高麗橋桜花 徒然日記ー料理人はどこまでできるのか ー

「高麗橋桜花」店主・「大阪食文化研究所」主宰森田龍彦のブログです。どうぞご贔屓にお願い申し上ます。

飛鳥ワインさん 訪問

2006-09-15 | 生産者訪問

 前回にもご紹介した飛鳥ワインさんを再訪。

今回は大有研で大阪で農業をしながら、生産・加工・販売を通じて頑張っている生産者さんを訪問するイベント。参加者は全員で13名。飛鳥ワインさんは観光農園ではないので、あまり多人数でお伺いするとご迷惑になるので丁度良い人数となりました。

 まずは、ワインの製造工程を見学させて頂きました。

Dscn2023 葡萄収穫後、約1週間かけて自然発酵した後、搾られます。画像の機械は一回に2.5tの葡萄を筒の両側から圧をかけたり、緩めたりしながら3時間ほどかけて搾ります。出来上がりは、2/3の量になるそうです。(後で特別に飲ませて頂きましたが、まだアルコールは感じることはありませんが、ジュースというよりは酸の優しいビネガーという感じでした。これをソースに使えたら、新しい感覚の味が作られるでしょうね。)

Dscn2025  白ワインは15度で発酵させて2週間。その後-2℃で貯蔵して、約二週間ほどかけて酒石酸を結晶化、沈殿させて取り除きます。

 赤ワインは少し高めの25度から30度以下で発酵。さらに皮や種子を取り除いたものだけを、マロラティック発酵をさせてリンゴ酸を乳酸に変えて、味をまろやかにする工程が加わります。

Dscn2034  デラウェアを発酵させているところを、特別に拝見させて頂きました。

日本酒ほど発酵時に炭酸はでないようですが、やはりCO2は発生していますね。飛鳥ワインさんはこの地域で多く作られるデラウェア、若いうちに収穫してフレッシュな風味を活かした新作のワインも製造されています。ちなみにこのワイン名は青デラワインといって、今年の国産ワインコンクールで銅賞に輝いています。

 工場見学後、実際に葡萄畑へ案内してくださいました。

急勾配をトラックの荷台に乗っての移動。なぜか、とってもウキウキしてしまうのは、私だけでしょうか。

Dscn2028  カルベネ・ソーヴィニヨンです。

生のまま食べさせて頂きました。皮が生食用のものよりかなり分厚いですが、甘みをかなり強かったです。収穫時期になると葡萄の房を隠す葉を取り除き、糖度を上げます。最終的に葡萄の糖度は20度を超えるそうです。

Dscn2033_2  試作で栽培されている山ソーヴィニヨン。ソーヴィニヨン・ブランと山葡萄をかけあわせたものです。適度な酸味と甘み・風味があって、一度これで出来たワインを飲んでみたいな、と思いました。他にも、リースニングやマルベックなども試作されていました。絶えず進化を目指していますね。

 再び工場に戻り、数種類のワインを試飲させて頂きました。さっきも書きましたが観光農園ではないので、特別な配慮をして下さりました。参加者の皆さんもいろいろと飲み比べが出来て、喜んで頂けたようです。

 普段はとても物静かな飛鳥ワインの仲村さんですが、この日は参加の方の質問にとても丁寧に対応してくださいました。そして仲村さんの奥様を始めスタッフの方々も、忙しい中いろいろと対応してくださったこととても嬉しく思いました。本当に有難うございます。

 飛鳥ワインさんを後にした後は古市に戻り、大阪府南河内農業及センターの嶋野さんから大阪の葡萄栽培についてお話を聞かせて頂きました。

  大阪でデラウェアが広まった経緯や葡萄栽培の現況・高齢化や品種改良への取り組みなどををご説明してくださいました。葡萄栽培において、大阪は本当に全国的にも有数の生産地なのですね。(デラウェアに関しては、全国で3位の出荷量を誇ります。)

