものをシンクロさせて、規模を整えているものである。しかも、自治体からの公金支援には限りがあるから、F.W.F単独に割ける予算枠はあいまいで、企業スポンサーに支援を頼らなければならないのが実情だ。

 第1回、第2回は、代理店がガイドブックをスポンサー向けの「広告枠」にして、ポスターやフリーペーパーの制作・印刷費を捻出した。ただ、デザイン事務所や印刷会社に仕事が流れるような媒体計画を主催者の福岡商工会議所、代理店のどちらが主導したのか。どちらにしても資金が集客目的ではなく、広報宣伝に使われるようでは「業者利権が絡みのイベントで、ファッションは口実に過ぎない」と言われてもしかたない。

 結局、プリント物のレスポンスが悪いのは火を見るより明らかで、第3回以降、経費が抑えられるWebによる広報、情報発信にシフトし、現在に至っている。

 メーンイベントにしても、第2回に開催された「ファッションマート」は、 前年10月から出店者の募集が始まったものの、「1日限り」「屋外というリスク」「法外な出店料」で、思ったような応募が集まらなかった。

 だからなのか、出店要件の「バザーではありません。洋服・雑貨・アクセサリーなどのファッション発信の場となります」はあっさり反故にされ、専門学校生が堂々と「古着」を売ることが許されている。これが福岡アジアファッション拠点推進会議の企画運営委員長がファッション部長を務める学校なのだから、大上段の企画で大見栄切ったところで、恥の上塗りでしかなかったのがハッキリする。

 第3回目は、福岡市が国から受けた「特区」事業を活用して屋台を集めたはいいが、せっかくの集客を各商業施設に還流させきれてはいない。おまけに地元ローカルテレビ局の情報番組(深夜3時半頃に再放送)「枠」を買い切って事業をアピールしたところで、どれほどの効果を実証できるのかは甚だ疑問である。

 第4回とて使える予算が限られた。3回目から参加商業施設に「買い物ポイント」を付与してもらう販促策が見られたものの、効果の有無は全く検証されていないし、何の報告もない。結局、参加型イベントがメーンとなるも学生が中心で、内容は学園祭の域を出ないものだ。これでは集客も一般客でなくて、大半が友人や親族ではなかったのかと言われてもしかたないのである。

 事業を所管する福岡市の経済観光文化局は、年度の決算報告(27年度版http://www.city.fukuoka.lg.jp/data/open/cnt/3/55163/1/281014kkb1.pdf)でファッションウィーク福岡の成果・実績を「参加した店舗や企業」の「実数」というかたちで発表している。それによると、第3回(26年度)は260店・社、第4回(27年度)は302店・社となっているが、この数値は主催者である福岡商工会議所から提出されたデータをそのまま流用したもの。具体的な社名や成果の内容までは検証されていない。

 ファッション事業者の参加がどれほどの数に上るか、具体的にどのくらいの販促効果があったのかまでは全くわからないのである。第一、2016年のF.W.F公式サイトに掲載された「参加店」は、天神や博多駅地区のに位置する商業施設、服飾雑貨の個店を除けば、圧倒的に「飲食店」が多い。イベントが展開される天神や博多駅から3km近く離れた南薬院のレストランが参加して、はたして相乗効果が得られるのかは理解に苦しむ。そこまでして参加店を増やし、規模を嵩上げしようという主催者の姑息さが見え隠れするのだ。

 第5回目も年度末で残された予算額には限りがある。今回は「街のあちこちにオンリーワンコンテンツを創る」の目的で、「参加コミュニティ」が公募され、地場の企業・団体にスポンサー支援が求められた。

 参加コミュニティは「ファッションアイテムの企画制作・販売、ショーの制作出演他、関係する活動を行っている個人・法人・学校」を条件とし、企業・団体に「スペースの貸出及び付帯費用、協賛金15万円の負担、マッチングミーティングへの参加、プレゼン審査、実施費用の検討」を求めるものだった。12月21日にマッチミーティング及びプレゼンが行われたはずだが、結果がどうだったのかは発表はされていない。

 公式サイトで公表されたF.W.F独自のイベントは、前回と同じ「FUKUOKA STREET PARTY -Fashion Anenue-」のみである。他は協賛する商業施設がそれぞれ単独で行うものを組み合わせただけだ。アプリの「Pass!」と「360° FASHION SHOOT」は技術的なコンテンツであって、無理矢理イベントと定義付けるにしても、技術のアピールやテスト程度にしかならない。

