寒い日が続いておりますが、おかわりございませんか?
毎年、年頭に立てる目標のうち「映画の鑑賞20本」っていうのがあるのですが、このところ全く達成できておりませんでした。久し振りに今年は達成できましたのでお知らせいたします。それも邦画だけで20本鑑賞できたことは、魅力的なラインアップであったことの証明です。本当に今年の邦画は充実しておりました。
そんな年のベスト10は、いつものオドオドした書き方ではなく、胸を張った物言いで書き連ねることが出来ます。
①ヒミズ
園子温2連覇です。
今、彼ほど世界を怖れず自分の想いを表現できる作家はいないのではないでしょうか?前作「冷たい熱帯魚」のようなドロドロの狂気は鳴りを潜めましたが、焦れるような熱気溢れる狂気に満ちておりました。
成功の一因はベネツィアで新人賞をW受賞した二人の熱演であることを忘れてはなりません。ラストシーンは永遠の名シーンとして、わたくしの脳裏に刻まれました。
②鍵泥棒のメソッド
何しろ脚本が素晴らしい。
この作品をご覧になられた方で、詰らなかったという感想を抱かれる人がもし居たとしたなら、本当に悲しい人生を歩まれた方なんだと愁傷いたします。気持ちよく騙されて、ちょっぴりノスタルジックな心地よさを味わいながらポカポカしちゃう映画は、そうそう創れるものではありません。主役の二人が上手であるのは誰もが認めるところですが、広末涼子の可愛らしいボケぶりにキュンキュンしてしまうのでした。
③おおかみこどもの雨と雪
今年一番泣いた映画です。
アニメーションならではの美しさと躍動感、時間の流れを役変えすることなく(子役⇒大人)表現できるメリットなど、実写では上手く表現できない映像がふんだんにスクリーンを蓋い圧巻でした。物語の成功は雨と雪の成長を見せながら、実は母親花の成長物語になっていることです。脚本の奥寺さんはライターとして日本映画に欠かせない人材です。
④終の信託
周防の変遷が色濃くでました。
かつての周防映画は、ライトな感覚で若者向きな作風でありましたが、前作あたりから重みのある題材と大人向けの色調を醸し出すようになってまいりました。そして今作は人生の終焉というこれ以上ない重さがテーマになり、且つ、人が人を裁く理不尽さを映像にすることが出来るまでに進化しております。「しこふんじゃった」のようなほのぼのした作品が好きですけど、人は歳をとりゆくにしたがって目線が変わりゆくのは必然なのだなぁと納得いたしました。
⑤桐島、部活やめるってよ
不思議な味わい。構成の勝利です。
「腑抜けども・・・」も構成が凝っていましたので、この監督の強さなんだろうと思います。
殆ど期待しないで鑑賞いたしましたので、思わぬ拾い物をした気分です。5番目の順位も往々にそのあたりが影響しているかもしれません。生徒が美男美女ばかりだったのがちょっぴりアクセントに欠けている気がしました。
⑥苦役列車
山下監督は巨匠の片鱗さえ漂せてます。
原作が私小説に近いものですから、あの雰囲気を壊さず映像に纏めるのは難しかったと思います。所謂口当たりの宜しい青春映画とはいえませんが、限りなくリアル感のある青春が描かれておりました。オリジナルキャラクターである書店の女の子を、AKB卒業した前田敦子が地味に演じていて将来性を感じました。
⑦わが母の記
品格のある日本映画は世界の誇りです。
大作家先生の実話をモチーフにしているらしいので、ところどころ鼻持ちなら無いインテリゲンチャ臭がしてイラつきましたが、壊れてゆく母親によせる息子の情愛には優劣ある筈もなく感動的でした。役者も充実してますし、演出も格調高く見応えのある作品でありました。
⑧夢売るふたり
期待が高かった分、相対的評価は低くなりました。
西川美和の新作が観られる喜びは、映画好きとして代えがたいものがあります。今回もオリジナルストーリーで勝負してきました。その志は往年の名監督名脚本家に匹敵するようです。ただし、どれほど才能ある作家であっても、独力での限界があると思うのです。有能なライターが脇を支えていたなら、この題材はもっと面白くなったはずです。
⑨北のカナリアたち
小百合さまの美魔女ぶりを想いきり堪能してください。
この作品も、脚本の練り方次第では驚くような傑作になったことでしょう。物語上の無理が必然と思わせる仕掛けが上手に出来ているか否かでドラマの質は全く違うものになります。小百合さまと芸達者な6人の教え子の演技が印象的な佳作になりました。
⑩ロボジー
矢口ワールドは健在です。
本当に発想がユニークですね。ただ、核になる3人のロボット開発者達にいまひとつ魅力が感じられませんでした。「ウォーターボーイズ」「スウィングガールズ」という傑作コメディーの主人公達は、不器用ながら一心不乱に突き進む透明感を持ち合わせていたのに、今作では大切なそこの部分が欠落していたように思います。吉高由里子は適材でした。
とまあ、本当に良い年でした。
次点として、「ふがいない僕は空を見た」「キツツキと雨」「三丁目の夕日’64」などをあげて終わりに致します。
