映画と渓流釣り

物忘れしないための処方箋

2024 つべこべ言わない映画BEST10

2025-01-01 07:41:00 | 映画ベストテン
新年おめでとうございます




また365日が過ぎて、この一年お豆腐の値段が55円から72円に爆上がりしました。映画はどうでしょうか?金儲け主義Tジョイ系以外は頑張って料金据え置きのままです(老人価格しか知りませんが)
映画は映画館で観てこそ作家に対して物申す権利があると思いますので、少ないお小遣いやりくりして一本でも多くの作品に出会えるようあの暗闇に通いました
ハリウッドメジャーは相変わらず遊園地興行でウンザリ。欧州作品で久しぶりに感激しました。邦画は実力のある新興勢力が台頭してると思わせる一年でした


❶コット、はじまりの夏

初夏に観たこの映画を半年以上経った今思い出してもじんわりと目頭が熱くなる。そんな幸せな気持ちにさせてくれる作品って年に何本出会うことが出来るだろう。わたくしたち日本人にとって、アイルランドの夏の日々は物理的な距離よりもっと遠く感じる。決して家族に恵まれているとは言えない少女コットが、ひと夏に経験した本当の愛の物語

❷夜明けのすべて
最近の映画は表面的な人間の葛藤を描くより、マイノリティでありながらも普遍的な感情を細やかに描写するようになってきた。この作品では女性のPMS症状とエリート青年のパニック障害について繊細なアプローチで寄り添う。前作でも聴覚障碍者の女性をドキュメンタリーのように冷静な目でとらえた三宅唱監督らしい優しさ溢れる映画

❸太陽と桃の歌
年末に出会ったスペインの家族に心を揺さぶられた。二時間の物語なのに登場人物の家族全員から茶飲み話を聞いていたような親近感がある。若かりし頃に傾倒していたネオリアリスモ風な作風が、わたくしの琴線に触れたのが一番の理由だろう。それにしても世界中どこの農家も土地とそこで育む作物に対する愛情と拘りは一緒なのだと感じ入る

❹哀れなるものたち
2024年に出会った映画では一番衝撃的だった。敬愛するフェリーニやパゾリーニが描いたような猥雑で独創的な世界観は最近の映画作家の中では異色だ。エマ・ストーンの振りきれた演技も追随を許さない。モノクロとカラーをセンス良く使い分けた撮影も一級品だった。好きとは言えないけど、とても面白い映画だったと人を選んで勧めたい

❺雨の中の慾情
こちらも現代日本で映画化し、シネコンで上映するという暴挙をよくぞやったと褒めたい。作品ごとに問題作を発表している片山慎三らしいエロスとグロテスク満載の描写で、尚且つ原作つげ義春の難解な不条理劇は単純明快な作り物しか観ていない人には苦痛だったろう。配信やレンタルなんかで観ていたらわたくしも途中で投げ出してしまうかもしれない

❻ミッシング
石原さとみの代表作として今年度の女優賞大本命か。今まではコケティッシュな小悪魔系女子で認知されていたが、自身も子供を授かって今後の立ち位置を模索していたのではなかろうか。その意味ではとても良い出会いだったと思う。作品の題材は結論の出ない憂鬱さでいっぱいだから、観終わった後の爽快感は全くないけど淡々と応援したくなる

❼ラストマイル
連続テレビドラマでは本邦随一の名脚本家となった野木亜紀子と、いくつもの傑作ドラマを一緒に作りだしたプロデューサー・監督の勝利。社会的なメッセージも分かりやすく織り込みながら上質なエンタメに仕上げた。過去のテレビドラマを重層的に組み込んでいるけど、そのことでバランスを崩さなかったことが大成功の一因

❽あんのこと
映画好きな人からしたらやっと認知されたかとの感ある河合優実。2024年は評論家受けの良い「ナミビアの砂漠」より、ウェットで救いようのない短い人生を送ったこちらの主人公に感情移入する。薬物、毒親という社会問題も描いているけれど、コロナ過における悲劇をこうして見せられると、過ぎ去ったようでありながらまだあの遺恨はここにあるのだ

❾青春18×2 君へと続く道
ノスタルジックな甘さが気に食わない人もいるだろうけど、岩井俊二監督の「Love Letter」をモチーフにしていることに免じて許して欲しい。できるなら悲しい結末にしてほしくはないけど、懐かしさいっぱいの台湾の片田舎とトンネルの先にある真っ白な雪景色は哀しさとの相性は抜群なので仕方ないのかもしれない

❿ぼくのお日さま
中学生の煌めくような瑞々しさ、ナイーブな表情の横顔に当たる外光のコントラスト。氷上を楽しそうに舞う二人は美しく幻想的でさえある。対極にある大人の世界は打算と諦めの色に塗りつぶされている。日本映画らしい小品で繊細な映画だから、そっと公開され人知れず忘れ去られるのか。ラスト、男の子が満面の笑みで少女に何を語りかけたのを知りたい

次点
ビヨンド ユートピア 脱北
からかい上手の高木さん
関心領域
十一人の賊軍
きみの色

監督
三宅唱「夜明けのすべて」
脚本
野木亜紀子「ラストマイル」
女優
エマ・ストーン「哀れなるものたち」
石原さとみ「ミッシング」
男優
池松壮亮「ぼくのお日さま」


そして2024年も我が家のベストテンを張り出しましたので、ご紹介しましょう


奥様は相変わらず凄まじい鑑賞本数を背景に劇渋なラインナップでした
大学生になった息子もより一層ヲタクっぽい選択になってるように感じます

2025年も平凡で穏やかな暮らしが続きますように。好きな映画が好きなだけ観ることがでる日々でありますように
顔を出したばかりの、お日さまにお願いしました

皆さんにも良い年が訪れますように