映画と渓流釣り

物忘れしないための処方箋

LA LA LAND と シェルブールの雨傘

2017-02-27 20:18:40 | 新作映画



アカデミーを取るだろうからそうなったら映画館も混むだろうと、26日の内に鑑賞したのだが、賞は大逆転で逃してしまったらしい。前年の白人至上授賞の反動とか反トランプの影響とか言われているけれど、騒ぐほどずば抜けた作品だとは思わなかった。

とは言え、オープニングのシーンは圧巻で、ミュージカルはアメリカ映画の十八番なんだと実感する。主人公の二人が高台の公園(?)でタップ踏むシーンも、往年のミュージカルを観ているようでワクワクさせられる。ずっとこの調子で最後のハッピーエンドまで突っ走るんだろうと思っていたら、物語は段々重くなるばかりだし、軽快なダンスシーンは鳴りをひそめてしまった。

事前になにかで読んだ感想に、アメリカ版シェルブールの雨傘と書かれていた。映画館に向かう道中、奥様にその事を教えると、「でもアメリカ映画だからラストはアメリカ人でも分かるハッピーエンドでチャンチャンだよね」と笑っていたし、そうなる事を望んでもいた。
アメリカ映画があんな余韻あるラストを用意するとは思わなかった。



エマ・ストーン良かった。大きな眼がいかにも女優目指して頑張ってます感を醸し出している。でも我儘でいけ好かない女になっていないのは、演技力もあるだろうけど、往年のメグ・ライアンに通ずるファニーフェイスだからじゃないかな。ハリウッドで一流になる俳優は下地がしっかりしている。歌もダンスも演奏もみんなプロの仕事だ。アカデミー主演女優賞おめでとう。

蛇足だけれど、エマの愛車がトヨタのプリウスで、パーティー終了後預けたキーを受け取るシーン、プリウスのキーだらけだったのには笑えた。やっぱり、トヨタは沢山売れているんだとこれまた実感。





湯を沸かすほどの熱い愛 感涙

2017-02-18 18:40:39 | 旧作映画、TVドラマ

 

去年タイミングが合わず見逃した作品を観に行った。
評判通り、あからさまなお涙頂戴映画では無いのに涙は止めどない。
昨今、親子の間で鬼畜まがいの事件を耳にするけど、この映画を観るとこんな親子の情愛、こんな家族のあり方もありなんだと思わせてくれる。詳しく語ってしまうと感動のポイントを失わせてしまうから省くけど、生き物はその環境の中で大切なものに出会い育て育てられていくもんなんだと改めて思い知る。

宮沢りえは等身大のお母ちゃんを全力で演じた。わたくしは「紙の月」の方が演者として優秀かなとは思うけど、気持ち寄り添えるのは圧倒的に二人の娘の母親で風呂屋の女将さんだ。個人的には死なせなくとも良かったんじゃないかなと思っている。限られた時間だから娘へ伝えるべき事を伝えたんだろうし、家族を取り戻そうとしたんだろうけど、シュチュエーションは安直に死を前提にして欲しくなかった。日本映画の悪い癖だ。生き別れた母親に会いに行く下りも蛇足感を拭えない。母親が会おうとしない理由も定かに描かれなかったし、中途半端でリズムを狂わす挿話だった。
ラストシーンをそのまま、湯を沸かすほどの熱い愛と捉えて良いのか(燃える窯の火にタイトルが出たので)。湯に浸かる新しい家族の姿に強い意志を感じる。エネルギーを与えるのがお母ちゃんの火だとすると、その愛は限りなく熱い。

杉咲花が良かった。
前から上手だと思っていたが、独特の声としゃべり方があまり好きではなく敬遠してた。この作品では宮沢りえに負けない全力演技で観るものの心を震わせる。イジメ(高校生でもあんな幼稚な事するのだろうか)に耐えられず負けてしまいそうになるが、お母ちゃんの強烈な叱咤激励もあり克服する強さも持っている。ここ一番での下着姿がこう使われたのかと、脚本の巧妙さに感心もした。自らの出自を受け入れるシーンには涙が止まらなかった。お母ちゃん亡き後も、お母ちゃんの遺伝子を一番強く受け継いで強く生きて行くだろうと、晴れ晴れしい気持ちにさせてくれる好演だった。

昔で言うところの二番館に当たるのだろうか。名古屋市星ヶ丘にある三越屋上の映画館。68席しかない小屋だけど、ほぼ満員だった。今時珍しい映写機、椅子も狭く小さい、なんだか懐かしい。もう暫くでこの手の映画館日本から消えて無くなるんだろう。仕方ないけど、寂しい。(でも、そんな映画館に無理して通うかって聞かれると・・・)
もう一つ感じたのは、三越の映画館に来る客層はシネコンで見かけるそれとは全然違うこと。物分かりの悪そうなオバチャンが多い。ロビーの自販機前で時間待ちしていたのだけど、お茶一つ買うのに一々面倒臭いリアクションしている。モギリの係員は慣れたものでサバサバ捌いていたのが面白かった。こんな所でも映画は観られているんだ。





サバイバルファミリー 矢口監督またもや

2017-02-15 03:23:22 | 新作映画

今年最初の鑑賞なので、クスクス笑って最後はほんのり温かい感激を味わいたいなと期待しておりました。
かつての矢口監督作品はそんな喜びを味あわせてくれましたよね。「ウォーターボーイズ」「スウィングガールズ」が頂点だったんですかね。「ハッピーフライト」は群像劇の面白さもお仕事映画の蘊蓄も程よくそれなりに楽しめましたが、「ロボジー」は完全に失敗作でした。「WOOD JOB」はお仕事映画としてはまあまあでしたけど、三浦しをん原作の良さをまるで活かせませんでした。

 深津絵里の飄々としたお母さんは良い感じでした

今回は、家族映画➕ロードムービー➕サバイバルあるある(防災蘊蓄)がテーマだったんでしょう。3・11の影響もそれなりに感じます。いつもの事ですが、矢口監督の着眼点は面白そうなんです。あっても不思議じゃないし、知恵と工夫となりゆきで何とかなるんじゃないかと思えるのも現実味ありますし。

それにしても、脚本が酷い。
今までも発想だけで乗り切っていたところありましたから、今回のような繊細さを描くべき作品では致命的でした。
電気はじめ動力がストップした理由なんかどうでもいいけど、対応する人々の可笑しみを期待していたのになんか暗い画面の中でゴソゴソするばかりだし、ピンチを知恵と工夫で明るく乗り切る家族を観たかったわたくしとしてはとても辛い時間でした。

矢口監督もうダメかしら。