 半日という短い時間でしたが、このイベントに参加してくださった方が大阪の農の現状や頑張りを感じていただけたようなので、開催側としてほっと一安心の内容となりました。

 

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豊饒の地 泉州 その2

2006-09-10 | お酒について

 泉州には現在4蔵の酒蔵さんがあります。

060829_2222  松下さんを訪問する前に、上之郷にある北庄司酒造さんへ。春の新酒から、今は夏用のフルーティーで少しアルコール高めなオンザロックで楽しめるお酒、秋になれば一夏蔵で貯蔵されて丸みと深みが生まれる冷おろしが販売されて、四季の移ろいを感じさせてくれます。(画像は北庄司さんの「夏衣」。)

 そういれば、以前にも紹介させて頂いた寺田酒造さん(酒蔵さんながら、酒屋も経営されています。)の企画で、とても興味深いイベントが。大阪の酒蔵さん4蔵の夏向けの日本酒のp詰め合わせが販売されています。寺田酒造さんの篁もかなりオススメ出来るお酒ですので、是非ご覧になってくださいね。詳細はこちら

 松下さんの畑を後にして、奥貝塚に。

水茄子の原種の一つと言われている、馬場茄子。水間観音があるこの奥貝塚に、馬場町という地域があります。事前に上手く生産者の方と連絡が取る事が出来ずに,JAなら何かわかるかもと思い訪ねました。そして、職員の方にお聞きしていると、丁度馬場茄子の生産者の方が来られる予定とか。暫くして、畠さんが来れれて、運良く馬場茄子の畠を見せてくれることになりました。

 案内して下さった場所は、奥貝塚 彩の谷「たわわ」という農業庭園。

 「たわわ」の詳細はHPをご覧になってください。訪問して驚いたのは、こちらで栽培されている伝統野菜が多くあったこと。畠さんのお話をしているうちに、浪速野菜の第一人者 森下先生がいろいろとご協力してくださったいるとのこと。種子の保存や広がりは、森下先生のご尽力によるところがとても大きいのです。

Dscn2014 この画像にあるのが、馬場茄子です。

一見普通の茄子に見えますが、良く見るとうてなのしたに緑色の部分があります。これは一日で伸びた部分です。急激に成長するために皮が柔らかく、エグみも少ない茄子になります。柔らかい皮は葉にこすれても傷がついてしますので、葉の剪定もこまめに行われます。

Dscn2012  種取りようの馬場茄子です。

 実生(接木をしない)で栽培された馬場茄子を使って種を収穫します。茄子は非常に水を欲しがるために、畝の間にはたっぷりの水が張ってあります。有機肥料や藁や米ぬか、畜産の堆肥を使用しています。朝市で、消費者との結びつきが近いので、出来るだけ安全なものを作りたいと努力しているそうです。

 畠さんには、馬場茄子について他にもいろいろと詳しくご説明してくださいました。

 こんなに立派に栽培されている馬場茄子ですが、もっとこの茄子の良さを引き出せるはずと畠さん。百姓は作物が出来るまで、雨の振り方や水捌け、風が吹く方向などいろいろな状況を百回伊観察しないと良い物は作れないと教えられたそうです。

 出来たら良いではなくて、良いもの自分で作るようにする。努力し続け、工夫しなしいと良いものは出来ないというのが畠さんの考え。「森田さんみたいに真剣に野菜の事を知りたいと思って足を運んでくれる人との交流も、楽しみに一つとおっしゃってくださいました。

 偶然の連続で、こだわりを持って伝統野菜を作って下さる生産者さんと出会うことが出来ました。大阪府下だけならいろいろと周る事が出来ましたが、改めて大阪の農業の底力を感じる出会いでもありました。この度は、年間に100種類物豊富な野菜が並ぶという朝市にも訪問してみたいと思っています。

