先ず、題名が良い。
ストレートで分かりやすい。
原作読まなきゃ何のことやら理解不能な題名じゃ、映画としては失敗だろう。だからってインパクトが強けりゃ良いってもんでも無い。「今夜、ロマンス劇場で」俳句の夏木先生なら、今夜という時間が明確で、ロマンス劇場という場所も分かりやすいと評価してくれそうだ。そして何より、ロマンス劇場で起こる大好きな人との逢瀬がそこはかと匂う。
オリジナル脚本だと言うが、綾瀬はるかの可愛いさと大人の色香を計算して作られたような設定だった。TV版世界の中心で愛を叫ぶの時から、綾瀬はるかは好きだから素直に嬉しい。それにしても(自分もそうだけど)日本人はオードリー・ヘプバーン好きだな、それもローマの休日に偏っているけど。物語の時代はローマの休日から10年後、でもその辺の違いは今の日本人にはまるでわからないだろう。ファッションとかに疎いから、劇中で何度も変わる衣装や髪型に的確なコメントはできない。だけどそのどれもが可愛らしかった。アン王女もそうだったが、市井の人々に紛れて活き活きとはしゃぐ姿の方が魅力的なのは当たり前だ。同様、美雪姫もティアラをとりドレスじゃない方が思い入れしやすい。
ストーリーは見え見えだけど、工夫もされていて二人の最期には嗚咽が止められなかった。ネタバレになるからここでは書かないけど、そんな愛の結末もファンタジックだ。
映画好きにはこの題材はストライクだ。スクリーンに映るヒロインに恋する青年の気持ちは痛切に共感できるし、そのヒロインを題材に自分の映画が作れたならこんなに幸せな事はない。
小さなアラをあげつらえばたくさん出てくるけど、ロマンス劇場で起きた愛すべき物語に無粋なヤジを飛ばすつもりはない。心地良い涙で拍手を送ろう。
加藤剛が命を燃やして演じている姿に感動する。
綾瀬はるかに恋せずにいられない。
そして、映画好きなあなたに観て欲しい、そんな映画。