金曜日のお休み
お家でダラダラプライムビデオを観るのも良いけど、予定になかった映画でも観てみようかと
そんな気まぐれでキノシネマで上映されてた映画を観た
坂本龍一の音楽は本当に心地いいなと思ったけど
作品のテーマが深くなりにつれ、色即是空 空即是色 のお経に聴こえてくる
東洋哲学が根底にある映画だから、わたくしたちには肌感覚で理解できるけど
欧米人には死生観も含めて理解不能だったろう
是枝監督が良く題材にする血の繋がりのない家族をインターナショナル版に置き換えたようで興味深い
妹想いの兄(テクノロジー)、そんな兄を慕う妹(養子)、二人の両親に行き交う情愛は無条件で感動的だ
小林武史がリリーシュシュで披露した楽曲が印象的に奏でられるのも嬉しい
たまにはこんな映画も観ないと脳味噌が固定化することに気づく
夏ドラマが不作だったからか、この秋は傑作になりそうなドラマがたくさん並んでいる感じがする。序盤を観た限りでは次回放送が待ち遠しい作品ばかりだ
特に目を引くのがフジテレビの充実ぶり。このところヘタレな作品ばかりで、往年の傑作ドラマを生みだしていたテレビ局とは思えない酷さだったけど、秋ドラマはホントに凄い
全般的に気になるのは題名の付け方にセンスを感じられない事。副題を付けなけば伝わらない題名は決して良いとは思えない
久し振りに年末まで楽しませて欲しいな
「エルピス」
脚本の渡辺あやは映画「天然コケッコー」で認知しているだけで、名作の誉れ高い朝ドラ「カーネーション」はじめ殆どNHKにしか作品を提供していない。監督の大根仁もひと時異才を放っていたが最近はあまりいい話を聞かなくなっているから、どんなドラマになるのかちょっぴり楽しみでもあり不安でもある
長澤まさみもこのところ映画では印象的な活動をしているけど、連続ドラマで彼女を観るのは久し振りじゃないだろうか
初回だけしか観てないけど、脚本・演出・役者が見事なアンサンブルで仕事をしており傑作になりそうな予感。キズ持ちの若干薹が立った女子アナという設定は少し陳腐だけど、冤罪事件を探ることで真犯人を炙り出してゆく過程が描かれそうな展開には興味ある
長澤まさみは余裕の演技で主人公を魅力的に演じている。あのダー子と同一人物とは思えないキャラクター造作は並大抵の女優ではないことを実証している
鈴木亮平、三浦透子、岡部たかしは上手い!としか言えない。唯一心配だった眞栄田郷敦も優柔不断なボクちゃん役が合っていてはまり役だった
大根仁の演出は緩急自在で「モテキ」の時とは全然違う長澤まさみを引き出している
渡辺あやの脚本がこのドラマを何処まで高みにもっていけるか、じっくり付き合ってゆこう
「PICU」
傑作の多い小児医療ものなので期待したい
序盤を観た感じでは以前沢山作られた救急医療ものとコードブルー系統のロジスティク+コウノドリ系統の小児医療といったところか
目新しいのは舞台が北海道の広大な地域を網羅するためにドクターヘリじゃなくてジェット機を登場させたところ
役者もしっかりしているので見応えのあるドラマになると良いなと思う
違和感があるのは北海道知事役の菊地凛子、雰囲気ある役者だからそれっぽく演じているけど如何せん若い。重さがないためPICU設立の真剣を感じられないのが何処か絵空事に映ってしまう。久しぶりの高梨臨はさらりと毒舌吐きながら魅力的な看護師を演じていてカッコイイ
「君の花になる」
本田翼が男性アイドルグループの寮母役とはすわりが良いような悪いような・・・
この取り合わせが無理なく嵌れば楽しいドラマになるかもしれないと思ったのだけど、何せ現実感の薄さが命取りで最近よくあるアニメのアイドル成長物語の方がよっぽど良いかも
よく考えてみると、本田翼って初めてちゃんと見た気がする。笑顔も可愛いしリアルな彼女だったら全世界の男性から羨望されるだろうけど、何だか彼女も現実感が薄い
もう暫くは付き合うが、もしかするとリタイアしてしまうかも
「ファーストペンギン」
この秋一番の期待作
脚本の森下佳子は間違いなく現在脚本家の中ではトップクラスの力量だから、原作者(と言うより、実話なんで本人そのまま)坪内知佳さんのお話をよりドラマチックに作り上げてくれるんじゃないかとワクワクしている
一話目を観て、奈緒が漁師たちに啖呵を切るシーンに惚れ惚れしてしまった。上手い女優だと前から思っていたが、今までの役どころは優しく柔らかいイメージだったので一層額に青筋立てて怒鳴る姿に感動だ
6次産業化というフレーズも目新しく、うら若きシングルマザーがどのように男社会の権化のような漁師たちの頭に立っていくのか楽しみだ
序盤終わったところで、バラバラだったベクトルが一つの目標に集約されていき、これからは一風変わったお仕事ドラマになるのだろうか?それはそれで森下脚本の事だから退屈な話にはならないんじゃないかな。奈緒の役者生命を変えるような作品になる事を切に願う