来年も幸せな一年になりますように。
毎年、年頭に立てる目標のうち「映画の鑑賞20本」っていうのがあるのですが、このところ全く達成できておりませんでした。久し振りに今年は達成できましたのでお知らせいたします。それも邦画だけで20本鑑賞できたことは、魅力的なラインアップであったことの証明です。本当に今年の邦画は充実しておりました。
そんな年のベスト10は、いつものオドオドした書き方ではなく、胸を張った物言いで書き連ねることが出来ます。
①ヒミズ
園子温2連覇です。
今、彼ほど世界を怖れず自分の想いを表現できる作家はいないのではないでしょうか?前作「冷たい熱帯魚」のようなドロドロの狂気は鳴りを潜めましたが、焦れるような熱気溢れる狂気に満ちておりました。
成功の一因はベネツィアで新人賞をW受賞した二人の熱演であることを忘れてはなりません。ラストシーンは永遠の名シーンとして、わたくしの脳裏に刻まれました。
②鍵泥棒のメソッド
何しろ脚本が素晴らしい。
この作品をご覧になられた方で、詰らなかったという感想を抱かれる人がもし居たとしたなら、本当に悲しい人生を歩まれた方なんだと愁傷いたします。気持ちよく騙されて、ちょっぴりノスタルジックな心地よさを味わいながらポカポカしちゃう映画は、そうそう創れるものではありません。主役の二人が上手であるのは誰もが認めるところですが、広末涼子の可愛らしいボケぶりにキュンキュンしてしまうのでした。
③おおかみこどもの雨と雪
今年一番泣いた映画です。
アニメーションならではの美しさと躍動感、時間の流れを役変えすることなく(子役⇒大人)表現できるメリットなど、実写では上手く表現できない映像がふんだんにスクリーンを蓋い圧巻でした。物語の成功は雨と雪の成長を見せながら、実は母親花の成長物語になっていることです。脚本の奥寺さんはライターとして日本映画に欠かせない人材です。
④終の信託
周防の変遷が色濃くでました。
かつての周防映画は、ライトな感覚で若者向きな作風でありましたが、前作あたりから重みのある題材と大人向けの色調を醸し出すようになってまいりました。そして今作は人生の終焉というこれ以上ない重さがテーマになり、且つ、人が人を裁く理不尽さを映像にすることが出来るまでに進化しております。「しこふんじゃった」のようなほのぼのした作品が好きですけど、人は歳をとりゆくにしたがって目線が変わりゆくのは必然なのだなぁと納得いたしました。
⑤桐島、部活やめるってよ
不思議な味わい。構成の勝利です。
「腑抜けども・・・」も構成が凝っていましたので、この監督の強さなんだろうと思います。
殆ど期待しないで鑑賞いたしましたので、思わぬ拾い物をした気分です。5番目の順位も往々にそのあたりが影響しているかもしれません。生徒が美男美女ばかりだったのがちょっぴりアクセントに欠けている気がしました。
⑥苦役列車
山下監督は巨匠の片鱗さえ漂せてます。
原作が私小説に近いものですから、あの雰囲気を壊さず映像に纏めるのは難しかったと思います。所謂口当たりの宜しい青春映画とはいえませんが、限りなくリアル感のある青春が描かれておりました。オリジナルキャラクターである書店の女の子を、AKB卒業した前田敦子が地味に演じていて将来性を感じました。
⑦わが母の記
品格のある日本映画は世界の誇りです。
大作家先生の実話をモチーフにしているらしいので、ところどころ鼻持ちなら無いインテリゲンチャ臭がしてイラつきましたが、壊れてゆく母親によせる息子の情愛には優劣ある筈もなく感動的でした。役者も充実してますし、演出も格調高く見応えのある作品でありました。
⑧夢売るふたり
期待が高かった分、相対的評価は低くなりました。
西川美和の新作が観られる喜びは、映画好きとして代えがたいものがあります。今回もオリジナルストーリーで勝負してきました。その志は往年の名監督名脚本家に匹敵するようです。ただし、どれほど才能ある作家であっても、独力での限界があると思うのです。有能なライターが脇を支えていたなら、この題材はもっと面白くなったはずです。
⑨北のカナリアたち
小百合さまの美魔女ぶりを想いきり堪能してください。
この作品も、脚本の練り方次第では驚くような傑作になったことでしょう。物語上の無理が必然と思わせる仕掛けが上手に出来ているか否かでドラマの質は全く違うものになります。小百合さまと芸達者な6人の教え子の演技が印象的な佳作になりました。
⑩ロボジー
矢口ワールドは健在です。
本当に発想がユニークですね。ただ、核になる3人のロボット開発者達にいまひとつ魅力が感じられませんでした。「ウォーターボーイズ」「スウィングガールズ」という傑作コメディーの主人公達は、不器用ながら一心不乱に突き進む透明感を持ち合わせていたのに、今作では大切なそこの部分が欠落していたように思います。吉高由里子は適材でした。
とまあ、本当に良い年でした。
次点として、「ふがいない僕は空を見た」「キツツキと雨」「三丁目の夕日’64」などをあげて終わりに致します。
来年も幸せな一年になりますように。