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豊饒の地 泉州 その1

2006-09-10 | 生産者訪問

 大阪府の南部、昔の和泉にあたる地域を泉州と呼びます。貝塚や岸和田などの海に面した地域、西は葛城山系を背にした阪南市、南は和泉山系を境に和歌山県と接しています。

 なにわ伝統野菜でもある石川早生小芋。和食では一般的なこの小芋も大阪の河南町、大和川に合流する石川に由来する事はあまり知られていません。

Dscn2010 そして、この石川早生をはじめて泉南で栽培されたのが松下喜次郎氏、今回訪問させて頂いた松下長史さんのご先祖にあたられるのです。松下さんは現在、石川早生や泉州水茄子、少量ではありまりますが鳥飼茄子などを栽培されております。極力、農薬の使用を抑えて、牡蠣殻や有機肥料をなどを使用しての栽培です。

Dscn2017 里芋は、小芋を食べるもの(石川早生・土垂)・親芋を食べるもの(たけのこ芋)・両方を食べるもの(八つ頭・海老芋)・芋茎を食べるもの(ずいき)に分かれます。

 石川早生は親芋の周りに小芋が3~5個、更に小芋に孫芋が3~5個つきます。ですので、一本に約15個ほどの小芋が収穫されます。

Dscn2008  魚菜の会で、松下さんに栽培頂いた鳥飼茄子。賀茂茄子に似て肉質が緻密。味の方もそれに負けない美味しさがあります。一株からの終了が少なくて病気に弱く、現在ではほとんど栽培されていません。奥に見える水茄子の栽培法を応用して、鳥飼茄子の栽培にも取り組まれておられます。伝統野菜は品種改良が行われていないので病気に弱かったり、収穫量が少ないなど栽培に関していろいろと難しい面はありますが、今の野菜には無い個性的な特長を持っている事が多くあります。松下さんもこの鳥飼茄子での収益は無いが、自分自身の一つの楽しみになっているから、少量でも可能な限り続けるつもり、と言ってくださいました。

 松下さんは、稲作も行っています。大阪でヒノヒカリが多く栽培されるのは土壌との相性だけでなく、台風の被害に合う前に収穫できる早生系のヒノヒカリの栽培が広まったそうです。そして、台風の時期が過ぎると、今度は裏作の冬野菜の栽培に取り組まれます。ただ、この泉州の天候は温暖で安定しており、水源にも恵まれています。こんな恵まれた地で米よりも野菜作りをしないともったいない。野菜一つ一つが自分のお給料になるからきっちり育てなあかん、でも栽培した野菜を出荷する時は嫁に出すような気持ちになると笑いながら松下さんは語ってくださいました。

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河内蓮根 中西さん訪問

2006-09-10 | 生産者訪問

 9月になるといよいよ河内蓮根の収穫が始まります。

 そこで、河内蓮根の生産者でもあり、農業を通じての青少年の保全育成のため体験学習の受け入れや農業講演も行われている門真市の中西さんを訪問させて頂きました。

 河内蓮根は、細くて価値の低かった地蓮根に、石川県の加賀蓮根と岡山の備中蓮根の良さを取り入れて、改良されたものです。河内蓮根の特長は粘りのある食感で、他の蓮根にはない美味しさを持っています。詳しい河内蓮根の説明はこちらをどうぞ

Dscn1993  門真はどちらかというと松下産業など工業イメージですよね。でも、この辺りは海抜0m地域で水害も多く、かつての河内湖の湖底であったことから粘土質で蓮根の栽培に適していたのです。この粘土質にも関わらず、蓮根の成長力は強くて4mもの深さまで根を伸ばします。(茎も長くて、大人の背丈程にもなります。)なので、河内蓮根の栽培で最も大変なのが、収穫です。粘土質の中に深く伸びる蓮根を備中鍬で収穫する、しかも収穫時期は翌年3月と厳寒の中での作業は想像を絶する作業です。

