日本で4期ぶりに減益となったユニクロが海外戦略の試金石にする、米国ニューヨークの「フラッグシップストア」が立て続けにオープンした。同社はここ数年、世界の大都市に次々と出店し、その集大成と位置づけるのが、この14日と21日に開業したニューヨーク五番街53丁目のグローバル旗艦店、五番街と六番街の間34丁目の旗艦店である。
そこではグラフィックデザイナーの佐藤可士和がプロモーション、デザイナーの滝沢直己が商品デザインを担当した、ユニクロ・イノベーション・プロジェクト(IPJ)と銘打つ新商品カテゴリー、隣接するニューヨーク近代美術館(MoMA)とUTのコラボ商品などを投入。世界のファッション激戦区で勝つ戦略を整え、日本やアジアに逆輸入する考えを打ち出している。
ただ、店舗を見る限り、単に多層化した大型店に過ぎず、極端に絞り込んだマーチャンダイジング、最大公約数的な工業製品的アイテムを自社流のVMDで大量陳列するのは同じ。 IPJにしてもその内容はスポーティーカジュアルとタウンカジュアルの2パターンで、アメカジライクなベーシックさは相変わらず、スポーツライクな商品もヒートテックで貯えた素材開発のノウハウをパーカーやウインドブレーカーに落としこんだ程度に過ぎない。
一方、これまでと大きく異なる点と言えば、店舗運営にかかるランニングコストだろう。五番街店の家賃は年間20mil$、15年契約で総額約230億円程度(300mil$)と言われ、地下鉄をはじめとした市内のあらゆる広告媒体をジャックするなど、米国流の広告マーケティング戦略にも、莫大な投資を行なった。
それもニューヨークに乱立するザラやH&Mなど世界的なSPAブランドに対抗して、新しいユニクロイメージの浸透とブランド力のさらなる向上を目指すためのようだが、勝算の度合いは現時点では未知数である。
米国経済は減速の真っただ中にあり、各地のデモでは「1%の富裕層が国全体の所得の25%を受け取っている」といった所得格差が叫ばれるほど、中間層の没落は著しい。だからではないが、これから米国人のマキシマムが生活を切り詰めていくのであれば、「ユニクロは最も適したブランドですよ」という皮算用もあるだろう。柳井社長の頭の中には、そのぐらいの計算はあると思われる。
ただ、このNY戦略がペイするかどうかは疑問だ。ニューヨーク・マンハッタンは圧倒的に平日昼間人口が多く、約340万人と言われている。仮にこの1割が五番街、ミッド&ダウンタウンで買い物するとして34万人。彼らがユニクロで1回平均40ドル(1ドル=76円、約3000円)の買い物を年4回したとした場合、年間売上げは40億円程度にしかならない。
これを既存のソーホー店と今回オープンの2店舗で按分すると、1店舗あたりの売上げは13億円程度。五番街店の家賃にもほど遠い額である。ニューヨークの一等地で店舗を運営するには、人件費などの販売管理費を加えると、最低70億~80億円は稼がないと厳しいだろう。
広告宣伝費やブランディング構築という言い訳はあるにしても、上場企業としてこのような無謀な投資が許されるのかという疑問も残る。 バーニーズ買収断念で残った潤沢な資金、巨額のキャッシュフローにものを言わせた出店だったのかもしれないが、米国でユニクロ人気をあげられなければ海外戦略の逆輸入もアジア攻略の追い風にはならない。 さすがに赤字に落ちるとまでは言い切れないが、米国経済を考えると先行きが不透明なのも確か。とすれば、むしろ「ジーユー」の方が期待できる? そんな戦略もあながち否定できないのではないだろうか。
そこではグラフィックデザイナーの佐藤可士和がプロモーション、デザイナーの滝沢直己が商品デザインを担当した、ユニクロ・イノベーション・プロジェクト(IPJ)と銘打つ新商品カテゴリー、隣接するニューヨーク近代美術館(MoMA)とUTのコラボ商品などを投入。世界のファッション激戦区で勝つ戦略を整え、日本やアジアに逆輸入する考えを打ち出している。
ただ、店舗を見る限り、単に多層化した大型店に過ぎず、極端に絞り込んだマーチャンダイジング、最大公約数的な工業製品的アイテムを自社流のVMDで大量陳列するのは同じ。 IPJにしてもその内容はスポーティーカジュアルとタウンカジュアルの2パターンで、アメカジライクなベーシックさは相変わらず、スポーツライクな商品もヒートテックで貯えた素材開発のノウハウをパーカーやウインドブレーカーに落としこんだ程度に過ぎない。
一方、これまでと大きく異なる点と言えば、店舗運営にかかるランニングコストだろう。五番街店の家賃は年間20mil$、15年契約で総額約230億円程度(300mil$)と言われ、地下鉄をはじめとした市内のあらゆる広告媒体をジャックするなど、米国流の広告マーケティング戦略にも、莫大な投資を行なった。
それもニューヨークに乱立するザラやH&Mなど世界的なSPAブランドに対抗して、新しいユニクロイメージの浸透とブランド力のさらなる向上を目指すためのようだが、勝算の度合いは現時点では未知数である。
米国経済は減速の真っただ中にあり、各地のデモでは「1%の富裕層が国全体の所得の25%を受け取っている」といった所得格差が叫ばれるほど、中間層の没落は著しい。だからではないが、これから米国人のマキシマムが生活を切り詰めていくのであれば、「ユニクロは最も適したブランドですよ」という皮算用もあるだろう。柳井社長の頭の中には、そのぐらいの計算はあると思われる。
ただ、このNY戦略がペイするかどうかは疑問だ。ニューヨーク・マンハッタンは圧倒的に平日昼間人口が多く、約340万人と言われている。仮にこの1割が五番街、ミッド&ダウンタウンで買い物するとして34万人。彼らがユニクロで1回平均40ドル(1ドル=76円、約3000円)の買い物を年4回したとした場合、年間売上げは40億円程度にしかならない。
これを既存のソーホー店と今回オープンの2店舗で按分すると、1店舗あたりの売上げは13億円程度。五番街店の家賃にもほど遠い額である。ニューヨークの一等地で店舗を運営するには、人件費などの販売管理費を加えると、最低70億~80億円は稼がないと厳しいだろう。
広告宣伝費やブランディング構築という言い訳はあるにしても、上場企業としてこのような無謀な投資が許されるのかという疑問も残る。 バーニーズ買収断念で残った潤沢な資金、巨額のキャッシュフローにものを言わせた出店だったのかもしれないが、米国でユニクロ人気をあげられなければ海外戦略の逆輸入もアジア攻略の追い風にはならない。 さすがに赤字に落ちるとまでは言い切れないが、米国経済を考えると先行きが不透明なのも確か。とすれば、むしろ「ジーユー」の方が期待できる? そんな戦略もあながち否定できないのではないだろうか。