今年は三月下旬から五月いっぱい映画館で作品を観ることが叶わなかったにもかかわらず、結構充実した一年だったように思う。公開延期の作品も沢山あったようだけど、いつの日かスクリーンで出会えるなら我慢できるし。心配なのは今年制作予定の作品に様々な負荷がかかっただろうということ。作品の量もそうだけど質の部分でも危惧している。来年以降どのように影響があらわれるか知れないけど、一日も早くこの状況が収束するよう願うばかりだ。
一年の落とし前として、好きだった作品の星取表を作ってみた。基本的に作品を貶すことはしないけど、星四つ並べられた作品はべた褒めできなくとも何処かに面白いところがあって、観て良かったなと思いながら映画館を後にできた作品。2020年ベストテンとしても残しておこうと思う。
①パラサイト★★★★★
まさかアカデミー作品賞を受賞するとは思わなかったけど、受賞にふさわしい傑作であることに異存ない。貧富の差を視覚的に描き、ポン・ジュノ監督独特な笑いで包んだシニカル目線がとても分かりやすくて、寓話的な東洋人のお話なのに西洋の人にまで理解させることができたのが成功の理由だろう。次回作以降も家族にこだわった作品を観せて欲しい。
②朝が来る★★★★★
河瀨直美監督の到達点じゃないかな。カンヌのコンペが中止になってしまい、分かりやすい評価は下されなかったけど、できればこの作品で一等賞をとって欲しかった。監督の持ち味であるドキュメンタリー風の作風がリアルさを加え、2020年一番好きな邦画となった。ラストクレジットでの少年の呟きに涙は止まらない。蒔田彩珠を発見できたことも忘れないでおこう。
③Last Letter★★★★★
岩井俊二監督のナイーブな優しさが詰まった佳作だ。初期の傑作「Love Letter」を観ていなくとも充分感動的だけど、知っていれば女性の立ち直りの潔さと男性の過去を引き吊る女々しさの対比が鮮明で一層興味深く感じるだろう。随所に岩井俊二らしさは散りばめられているけど、広瀬すずと森七菜が夏のワンピース姿で散歩するシーンは見惚れてしまう美しさだった。
④罪の声★★★★★
あの分厚い小説をこんなにまでシンプルに映画化できたことに驚いている。当代、脚色させたら野木亜紀子の右に出る脚本家はいないんじゃないかな。単なる犯罪ドラマで終わりにしなかったことが、この映画を風格ある骨太映画にした要因だ。わたくし世代には忘れ難い劇場型犯罪であるグリコ森永事件を、今この世に蘇らせた原作と小説では描けなかった映像の機微に賛辞を贈りたい。
⑤のぼる小寺さん★★★★☆
一生懸命に壁を登る小寺さんに触発された四人の少年少女が、とりあえず自分の好きなものに一歩踏み出してゆく姿が神々しい。もう随分前に過ぎ去ってしまった景色だけど、還暦間近になっても彼らが進もうとしている熱さはしっかり伝わってきた。コロナ禍の影響で部活も大会も発表の場をも奪われた2020年の少年少女達にエール代わりに観てもらいたい青春賛歌だ。
⑥アルプススタンドのはしの方★★★★☆
高校演劇が原作と知って、小品ながら興味があり鑑賞した。昔から演劇の映画化作品には傑作が多いけど、こんな題材で感動できる作品に仕上げることもできるのだと感心したものだ。やはりコロナの影響で甲子園も中止になっちゃったけど、頑張っている人には自然と応援する人が付いてきて、ちゃんと絆が生まれることが描かれていて清々しい作品となった。
⑦初恋★★★★☆
三池崇史監督作品なのであまり過度な期待はしていなかった。意外にもバイオレンス一辺倒のドタバタ映画じゃなかったから大いに楽しめた。タイトルも最後の最後にそういう題名だったのね。と、ちょっと微笑ましく思ったものだ。何よりも演者たちが思い切り誇張した振り幅で楽しそうに演じているのが気持ち良い。ベッキーの狂気じみた頑張りは特筆したい。
⑧浅田家!★★★★☆
今回も優しい家族の映画だった。一つの家族だけのお話じゃなく、いくつかのエピソードが描かれていたため感動のポイントが散漫になってしまったのは残念なところ。後半部分、東日本震災現場でのボランティアはそれだけで一本の映画になると思うので、詰め込み過ぎてしまったようにも感じた。それにしても世の中には浅田家の様に変わった家族もいるものだ。
⑨星屑の町★★★★☆
能年玲奈(のん)が演技しているのを久しぶりに観た気がする。やっぱり彼女は映像の中で輝く女性だと再認識した次第。古い舞台作品が原作らしい。映画の背景も東北の片田舎だったし、玲奈ちゃんの方言もあまちゃんそのままだったから新作映画を観ているのに何となく懐かしい感じがした。拾い物の作品として思い入れのある映画となった。
⑩MOTHER★★★★☆
そんなにぶち抜けるほどの衝撃がある作り方じゃないけど、長澤まさみの毒親と健気に母親を慕う奥平大兼演じる息子のヒリヒリする繋がりに圧倒された。今の世の中、平気で我が子を虐待死させる鬼畜親が後を絶たないが、どうせ子育てするつもりもないのなら放置してくれた方がよっぽど子供のためじゃないかと思ってしまう。「朝が来る」とは対極にある世界だ。
以降次点
鬼滅の刃 無限列車編★★★★☆
私をくいとめて★★★★☆
TENET★★★★☆
1917★★★★☆
ヲタクに恋は難しい★★★★
糸★★★★
弱虫ペダル★★★★
思い、思われ、ふり、ふられ★★★★
ステップ★★★★
きみの瞳が問いかけている★★★★
コンフィデンシャルマンJPプリンセス編★★★★
ミッドウェイ★★★★
星の子★★★★
個人的なお気に入り
監督 河瀨直美「朝が来る」
脚本 野木亜紀子「罪の声」
女優 長澤まさみ「MOTHER」
蒔田彩珠「朝が来る」
男優 星野源「罪の声」
菅田将暉「浅田家!」
2020年 特筆すべきは、「鬼滅の刃 無限列車編」の驚異的な大ヒット。
そして、女優竹内結子の衝撃的な訃報。
奥様のベストテンも紹介しましょうね
相変わらず凄いです
わたくし観たのは「私をくいとめて」と「TENET」の二本だけです
どの作品も高評価なものばかり並んでいます。体力あれば観ていたような気もする作品もあります
然し乍ら、知り合って40年長い間夫婦ではありますけど、此れほどまでに好みとは違うものなんですよ。と言う見本のようなベストテンでした