 中西さんは、先にも書きましたが、農業を通じての食育活動も積極的に行っておられます。河内蓮根という伝統野菜がどのようにして伝わってきたのか、その歴史を学び、また農作業を体験することによって初めて昔からの伝統をかんじてもらえるのでは、とおっしゃっていました。アグリカルチャー=耕す文化、それは文化を耕すことでもあるとも。中西さんのような生産者さんに育てられる河内蓮根、食べたくなりませんか。

Dscn1998  分かりにくいかもしれませんが、地蓮の小さな花を運良く見る事が出来ました。地蓮と河内蓮根は一目見て分かるくらいに大きさなどが異なります。長年、改良に取り組んだ努力を垣間見る事が出来ました。

 

 

 

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枚方手塚さん 訪問

2006-09-06 | 生産者訪問

 少し前ですが、今回の農塾に新規就農者の立場からの講演をして頂く、手塚さんを訪問しました。

 手塚さんは今年二年目を迎かえる、有機農家さん。大学時代に里山保全のボランティアをしていて、里山の保全を維持するのには有機農業が不可欠だと感じられたそうです。

 京阪交野市駅で待ち合わせ後、まずは手塚さんの師匠である中嶋さんを訪問させて頂きました。

 訪問して初めて分かったことなのですが、なんと中嶋さんは大有研の会員さんでした。昔は、活動の中で尾崎さんや植木さんとの交流も持たれていたそうです。中嶋さんが有機農業を始めたきっかけは、有機の日本的な、循環的な流れが好きだからそうです。

Dscn1981_1  今では大阪と京都の中間地点という便利な立地のために都市化が進んだ枚方ですが、昔は肥沃な土と豊かな水に恵まれた農作地帯です。(今でも田畑には水路を使って、多くの水が流れています。) そして、昔は各農家で黒牛と乳牛が飼われていて、農作業の軽減、牛糞の堆肥化、藁を餌にと循環的な農業を営んでいたそうです。(都市化が進んで、住宅地に囲まれるように。稲は大阪で多く栽培されているヒノヒカリです。)

 現代の農業はかなり厳しい状況にあります。戦前の米の価値は現在の10倍ほどの価値もあり、食費は収入の1/3を占めていたそうです。それが工業を優先させた経済成長の政策の結果、日本の目覚しい発展のしわ寄せは農業に。多くの人手が農業から離れていきました。そして、農業を生業としていくことは、とても困難になってしまったのです。

 中嶋さんは言われました。「農業を楽しんでいる姿を伝えたい。」 早朝に起きて一仕事して、昼休みしながら一献。夕方まで休んで暗くなるまで働いて、また一献。こんな贅沢な時間を過ごせるのは今の時代農家だけ、自分のペースで生きられる贅沢はお金では買えないと笑いながらおっしゃっていました。純粋に農業を楽しんでいる方も珍しいですよね。

 中嶋さんの畑を後にして、いよいよ手塚さんの畑へ。

 車でしばらく山を登り、里山を感じさせる環境へ。有機農業のきっかけが、大学時代の里山保全のボランティアというのがうなずけました。そして、里山の環境をまもるための有機農業というのにも。

Dscn1983  有機農産物は比較的簡単に買えますが、それを育てるのはとても大変です。しかも新規就農で農業の経験自体もあまり無い中、本当に頑張ってるなと思わせる畑でもありました。画像の手前にあるのは、畑よりも高い位置にあるため池から水を引いている手作りの水路です。

 手塚さんが枝豆をかじりながら、枝豆は大きくなるより若い方が美味しいと僕は思いますとふっとおっしゃいました。味の好みはひとそれぞれですがこうやって深く観察をして、自分自身でいろいろと感じることがとても大切なのだと思いました。一番野菜に向かい合う時間が長くて、野菜の状態をいろいろ観察できることが出来るのが農家さんなのですから。そして、その中で感じたことを料理人を始め、消費者は知りたいと思っているのです。手塚さんが

 大阪での新規就農者は、本当に大変だと思います。でも、手塚さんのような方が経験を積んで農家を生業にできないようでは、くいだおれの大阪としては寂しいですよね。

 

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