本当に久し振りです。女優の恐ろしいまでの演技を堪能したのは。
お二人共、誰しも異存なき演技派名女優。ここまでの道のりはそれぞれ違いますし、演技の見せ方や持ち合わせたキャラクターもずいぶん違います。本来なら真逆なパターンを見せたりすると、新境地開拓か!などと騒がれるのでしょうけど、犬童一心そんな姑息な事はいたしません。これでもかと正攻法です。聡明で正義感溢れる美しい婦人を、中谷美紀は当たり前のように演じます。自分の身に添う不幸を恨む事もなく、正直に健気に生きてゆこうとする女を、木村多江は気持ちよさそうに演じます。エキセントリックなシーンを派手な演技で魅せた中谷美紀のほうが目立ちましたが、この作品をそこはかとなく良質に纏め上げたのは、木村多江の薄倖な眼差しでした。断崖に消えゆく前に見せた顔のアップは、ジュリエッタ・マッシーナ演じるカビリアの無垢な信心にも通ずるところがありました。
原作はミステリでありますが、それを期待したとしたならちょっぴり残念かもしれません。「砂の器」もそうでしたね。犯人が誰であるかより、何故にその犯罪は起きたのか、そして逃げる事の出来ないその時代を松本清張は丹念に描いたのです。TVの二時間サスペンスに毒されてしまった方にはつまらなかったでしょうね。
難点を申し上げるならば、如何せん広末涼子が弱い。あの二人に挟まれては勝ち目がありませんから、可哀想ではあります。なればこそ、もっと新進の女優を使ってみるとかの方が面白かったように思います。もう一つ、鹿賀丈史の突飛な行動が伏線不足で、観る者に違和感を感じさせました。3人の女優で一杯一杯だったのかもしれませんが、脚本の厚さが足りませんでした。ともあれ「ゼロの焦点」堪能いたしました。
お二人共、誰しも異存なき演技派名女優。ここまでの道のりはそれぞれ違いますし、演技の見せ方や持ち合わせたキャラクターもずいぶん違います。本来なら真逆なパターンを見せたりすると、新境地開拓か!などと騒がれるのでしょうけど、犬童一心そんな姑息な事はいたしません。これでもかと正攻法です。聡明で正義感溢れる美しい婦人を、中谷美紀は当たり前のように演じます。自分の身に添う不幸を恨む事もなく、正直に健気に生きてゆこうとする女を、木村多江は気持ちよさそうに演じます。エキセントリックなシーンを派手な演技で魅せた中谷美紀のほうが目立ちましたが、この作品をそこはかとなく良質に纏め上げたのは、木村多江の薄倖な眼差しでした。断崖に消えゆく前に見せた顔のアップは、ジュリエッタ・マッシーナ演じるカビリアの無垢な信心にも通ずるところがありました。
原作はミステリでありますが、それを期待したとしたならちょっぴり残念かもしれません。「砂の器」もそうでしたね。犯人が誰であるかより、何故にその犯罪は起きたのか、そして逃げる事の出来ないその時代を松本清張は丹念に描いたのです。TVの二時間サスペンスに毒されてしまった方にはつまらなかったでしょうね。
難点を申し上げるならば、如何せん広末涼子が弱い。あの二人に挟まれては勝ち目がありませんから、可哀想ではあります。なればこそ、もっと新進の女優を使ってみるとかの方が面白かったように思います。もう一つ、鹿賀丈史の突飛な行動が伏線不足で、観る者に違和感を感じさせました。3人の女優で一杯一杯だったのかもしれませんが、脚本の厚さが足りませんでした。ともあれ「ゼロの焦点」堪能いたしました。