それにしても実物の坪内知佳さんを写真で拝見したが、丸の内の美人キャリアOL然としているのにあのパワーは常人には無しえないことだ
「silent」
気はすすまなかったけど、連ドラ通の方が褒めていたのでとりあえず観てみようかなと
川口春奈は代役で大河ドラマに抜擢されたことにより低迷期を抜けたようだ。朝ドラでも目立つ役で存在感を示していたから、揚げ調子の今、一気にトップ女優の仲間に名を連ねたいところだろう
一話目二話目を連続で視聴したが、とても良く出来ている
主演の二人がちょっと不安だったけど結構うまく嵌っていたので違和感はない
三木孝浩監督作品のように丁寧に絵作りと描写がされているので、このまま終盤まで品質を落とさないで欲しいと思う。舞台が高崎市となっていたので調べてみたら、脚本家生方美久がわたくしと同郷の群馬県出身だと分かり俄然応援したくなった。新人脚本家でここまでしっかりした本が書けるのは才能ありと注目しておこう
三話目も切ない。良質のドラマ全般に言えることは主人公を取り巻く人物が魅力的だということ。本ドラマも鈴鹿央士の誠実でナイーブな演技と夏帆のろうあ者役が素晴らしい
「推しが武道館いってくれたら死ぬ」
如何にも深夜ドラマっぽいけど、この題材も過去に結構傑作が生まれているので侮れない
主役の松村沙友里は全然知らなかったけど、乃木坂46の元メンバーだったということでスタイルも良いし美人なのにどこかヲタク臭がするところは親近感が湧く
後述するアマゾンプライム制作ドラマでも重要な役を飄々と演じていたので、今後伸びてくる女優なのかもしれない
回を重ねる毎に面白くなってくるので、笑いをまぶしながらも誰かを一生懸命応援する熱さを見せ続けて欲しい
「結婚するって、本当ですか」
プライムビデオ制作ドラマ
わたくしたち世代だと、この題名聴くとダ・カーポのあの名曲を真っ先に連想する。調べてみたら1974年のヒット曲だからほぼ半世紀前の歌なんだな
あの歌では前に付き合っていた恋人が結婚する事を短い手紙で知る女心が抒情的に描かれていたから何となく気が重かったけど、ドラマは昨今の草食系男女のムズキュンなお話になっていて、CMスポンサーの忖度しながら適度な落としどころで作られる民放ドラマより格段に面白かった
葵わかなかってあまりピンとこない女優だけど、この役にはうまく馴染んでいて説得力があった。実年齢よりかなり落ち着いてみられるところもキャスティングが優れていたことを実証している
松村沙友里が良いアクセントになっていた
「鎌倉殿の13人」
いよいよ終盤戦、小栗旬がどんどんダークサイドに落ちていくので居たたまれない展開が続いている。その分深みが出て見応えはいよいよ増してきた。三谷幸喜らしい遊び心溢れる仕掛けも随所に散りばめられているから気が抜けない
実朝がゲイだという匂わせ方は今時だし、これをNHKの看板番組である大河でやれるのは流石だ
「舞いあがれ」
前作の評判が散々だったから立ち上がりは順当な雰囲気で安心した
主人公の幼少期を五島列島に置いたのは画面に広がりもあり正解だった。その分東大阪に戻ってきてからが何だか煤けて見えてしまう
本筋の話になる前に失速しなけりゃいいけれど・・・
日本語としてはおかしい
線は、僕を描く
僕が線を描く筈なのに
でも、観終わって映画館の扉をくぐる時、なんの違和感も無い
正しく引かれた線は僕の生き様を描いているようだ
小説の読み方が著しく偏っていた頃があった。同じ作家の作品ばかり読み続け、底をつくと暫く何を読んだら良いか途方にくれた。図書館の棚にある「あ」の段にある作家を順番に読んでみたりもしたけど、ハズレの時は苦痛で斜めどころか横読み状態で読み飛ばす事への罪悪感もあり「す」の辺りでやめた頃本屋大賞が始まった
人気作品が多いからなかなか図書館で借りるのも骨が折れるけど、当て所もなく棚の間を徘徊するよりよっぽど良い
この映画の原作はそうした選択の中で出会った
水墨画という未知の世界を瑞々しく物語にしていたから、一気に読み切ったと記憶している
そんな魅力的な原作が映画化されるときいて楽しみに待っていた
監督は「ちはやふる」シリーズを心踊る映画に仕上げた小泉徳宏だから信頼もできる。佳作「タイヨウのうた」以降青春の息吹を真正面に描ける監督として期待している人だ
主人公もヒロインも原作の雰囲気に合っていると思う。横浜流星と清原果耶(着物姿がとりわけ美しい)の美男美女は現実感ないけど、演技力と雰囲気で最後まで見せ切った
脇を固めたベテランや若手も力量のある布陣で楽しませてくれる(ここにも河合優実が目立たずしっかり演じていた)
水墨画に限らず、好きなもの一生懸命になれるものを突き詰めている人は、真っ直ぐな線を引くことができる
それは最初から真っ直ぐでは無いかもしれないけれど、諦めなければ自分の意図した線は必ず描けるんだ
そうして描かれた線はきっと君の姿になる
小説では表現できなかった水墨の美しさや所作の大胆さがこの映画の肝になっていた
躍動する映画は美しいと、やっぱり感じさせてくれた