安定した良作を生み出す脚本家野木亜紀子と気心知れた監督・プロデューサーが、面白い映画を観せたいから知恵を出し合ったんだなとひしひし感じられる力作
サービス精神満杯で、娯楽映画かくあるべしの見本。ただ、ちゃんと社会的なメッセージは分かりやすく折り込むあたり、外連味こてこてで通受けも充分だ
わたくしにとっても仕事は勿論のこと、家庭への配達にも宅配便は欠かせないライフラインになっている。商売柄、大手は元よりこの映画の影の主役である末端の配送業者とも話しをすることがあるから、とても身近な問題だ
若い世代中心になんでもネットで注文して玄関まで届けてもらう時代。お店に行って自分の目で見て触っ感触を信じて買い物する楽しみとかスリルなんて欲していないのかなと思うこともあるけど、定型化されたものを買うには便利なシステムだ
巨大倉庫の中で配送商品を探して蠢めく労働者が、AIに管理された機械の一部に見えてくる
流通される商品が流れて行く様は無機質であるけど、裏に悪意の仮面を付けているような錯覚に陥る
そんな舞台で奮闘するのはやっぱり心の通った人間なんだよと、映画は温かい結末を用意してくれるが嬉しい
とても良く出来たエンタメだ
テレビシリーズの「アンナチュラル」「MIU404」が出しゃばることなく溶け込んでいたのも高ポイント。テレビ局主導の企画ならバランスを欠いて絶対失敗していたろう
この手の作品が一般の観客に受け入れられ大ヒットするのは、映画界にとってとても良いこと
願わくば、公開時期がGWや正月興行などの本気の勝負時であったらな
最近、鳴物入りのハリウッド大作や大スター揃い踏みの話題作を見かけることも減り、ましてやそういった映画に並ぶ家族連れの楽しそうな姿なども見ることはない
最後に教訓として、
再配達の手間はなるべくかけないようします