映画と渓流釣り

物忘れしないための処方箋

寝ても覚めても 恋愛のかたち

2018-10-30 20:17:51 | 新作映画





恋愛のかたちに思わず考え込んでしまい土曜日の夜10時、行き交う車も疎らな新興住宅地のなだらかな道をトコトコ走った。

そっくりな容姿をした二人の人が交互に現れたらどちらを愛するのだろう。知り合いに双子(一卵性)がいないので身近に感じたことはなかったが、もし、愛した人が双子だったらどんなふうに感情は彷徨うのだろう。どんなに顔かたちは似ていても人格は全く別物だと聞いたことはあるが、人間好意を持つ最初の取り掛かりはやっぱり顔かたちに違いない。性格が合う合わないとかはその次のステップだ。

それでは顔かたちが同じだからといって素直に二人を愛することができるのか、答えは出せない。この作品を観終わって帰りの車中で答えの出せない疑問を考え続けた。不思議な恋愛映画。でも、とても気持ちが落ち着いてやわらかい心持になった。

朝子の前に現れた二人の男、麦と亮平は顔かたちは同じでも人格は真逆。麦は感情のまま自分勝手に朝子を愛し、突然目の前から消えるような男。一般的にはダメな奴。でも、二人乗りのバイクが転倒事故を起こしても、衆人の前で朝子を抱き寄せ口づけする突拍子の無さは男から見てもかっこいい。こんな生き方ができるならやってみたいとも思う。
対極の亮平は真面目にコツコツ社会のなかで生きている良識あるサラリーマン。昨日の続きに今日があり、そして明日を積み重ねてゆける男だ。麦のような力強さや瞬発力はないが、緻密さと持続力そして持ち合わせた誠実さは人として信頼できる。

朝子の気持ちで観ているうちに亮平として考えている自分がいて、優れたドラマは全部そうだけど劇中の人物に心は移ろう。
だから、5年前に消えた麦が現れて手を引いた時に流されるように付いてゆく朝子に戸惑った。麦がモデルとして注目され偶然撮影現場に居合わせた朝子が走り去る麦を乗せた車に手を振るシーンで、彼女は麦への感情を吹っ切ったと思ったから尚更スルスル付いてゆく朝子に裏切られた気持ちになる。もっと朝子の気持ちが掴めなかったのが、東北の早朝の海から亮平のもとへ帰ろうと心変わりしたその気持ちの変化。いくら好きな女だからといっても、別の男に手を引かれ目の前から去っていった女をすんなり受け入れられるほど普通の男は強くない。当然亮平も朝子を拒否する。観ているわたくしも男だから一層亮平の心持になってしまう。

それでも生きて伝えたい気持ちがあるから、真っ直ぐ伝えることを朝子は選ぶ。受け入れてもらえるとか、許してもらいたいとかではないのだろう。濱口監督の前作「ハッピーアワー」のラスト近い挿話で、フラッと知り合いの男についていって一夜を共にした奥さんが、早朝に帰ってきて夫に言う。「行きずりのセックスした。けど、この家からは出てゆくつもりはない。別に許してもらおうとも思わない」と宣言したあのシーンを思い出した。その言質だけをとれば、どちらも随分勝手だなと思ったけど、彼女たちの気持ちの流れを覚めた目で見ていると何故だか納得してしまう。

亮平は朝子を引越し先の部屋に入ることを許すが、多分一生彼女の心離れを許すことはないだろう。一緒に暮らすうちにゆっくり溶けてゆく二色アイスのように心も混ざり合うのだろうか。

前述の命題。
同じ容姿の女がわたくしの前に現れたら、わたくしも朝子のように心が移ろうのだろうか?
限りなくありえない設定ではあるが、体験してみたいような誘惑に駆られる。
何だか理不尽なようだがなんとなく朝子の気持ちに納得して、ゆったりした川の流れのように穏やかな気持ちになる。
もしかしたら究極の恋愛映画なんだと思う。

原作は読んでいない。女流作家だから女の謎の部分を描いているのだろう。だからこそ監督と共同で脚本を書いた田中幸子がポイントなのかもしれない。男だけでこの脚本は無理な気がする。黒沢清監督作品にかかわっている以外、過去作に大した作品はないが、この作品への貢献度は高いと思う。

キャストも大健闘だと思う。東出昌大は出始めの阿部寛に似た不器用さを感じていたが、二役を分かりやすく演じ分けていた。急成長しているなと感心した。唐田えりかは素人みたいなものだから演技どうこうではなくて、感情が顔にでないからこそ朝子の役がはまっていた。脇を固めた瀬戸康史、山下リオ、伊藤沙莉、田中美佐子も役どころを極めていた。

これから濱口監督には最大限の注目をしていこう。




TVドラマ評価

2018-10-27 02:06:20 | 旧作映画、TVドラマ

2018年(2017.7~2018.6)東京ドラマアウォードと第12回コンフィデンスアワード・ドラマ賞が発表された。
奇しくもどちらとも受賞さたのは「おっさんずラブ」観ていないのでなんともコメントできない。

そこで「あまちゃん」以降、日本のテレビドラマにも興味をもって観るようになったから、識者といわれる方々が選ぶ優秀なドラマとはいかがなものかと過去の受賞作品を調べてみた。

東京ドラマアウォードは2008年(2007.7~2008.6)から今年で11回目。受賞作品で観たのは5本。「JIN-仁-」「あまちゃん」「天皇の料理番」「あさが来た」「逃げるは恥だが役に立つ」。大ヒットした「半沢直樹」や「家政婦のミタ」なんかも受賞しているから作品の質も大衆へのアピール度合いも含めた真っ当な選出かと思う。最優秀作の称号は与えられなかったが、「Mother」「ガリレオ」「きょうは会社休みます」「デート~恋とはどんなものかしら~」「カルテット」「アンナチュラル」とどれも好きだった作品が優秀作品に名を連ねている。

