映画と渓流釣り

物忘れしないための処方箋

ドライブ・マイ・カーは濱口監督の女性謎々映画だ

2021-09-28 16:08:00 | 新作映画

8月はコロナのため観ようと思っていた映画が全く観られなかった。その中でも今一番注目している映画監督作品がシネコンで上映されると聞いていたから楽しみにしていたのに、予想された通りあっという間に終映になって諦めていたところ、会社の映画好きな同僚から横浜美術館近くのキノシネマで未だ上映中だと教えられる。

3時間の長尺かぁ〜。コロナ明けの体たらく体力勝負だから前日から体調整えて臨まねばと思っていたのだが、よくよく考えてみれば監督デビュー作は5時間越える途轍もない作品だったことに思い至る。アレが最後まで厭きずに鑑賞できたのだからなんてことはない。筈

濱口竜介監督。三作目にして最早日本を代表する世界的な監督になってしまった。
「寝ても覚めても」の興奮は今でも鮮明だから、村上春樹の原作をどんな風に映像化したのか興味もある。原作は読んでないけど、小品の短編らしい。とても3時間になるような器じゃないと言う人もいる。

さて、物語は
心のよりどころでありパートナーとしても信頼していた妻の知られざる闇を垣間見た直後、彼女は謎を残したまま病死してしまう。寝物語に話していた空き巣に入る少女の物語と、カセットテープに吹き込まれた演劇台本の台詞だけが残されたすべてだ。舞台俳優であり演出家の夫は、捉えどころのない寂寥感と妻の闇に正面から対峙できなかった己の弱さに苛まれている。

彼を救い出したのは臨時の運転手として雇った23歳の女性。彼女も亡くなった母親との関係を整理できないまま自分を許せないで生きている。生き方も考え方も交わることのなかった二人は、お互いの過去を過ちではないと諭しあい前を向くことを選ぶ。

日本映画もここまで成熟したのかと、小さくため息をつきたくなるような静かな感動。

「ハッピーアワー」でも描かれた執拗な演劇ワークショップの場面が少しづつ形になり本番の舞台につながるところなど、モノづくりには共通した感慨があるのだろうと思わせる。素人っぽさを活かした配役なども今までの作品の延長だと受け止めやすい。

濱口監督は女性の不可思議な生態に素直な驚きと脅威を感じているのだと思った。以前書いたことがあるが「ハッピーアワー」の中で一夜の不貞を夫に打ち明ける妻の太々しさとか、「寝ても覚めても」で元カレの誘いにホイホイ付いて行った彼女がしれッと帰ってくる様は、病死した妻の闇と同一だ。監督はこの謎に答えを求めていない。

師匠の黒沢清との類似点も際立った。おどろおどろしくはないけど常に不穏な空気感は知らずとも似てしまうものなんだな。わたくしはアントニオーニ監督の「情事」「夜」と言った不安定さを感じてしまった。次回作は短編の連なる大作だとか。矢張りイタリア映画界の異才パゾリーニが作ったオムニバス作品のようなものを期待する。


久し振りに映画館に行ってみると、当たり前だけど多くのお客さんがいて、3時間ものマイナー作品なのに待合席の隣に座った若いカップルが微笑ましかった。未だ大学生だと思うけど、付き合い始めなのかその寸前なのかよくわからないけど初々しい。

一番好きな映画って何?(男の子)
「タイタニック」は何度も観ちゃった(女の子)
ボクは「スタンドバイミーかな」(男の子)
何か分かるぅ〜(女の子)

もっともっと仲良しになれるといいな


誰にも、そんな頃あったよね


2021夏ドラマはこうして終わりました

2021-09-27 10:05:00 | 旧作映画、TVドラマ


自らのコロナ感染で映画館には行けなかったけど、テレビドラマはしっかりチェックしていた。
当初危惧していた通り力量のある脚本家が見当たらないシーズンだったこともあり、観続けた4本(朝ドラは別として)は冬や春ドラマみたいな記憶に残る優良作品は生まれなかった。

「ハコヅメ」
題材は良いのに設定が酷すぎて興ざめしてしまうアリアリなパターン。原作がそうなんだろうけど、戸田恵梨香の元同僚をひき逃げした犯人を逮捕する復讐劇は邪魔だった。せっかく戸田恵梨香、永野芽郁のW主演なんだから交番勤務の婦人警官奮闘物語に的を絞って物語を展開すればいいものを、年中所轄警察署での捜査に駆り出されていては交番という面白い題材を生かし切ることは難しい。
ムロツヨシを上手く使って日々の交番勤務の些細な出来事を絡ませながら、婦人警官のバディ感とか新人警官の成長する姿とかが活写出来ていたなら大化けできただろうにと残念に思う。
永野芽郁の如何にも現代っ子らしい飄々とした演技にはわざとらしさがなく好感が持てた。もともと素材としてのポテンシャルは高いから、コメディエンヌとしての力量をこれからも増して欲しい女優だ。

