ヤーコブ・カッツ著、並木書房刊
かつて追われた土地を手に入れて、世界中からユダヤ人が帰国してイスラエルという国家を作った。
それによって、それまで住んでいた人々が不利益を受けた。
また、ユダヤ教とイスラム教の宗教的な対立があり、周辺の国々との争いが絶えない。
イスラエルは何度かの血みどろの戦いを生き抜いたが、周辺国の脅威に直面していることは変わらなかった。
そうした状況下で、隣国のイラクが建設していた原子炉を攻撃して破壊した事件が起こった。
この程度の認識と理解しか無かったので、「シリア原子炉の破壊」をテーマにした本書を見て関心を持ち手に取りました。
日本の周辺もアブナイ国や敵視している国家があって、決して安心できる状況にないのは、程度の差を別として同じと思います。
本書を読むと、イスラエルが国家の存亡を掛けて様々な諜報活動を行い、アメリカとのつながりを確保して、何とか生き延びようとしていることが分かります。そして、その切実な思いの程もよく理解できました。
なぜ、隣国の原子炉を破壊しなければならないのか、という理由も分かりました。
更に、イスラエル国内とアメリカとにおいて、対応方針を決定する為に、様々な立場と見解の相違から、組織間や個人同士の厳しい戦いがあったことも分かります。
特に、当時のジョージ・ブッシュ大統領と閣僚、スタッフ達が置かれた状況と、それぞれの立場や考え方が理解できました。
どちらの国においても共通するのは、「理念」ではなく状況を踏まえた「現実的な対応」でした。
また、国益とは何かについても考えさせられました。
責任を担って決断し実行することによる結果責任を負うのであれば、その重要性に比例する巨大な圧力に晒されるのだという、当たり前の事実に気付きます。
批判することは容易だが、責任を果たすことが如何に困難かが良く分かる、優れた著作でした。
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○イラク原子炉爆撃事件 ○シリア「原子炉」空爆、イスラエルが認める 北の支援で建設か
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評価は4です。
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