コンフィデンスアワード・ドラマ賞は四半期に一度、春夏秋冬の節目に最優秀作品を選出し、尚且つ年間としての決算も行うようだ。未だ歴史が浅いけど期ごとに選出されるので分かりやすい。年間最優秀作品は当然各期の受賞作の中から選ばれることになる。2016年「逃げるは恥だが役に立つ」2017年「カルテット」の最優秀作品賞受賞も納得。第2回「下町ロケット」第4回「重版出来!」第5回「家売るオンナ」第11回「アンナチュラル」前述した2作品を含め全12回中6作品を観ている。




1ポンドステーキ

2018-10-24 19:52:05 | お料理





うちの街にもいきなりステーキのお店ができたので行ってみた。

ランチ限定みたいだけど、このボリュームで2000円は安い。

昔からあるバッファローキングも多少影響あるかも。

競い合い美味くて安く提供してくれるなら、大いに歓迎。






ロックフェス

2018-10-20 20:27:12 | お遊び

相鉄ロックオンミュージック
電鉄会社が入場料無しで主催するなんて、粋なフェスだなと思う。
よく散歩コースに使っている近所の公園で行われるのも嬉しい。



女の子が一人だけ入っているバンドが多い

去年のクリスマスイブに行って結構楽しんだロックフェスが、今年は季節としては理想的な10月中旬に開催された。ロックフェスとか言っているけど、殆どが素人➕まだ芽のでないミュージシャンばかり。


アイドルグループのステージはオタク臭プンプン

会場は三つあるけど、聞きごたえのあるのはメインステージに出演している。
演目が終わると、隣のブースではファンとの触れ合いと称するCD販売などの物販が始まる。
聞いたこともないアイドルグループにも各一人一人長い行列ができていた。


暗くなるとステージはいっそう盛り上がる

秋の夕暮れに応援するバンド(グループ)の為に狂った様に踊り飛び跳ねる若者達を見ると、馬鹿らしくも微笑ましい。ほぼ無名のバンドに夢中になれるエネルギーは侮れない。


2日目、綺麗な月が辺りを照らす

丸二日間、ドップリ楽しんだ。跳ね過ぎて腰と肩が痛い。
また来年もここで楽しめるといいなぁ。






若おかみは小学生

2018-10-16 20:43:06 | 新作映画


信頼している方のブログ記事を読んで、観ても良いかなとは考えていました。
それでも当然抵抗ありました。題名があまりにも幼稚ですし、今更文部省特選と謳われてもね。
そうこうしながら見逃して後悔した作品も沢山ありますので、この作品もその中の一本になる可能性大であったのですが・・・。





日曜日の朝9時過ぎ、150人くらいの座席が5割くらい埋まっていましたでしょうか、殆どは小学生(それも低学年)連れの親子です。いつものように最前列に座る勇気がなくて3列目に席を取りました。それでも悪目立ちをするかと思いちょっぴり恥ずかしいのですが。

いきなり主人公の女の子は父と母を亡くしてしまいます。
児童文学だと聞いてますし、小学生をメインターゲットにして作られているのだから、あまりの展開に唖然としてしまいました。今時の子はこのくらいのインパクトがないと物語に乗ってきてくれないのでしょうか?
それでも救いは優しくも頼りになるおばあちゃんが居た事です。温泉旅館の女将だから作法にはうるさいけど気風の良いおばあちゃんです。旅館で働く女中さんも板前さんも気持ちの良い人です。わたくしもそこそこ大きな温泉地で生まれ育ちましたし、友達の家が温泉旅館を営んでたりしましたので温泉旅館けっこう詳しいですよ。(アルバイトもしましたしね)

何より女の子にとって心強かったのは、同い年くらいの男の子と女の子の幽霊そして子鬼でした。受け入れてしまえばどんな悩みも打ち明けられる親友になってゆきます。このあたりが児童文学であるし、アニメだからこそ違和感なく観るものの心に飛び込んできます。
幽霊たちの応援を受けながら若女将として成長してゆく姿を、わたくし達はあたたかい気持ちで見守ります。子鬼が引き寄せた心に傷を抱えるお客さんを丁寧に心こめて接客していくことが若女将の成長にも繋がってゆくのですね。この映画を観た子供たちもここのところを感じとって欲しいな。母を失って自分の殻に閉じこもる子や占い師の自分に疑問を感じている女性も若女将の接待を受けて前向きに歩き始めます。父母の死亡事故の原因となったトラック運転手の挿話は泣いちゃいました。
ライバルの大旅館の娘とも心通じ舞う神楽は晴々しく、こんな若女将の居る温泉旅館なら泊まってみたいなと思うのでした。

かの宮崎駿だったか高畑勲だったか、アニメは子供のために作っていると聞いたことがあります。
日本ではいつしかアニメは大人のオタクに喜ばれる文化の側面が大きくなってしまい、単純に子供のためのアニメ作品はドラえもんと妖怪ウオッチみたいなキャラクターを楽しむだけになりつつあります。キャラを介して学んだり感動したりすることもあるだろうからそれはそれで良いと思うけど、一年に一度くらいはこんな映画も観て欲しいと思うのです。わたくし達大人が子供に観てもらいたい良いものを選択する度量をまず身につけなくてはなりませんね。

監督は存じ上げません。
脚本の吉田玲子は「けいおん!」はじめとする京都アニメーション作品で馴染み深いので、今回も期待に違わずプロフェショナルな仕事でした。
声優に関しては全く知識ありませんが、主人公織子をあてた星蘭ちゃんが上手だったのには驚きました。今時の子役は本当に上手です。