「推しの王子様」
期待値は一番低かったので、最後までどうにか観続けられただけでも合格点をあげても良いと思う。
比嘉愛未、渡邊圭祐、ディーンフジオカの主要キャストも頑張っているから観ていて噓臭さは感じない。しかし決定的な欠陥はトキメキ感がないところだろう。これは主役の比嘉愛未が年上で大人の経営者役であることから致し方ない事ではあるが、大人の女性でも憧れの王子様への純粋な感情はあるだろうからそこをもっとファンタジックにそれでいてリアリティを持たせながら描ければもっと応援したくなっただろうに。
白石聖の美しさをドラマの中で引き出せる作品に出合いたいものだと今回も思ってしまった。このままだとそのままフェードアウトしてしまいそうで勿体ないな。
ゲーム作りのヲタク的要素とそれに懸ける熱量とかはあまり描かれなくて、その部分でも平均点止まりかな。

「#家族募集します」
このところ日本のホームドラマは疑似家族を題材にすることが多い。現実(肉親)の家族を描いてこそ真のホームドラマであろうとは思うけど、変に近しい間柄はドラマチックなストーリーにはならないのかそれともかえってリアリティを醸し出せないからなのか、適度なフェイクがあった方が観ているこちらもヒリヒリしなくてドラマに集中できるのか。
結局3家族+1.5みたいな変形されたホームドラマだけど、利害の一致はあっても抱えるそれぞれの事情や悩みは当然違うわけで、いくら仲の良いホームシェア家族だとしても相容れない部分は共有のしようがない。
そこを力技で感動的になんか作ろうとするから白けてしまうのも稚拙な感じがする。
仲野太賀をはじめうまい役者を揃え、子役も良くなじんでいたが重岡大毅は雰囲気良いお父さんキャラなだけでこの役は荷が重かった。

「TOKYO MER」
夏ドラマでは唯一放送日が来るのを待っていたドラマだった。
救急医療ドラマはよっぽど勘違いを起こさない限りハズレになる事はないので、定石通りに演出していればそこそこの緊張感と達成感は味わえる。一話完結にもしやすいから観ている我々もあまり脳みそを使わなくて済むのも取りつきやすい要因だろう。
新機軸としては手術室が事故現場に乗り込んでいくところ。病院内で繰り広げられる緊急オペシーンや、ドクターヘリでの救急搬送などの美味しいところ取りが肝だった。鈴木亮平のリーダーシップは現実味があり本当の医療現場を見ているようだったから成功したと言える。
難点をあげるとすれば、テロリストに纏わる設定が陳腐過ぎた。公安警察の中途半端な関与も邪魔でしかなかったので、違う仕掛けで縦糸の物語を作るべきだったろう。唯一人犠牲者(死者)となった妹の挿話も工夫の仕様があっただろうと思う。
社会がコロナ禍にあえぐこの時期、最前線で働く医療関係者へのエールになったのかは疑問だけど、レスキュー隊の活動も含め人の命のために日々身を粉にしている方々には頭が下がる。

「おかえりモネ」
終盤に近付き、モネは故郷へ帰る。
あまり温度を感じさせないお医者さんとの恋バナは燃焼不足だけど、やっぱりあらためて思う。
清原果耶、蒔田彩珠、恒松祐里、今田美桜
これからを担うだろう若手女優の活躍を観られるだけでも楽しい朝ドラだ。

2021釣り納め

2021-09-20 13:50:00 | 釣り
カツオのようにパンパンに肥えた虹鱒
こうなれば立派なファイターだ




台風14号が去って、コロナで苦しんだ身体も八割方回復したので、久し振りに桂川へ来た

川茂堰堤下流はいつもの倍以上の水流で釣りができない訳じゃ無いけど、川虫がとれそうもないので上流へ向かう。入渓しやすそうな中流域は9月のこの時分釣り人で一杯になるだろうから、鹿留合流から東桂堰堤までの穴場ポイントで竿を振る。少し水は高いが遡行に影響する事はない。寧ろコンディションとしては大物が狙える様な絶好の条件。なのに





釣れるのは20cm位の虹鱒ばかりだし、それも間遠くて渇水時よりも不調だ。一つだけ朱点の鮮やかな天魚が釣れただけで大物は手にできなかった

午後はさらに上流へ
穴口堤からは水量はいつもと同じ。ここはもう少し多い方が面白いのに
朝から何人か入渓しているようで足跡が散乱している。その割には良く釣れる。虹鱒と岩魚が交互に釣れる瀬、大場所では数尾の魚が入れ掛り午前中の鬱憤を晴らしてくれた




熟したアケビの実
子供の頃、多いタネに辟易しながらもその甘さを頬張ったものだ



稲穂はこうべを垂れ、恵みの秋は近い
今年も美味しい新米の季節がやってくる






翌日はテントが張れて川に降りやすい場合を優先した
城山大橋下流、水量は理想的なんだけど全くアタリさえも無い。月初には放流されているのだから何処かには居るんだろうけど、こんな事もシーズンには一回くらいはあるもんだ
ウェイダーの水漏れが酷くなったのを機に今季の納竿とする

釣りの途中足元の岩にマムシの子供がいた
死んでるのかと思い水をかけたら、冷たそうに頭を振り怒りだした。ゴメンよ