映画と渓流釣り

物忘れしないための処方箋

ゴールデンスランバー おとうと

2010-02-14 14:18:50 | 新作映画
 伊坂幸太郎の作品は世の中の皆さんがおっしゃるほど面白いとは思いませんが、何故かしら映像化されやすく今までにも沢山映画になってますね。先日拝見したゴールデンスランバーも平均点以上ではありますが、花丸のスタンプは付けられませんでした。堺雅人は適役を上手くこなしていましたし、竹内結子の学生時代は無理ありましたが、飄々としたお母さん役には最近富に安定感が出てきて唸らせていただきました。然しながら突飛な脇から溢れるキャラクターが整理できていませんのと、黒幕であろう権力の二重写しがボケボケで緊迫感がありませんでした。楽しめますが、手放しで褒められないのは最近の日本映画に良くあるもの足りなさです。

 山田洋次はまだまだ死ねない監督です。昔の家族、故郷、幸福の黄色いハンカチには及びませんが、毎年心に沁みる素晴らしい作品を提供してくれる人だからです。いつもの事ですが、物語はそれほど起伏があるわけではなく、誰の人生にも多少係わりのありそうな日常の積み重ねを描いてゆきます。どう仕様も無い人間のなかにも、人間だからこそ持てる美しさを見せてくれます。男はつらいよの兄妹が、姉弟になることで語り口は違うにせよ、肉親の情愛みたいなものは同じ温度で感じることが出来ました。吉永小百合円熟してます。鶴瓶演技に衒いがありませんでした。蒼井優ますます大きくなりつつあります。山田演出の気持ちよさを今年も味わう事が出来て幸せでした。


食堂かたつむり

2010-02-07 11:03:50 | 新作映画
 「バベットの晩餐会」のような、お腹も心も満ち足りた気分にさせてくれる事を期待して映画館に通ったのですが、腹八分にもなりませんでした。女流監督のいけないところが多く出ていて、退屈してしまう事も度々でした。

 下手なファンタジーっぽい作り方がこの映画をダメにしてます。映像をメルヘンチックにする事ではなく、お店に訪れる人々にそのお料理で奇跡を起こすようなファンタジーにすべきでした。母親との関連性もしつこ過ぎて辟易してしまいます。食堂かたつむりで頂くお料理がメインであって欲しかったので、老妾の挿話が一番見ごたえがありこちらの心も高揚いたしました。わたくし事で恐縮ですが、年間300日位厨房に立つので(料理人ではありませんが)お料理をする楽しみは分かるつもりです。丹精込めて食材を集めて、食べてくれる人の好き嫌いを想像し少しでも喜んでくれる事を祈りながら誂える時の楽しみは、毎日の事であっても心躍る時間です。老妾の挿話だけは作る人と食べる人のお互いの喜びが溢れておりました。柴崎コウ、余貴美子、満島ひかり、三浦友和、どの役者も上手いのですが、出すぎであったり引っ込みすぎであったり適材に使われていませんでした。演出の失敗がこの映画の致命的出来事でした。