 他には公式サイトに描かれたイラストの「F.W.Fモデルバッグ」プレゼント。こちらもベタ付けではなく、「期間中、イムズ・岩田屋本店・大丸福岡天神店・博多阪急・博多マルイで税込5,400円以上ご購入のお客様に『抽選』でプレゼント」というしろ物だ。ほとんどが集客にも販促にもそれほど貢献しそうにない「しょぼい」企画である。

 参加コミュニティとしてイベントに参加したい個人や学校が存在しないはずはない。ただ、スペースと協賛金を提供し、なおかつ費用まで負担する企業や団体が現れたのかと言えば、やはり厳しかったと思う。というより、募集企画そのものがあまりに稚拙だったからだ。

 応募したのが専門学校生や駆け出しのデザイナーであれば、「フリマのようなイベント」になるのは目に見ている。ほとんど集客も販促も期待できないコンテンツにスペースや資金を提供する奇特な企業や団体が現れるとは思えない。結局、「街のあちこちにオンリーワンコンテンツを創る」は、絵空事で終わったのである。

 まあ、すでに福岡ファッションビル(FFB)が地元の若手デザイナーにステージを提供し、ショーが催されたわけで、これ以上、企業や団体に支援を請うのは虫が良すぎるというものだ。

 ただ、今回も企画運営委員長の学校だけは、ちゃっかり単独でイベント参加にこぎつけている。それが「岩田屋本店FWFコラボイベント始まりました!」(http://fwf.jp/2017/iwataya/99/)で、今回は写真の展示に止まるようだ。オープンイベントでのパフォーマンスではなく、単なる展示なら集客力のバロメーターにはならない。だから、うまく逃げたと考えることもできるが、所詮その程度の浅知恵ということである。

 今回、新たに登場したPass!、360° FASHION SHOOTはクリエイティブ関連事業のネット事業者を支援する予算が使われたと思われる。イベント週間はこうしたシステムをテストするには絶好のタイミングと言えるが、ファッション業界として販促効果がどうなのかは現段階で評価できる由もない。

 一方、ファッションウィーク福岡の最終日には客寄せ興行の福岡アジアコレクション(FACo)が開催される。この資金はF.W.Fを含めた市のクリエイティブ関連事業予算の中でちゃんと確保されており、それはもはや「聖域」化した感じさえする。

 昨年、JR博多駅前で起きた地下鉄工事の陥没事故の数日後にも、台湾で「TAIPEI IN STYLE~FACo in TAIPEI~」が開催されている。この影響で高島市長がこのレセプション参加をキャンセルしたか、当初から予定になかったかは定かではない。ただ、RKB毎日放送というローカルテレビ局の収益事業には、福岡市から「民間主導」とのお墨付きが与えられ、税金で資金が拠出されているのも事実だ。

 今回のファッションウィーク福岡では、公式サイトにNONCHELEEE(ノンチェリー)のイラストが描かれている。これをモチーフにしたオリジナルバッグをどれだけの人が欲しがるのか。タッチからして岩田屋や福岡大丸、博多阪急、博多マルイの客層とは合致しない。まして5400円以上の購入客がどれほど注文行動までとるか。懸賞の応募数はイベントの価値や情報発信力のレベルを表すのは間違いない。

 結局、予算がもらえるからと利害関係者が自分たちの思惑だけで、企画を実行しようとする。できないものは代理店等の外部依存で切り抜けようとしていく。コンセプトなどは微塵も無く、事業そのものが曖昧だから、手段が目的化してしまって運用が全くできていないのだ。

 「福岡に買い物にきてもらう」と地元志向を謳いながら、実際には利害関係者の自社優遇志向になっている。そんな事業ばかりやってて、社会的使命など果たせるはずがない。ファッションも小売りもわかっていない人間が口先で、「情報発信」だの、「地元振興」だのと唱えるだけなら簡単だ。

 批判すれば「弱虫の証拠」とかと、いかにも勝ち誇ったように言って来るが、所詮情緒的で中身のない反論に過ぎず、凡庸で知能の程度がはっきりしている。「クリエイティブ」という言葉を用いて、悦に浸るのは勝手だが、そんなもんで地元のファッション振興になるはずもない。

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