スタートがバラバラになったこの夏放送のドラマが終わった。
5本を最後まで観たので一筆書き留めておこう。
際立った傑作には出会えなかったけど、どの作品もそれなりに楽しめたし、コロナの中制作現場は大変だったと思うが上手くまとめ上げられたと思う。
「MIU404」
このドラマ最後まで疾走していた。脚本のテンポと演出のテンポ、そして役者たちの動きも見事だったということだ。事件はほぼ一話完結でありながら、余韻をずっと引き吊りながら一本のドラマに仕立てたところも、総合力がなきゃできなかった。間違いなく今年の夏ドラマでは一番の力作だった。
そうは思っているけど、手放しでこのドラマを賛美しているわけではない。野木亜紀子がNHKで書いたフェイクニュースを題材にしたドラマがあったけど、あの時に感じた不完全燃焼感を同様に感じてしまう。提示された現代社会の闇に対し、本当の暗さにまではたどり着けていない(もしくはたどり着こうとしていない)。スポンサーあっての民放ドラマの制約か、マスメディアとしてのテレビドラマの限界か。何となく綺麗ごとで解決してしまい、後味に何も残らないような物足りなさがあった。薄ら寒い恐怖感を残せたなら刑事ものドラマとして記憶に残る作品になっただろうに。
「私の家政夫ナギサさん」
9話でケリを付けたのに、何故後日談含む総集編を2時間もやろうとするのだろう。それなら10話にしてじっくりとメイとナギサさんの恋心が近づく様を描いてほしかった。長くやれば良いってわけじゃない。でも連ドラの良さは丁寧に人物のキャラクターを説明できることだから、メイがおじさん家政夫に少しずつ惹かれてゆく心の揺れ動きを見せるべきだった。ナギサさんだって50過ぎて二回りも年下の美人にプロポーズされたんだから、健康面の事だけじゃなくて躊躇する懸念材料は沢山あるはずだ。お互いその障壁を寄り添いながら乗り越えるところに視聴者は熱い声援が送れるのだ。
ファンタジー系ラブコメとしての軽さを否定するものではない。それでも、ありえねぇ〜と言ってしまえばそれ迄のお話だから、どこかにリアリティが必要なのだ。メイの散らかった部屋だってよく見りゃ雑然さはないし、ナギサさんだって加齢臭は漂わない。「あのおじさんが本当に手放しちゃいけない人なの?」という正しい疑問に対する回答も、「この娘、すぐに愛想尽かすんじゃねぇのか?」とのもっともな危惧を凌駕する提案もされないままハッピーエンドになってしまった。
コロナ騒動の煽りで丁寧さを欠いた仕上がりになってしまったことを残念に思っている。
「親バカ青春白書」
色々な制約あっての事だと思うが、終盤からガタロー家でのシェアハウス状態になってきた。このドラマの売りは娘と一緒に親父が大学に通いそのキャンパスライフを謳歌するところでもあるから、学内のシーンが無くなり結構面白かった階段教室での教授とガタローのやり取りも必然無くなってしまった。HPのイントロダクションに使われているオレンジデイズ(最近配信で全話観直しました)のパクリも気が利いててお気に入りなのに。
まあ、その分シェアハウス内での濃密さは福田雄一ドラマ臭くて楽しめる。ムロツヨシが演出した6話はテイストが変わって面白かった。
序盤影の薄かった永野芽郁も鬼滅の刃(禰豆子)のコスプレ以降存在感が出てきており、芽郁ちゃん好きとしては喜ばしい。中川大志や今田美桜も邪魔にならない彩で添えられている。最近発見した小野花梨は凄い存在感だ。(バイオリン弾けないわ!には笑った)これから良い脇役になれると思う。
新垣結衣。ここまでくると国宝級(人間国宝)だな。ガッキーが溌溂と画面を動き回るコメディーが観たいもんだ。
「妖怪シェアハウス」
後半に入って恋バナ展開になってきた。ダメじゃないけどあまりメインに持ってきて欲しくなかった。このドラマの楽しみ方は妖怪(お化けもいるけど)との共同生活におけるドタバタだから、鬼太郎のように悪い妖怪や人間をとっちめるような勧善懲悪なんかもいらないし、ましてや人間同士の三角関係ってそれこそ下世話ですな。どうせやるなら人間と妖怪の恋愛関係に悩むお話なんかにしてくれたら楽しめたかも。
大阪のおばちゃんみたいな鬼もヤマンバギャルの妖怪もキャラが立っていて、レギュラーを食うような存在感だったので、この手のゲスト妖怪を軸に一話完結のホームドラマにした方が良かったと思う。
それほど期待していなかった分、無責任に楽しめたし、小芝風花の妙に美しいヤマンバメイクも拝めたので文句付けるつもりはないんだけど。お岩さんを演じた松本まりかが艶っぽくて気になった。これからのドラマをチェックしておこう。
「アンサングシンデレラ」
医療ドラマだと思っていたのに終わってみれば良くあるお仕事ドラマだったか。大病院の調剤現場が舞台だったから目新しい部分もあったけど、石原さとみ演じるスーパーヒロインが活躍する展開は凡庸な作りになってしまった。最終話の舞台になっていた地方の産科病院で奮闘するヒロインの方が魅力的に見えたのはなぜだろう。薬剤師チームの面々もキャラクター付けがうまく出来ていたからわざわざ舞台を変える必要ないと思ったけど、結果的に一番石原さとみが輝く出来になっていたのは皮肉だったな。
初めて西野七瀬を役者として認識した作品としては観続けて良かったと思っている。ちょっと線が細すぎるけど、適度に関西弁を交えて今時の女の子らしく飄々と成長してゆく姿がこれからの活躍を暗示させた。
中断していたNHK朝ドラも再開されたようだが、こちらはそもそも好きじゃなかったのでリタイアしてしまった。