フェリーニ作品の中でも多分一番世界中で愛されている「道」を紹介して、長かった単身赴任の地、名古屋を去る。物語はキリスト教的な慈愛と魂の救済が描かれる。
ジュリエッタ・マシーナの無垢な演技
大道芸人ザンパノは粗野で乱暴な男。その厚い胸板で鎖を引きちぎるだけの芸がその日暮らしを支えている。前座につかっている小娘は少し頭の足りないジェルソミーナ。二人はオート三輪で町から町を渡り歩く生活だ。ジェルソミーナは不器用ではあるが無垢で純真な真心でザンパノに尽くそうと努力する。
そんな道中、サーカスのピエロ キ印を喧嘩の末殺めてしまったザンパノに、ほとほと愛想をつかしたジェルソミーナは逃げるように消えてゆく。いくばくか経った頃、海辺の町で女が歌うなつかしい旋律を聞いたザンパノが由来を問うと、数年前に流れ着いた小娘が歌っていたけど暫くして亡くなったと言う。ジェルソミーナの声がザンパノの耳に届いた瞬間。ザンパノは大切なものを失った事に気付き、夜の浜辺で慟哭する。
遅ればせながら、ザンパノにも神の福音が届く。
一番印象的な挿話は、ジャルソミーナがキ印に悩みを打ち明けるシーン。
ジャルソミーナ「あたしは誰の役にも何の役にもたっていない」
キ印「何の役に立たないものなんて、この世には無いのさ」
ジェルソミーナ「・・・」
キ印「例えばこの小石だって役に立ってるのさ」「小石が集まって道が出来ていんだ」
「道があるから僕たちはどこにでもいける」「君だって何かの役に立っているのさ」
いつだって、誰かの何かの役に立つ存在でありたい。
わたくしの四年間の名古屋生活は、誰かの路傍の小石となれただろうか?
あなたが、微笑んでうなづいてくれると良いのだけれど。