映画と渓流釣り

物忘れしないための処方箋

2017年1月期テレビドラマのこと

2017-01-26 22:30:26 | 旧作映画、TVドラマ
 冬ドラマも2回目3回目の放送が終わりつつあります。
名古屋での単身赴任が時間的な余裕を与えてくれたので、横浜に住んでるころには殆んど観られなかったテレビドラマをじっくり観ています。
そこで、ひとあたりしたこの時期に今期の冬ドラマについて。

当然全部に目を通してません。通せません。
30分観て付いていけなくお風呂に浸かりに行っちゃったものもあります。
結局最後まで付き合おうと思ったのは三本。

「カルテット」 脚本:坂元裕二  主演:松たか子、満島ひかり、松田龍平、高橋一生
チーフディレクターが土井裕泰だったことが一番のポイントでした。
役者は芸達者な人ばかり(テレビドラマ役者というより、映画俳優ばかりですね)。
脚本の坂元裕二は「東京ラブストーリー」以上の代表作(傑作)を知りませんけど、最近観た「問題のあるレストラン」は面白かったと思います。
物語はちょっとまだよく分かりませんね。ラブストーリーとは思えないし、ミステリーって言えるほどドキドキ感もないし、青春群像にしては歳をとりすぎてますしね。台詞も凝っているけど上滑りしている感は否めません。
初回より二話目の方が面白かったので、このまま行ってくれれば最後まで観られると思います。
松たか子の囁く様なしゃべり方と、エンディングで歌唱する椎名林檎の曲が印象的です。

「東京タラレバ娘」 脚本:松田裕子  主演:吉高由里子、榮倉奈々、大島優子
脚本の松田裕子は「ごくせん」シリーズと「花咲舞が黙ってない」シリーズを観たことがあります。
読んでませんけど、東村アキ子の原作は面白いんだろうと思います。
初回の30オンナ生態実況はとても興味深く観ました。若さを糧に前だけを向いていた主人公達が、30歳になって気付く現実への焦りと開き直りがリアルだったし、表現方法もポップで楽しめました。
二話目が中途半端な恋愛ドラマ臭を漂わせたのが気懸りです。最後の最後は良いんですよ。タラレバ娘達には身の丈の幸せを味わって欲しいと思いますから、仕事でも恋愛でもハッピーになってもらいたいんです。でもね、恋愛が人生の主軸みたいなドラマにして欲しくないな。30オンナが足掻きながら魅力的に成長してゆく過程を期待しています。

「A LIFE~愛しき人」 脚本:橋部敦子  主演:木村拓哉、竹内結子
橋部脚本は結構医療系多いんです。「救命病棟24時」「ナースのお仕事」その他にもいくつかあるようです。代表作は「僕の生きる道」シリーズでしょうか。NHK朝ドラ「ファイト」もわたくしの郷里が舞台だったので観ましたが、あんまり面白くなかったかな。
二話観て思ったのは、(どっかで観た感じ)っうデジャブ感ですね。良くも悪くも昔っぽいドラマです。「ドクターX」のようなお遊びはありませんし、ヒリヒリする緊迫感もありません。ありがちな権力抗争もポストへの嫉妬も薄味です。竹内結子はじめ浅野忠信、松山ケンイチといった映画主役級の豪華布陣は当たり障り無くキムタクの引き立て約に徹しています。こんなんじゃレベルの高い傑作は生まれませんね。あの「ヒーロー」が面白かったのは、脇を固める癖有る役者がグイグイ前に出る目立ちかたをしていたからです。それでこそ主役が光るんだという事を制作者は見落としています。

なんだかんだでつくづく感じた事は、「逃げ恥」が歴史的な傑作だったと言う事です。
あんな10年20年にいっぺんあるかどうかのドラマと同じようなものが、そう易々と量産されるはずありませんね。毎週同じ曜日の同じ時間にテレビの前に坐りたくなる喜びをまた味わいたいですね。


2月になった今、追記。
福田雄一脚本演出の「スーパーサラリーマン佐江内氏」が面白くなってきました。
初回観て無いけど、二話目三話目と空回りしていたのですが、演出も出演者も吹っ切れたのか、四話から違うドラマの様に生き生きしています。キョンキョン(呼び方に年代が出ちゃいます)の寝演技が秀逸です。



 


これも時代劇の傑作 クレヨンしんちゃん

2017-01-16 22:22:19 | 旧作映画、TVドラマ

時代劇は、「昔むかしある所に・・・」と言ったところからもうすでに時代劇だけど、映画に限らず見世物の王道だなぁと思う。忠臣蔵の様な優良コンテンツは何度もリメイクされてるし。
とは言え昨今の若者は、オーソドックスな時代劇を観ない。創り手も頭を捻って若い世代を惹きつけようとして編み出されたのが、バックトゥーザフューチャー時代劇だ。
先週公開されたばかりの「本能寺ホテル」、TVドラマから映画化された「信長協奏曲」、良く出来たドラマだった「仁」も現代人が過去へタイムスリップして云々。その手の系列で一番楽しく感動的だった時代劇が今日紹介する映画。

「クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶアッパレ戦国大合戦」

 男と男の友情

 哀しい別れでも姫は凛々しく

侮ってはいけない。この時期の原恵一監督作品は一級品だ。
クレヨンしんちゃんだから、当然お下劣なギャク満載で大いに笑えるけれど、戦国の世に愛し合った姫と家臣の報われぬ愛の物語として秀逸だ。子供向け漫画映画だと思って舐めてかかると、ラストでは大号泣になりかねない。人前で涙するのを恥ずかしいと思う御仁は注意されたい。特に、幼少の子の付き合い程度の気持ちで観てしまうと、自分がドップリ感涙状態なんてことに。
後日、新垣結衣主演で実写化されたけれど、全く別物になってしまったのは残念。






キネマ旬報そう来たか

2017-01-12 20:58:32 | 映画ベストテン

2016年キネマ旬報ベストテンが発表されました。
このところ信頼性低下しているよう感じますが、それでも一番信用できる映画雑誌なので尊敬はしてます。
だけどだけど、の選出もあって、一言いいたい。


この世界の片隅に
この一等賞はキネ旬らしいし、納得でもあります。

シン・ゴジラ
まさかゴジラに、それも庵野ゴジラを評価するとは思いもしませんでした。驚きです。

淵に立つ
三等賞は出来すぎじゃないでしょうか。ラストの弱さをどう評価したんだろう?

ディストラクション・ベイビーズ
観てません。観ようとも思いませんでした。今後も多分観ないと思います。

永い言い訳
この辺りの順番がしっくりしますね。常連ですし。

リップヴァンウィンクルの花嫁
岩井俊二だったからちょっぴり観ようと思ったけど、尺の長さでめげたような気が・・・。

湯を沸かすほどの熱い愛
何度も観ようとしたんですけど、タイミングが合いませんでした。近いうち観ます。

クリーピー 偽りの隣人
なんでランクインしたんだろう?黒沢作品の中でも中途半端な出来だと思います。

オーバー・フェンス
山下敦弘ならぼくの叔父さんを観ようと思いましたが、どっちも観ませんでした。

怒り
悪人より好きなんですけどねぇ~。もっと上でも良いと思うんですけど。


で、なんか変だよね。
あれが入っていないんですよ。
やっぱりキネ旬選者ってどこかひねくれ者ですよね。
昔みたいにただのブームで1,700万人を超える人々が映画館に押しかけるわけ無いじゃないですか。心に響いたから口伝えに近しい人へ勧めたんだし、SNSへ想いを吐露したんですよ。その熱い感動に水差すような評価するのがプロの評論家なんですかね。もう二度と新海誠キネ旬にはランクインできないだろうな。
でも、日本だけじゃなく世界中の多くの人達が正しい判断をしてくれますよ。
「君の名は。」2016年はそのタイトルを永遠に忘れる事はありません。
キネ旬ざまあみろ。プイッ。






2016 ありったけの Best10

2017-01-06 18:14:05 | 映画ベストテン

毎年年頭になると鑑賞作品の足らなさを呪文の様に書きつらえておりますが、2016年のベスト10はそこそこ威張れるかな。それもこれも稀にみる邦画の質が高かったからです。何はともあれ順番です。(洋邦取り混ぜて、前編後編で一本とカウントしました)

①怒り
圧倒的な圧力を感じました。人が他人を信じることの難しさと尊さを観せてもらいました。原作も読んでいますが、わたくしは映像による表現の方が優れていると感じました。宮崎あおい演じる少し足りない女性や米兵の餌食となった沖縄に住む少女(広瀬すず)の慟哭は、映画でしか伝える術は無いと思います。
苦しみながらも人を信じる喜びが描かれていた事は、同じスタッフで作った「悪人」に比べ心寄り添える作品でした。キネマ旬報10位

②君の名は。
2016年を語る時、必ずこの作品を思い出す事でしょう。記憶にも記録にも残る傑作になった事を大変嬉しく思っています。ずっと新海誠の才能を愛でてきたのですもの、やっと世界中の人々が気付いてくれたんだと感謝したい位です。この作品が教えてくれた事、それは諦めない心の強さ、「好きだ」と言うシンプルな気持ちを保ち続けられれば、運命の人とは必ず惹かれあうのです。

③この世界の片隅に
優しい気持ちになれる映画でした。あのヒロシマで起こった無慈悲な惨劇に向かって物語は進んでいきますが、日々の生活は決して辛く苦しい描写ばかりではありません。少女のまま嫁入りした主人公の、創意工夫に満ちた愛すべき営みのドキュメントです。防空壕で接吻する若い夫婦のトキメキは、今この世の若者と何が違うのでしょう。主人公が喪った右手で描かれる筈だった未来こそ、わたくし達が享受している今なのです。キネマ旬報1位(よかった)

④シンゴジラ
まさか庵野ファミリーが創ったゴジラがこんなに面白くなるとは思いませんでした。エヴァは画期的で優れたアニメ作品ですが、庵野監督のクリエイター資質にそれ程賛同するものではありません。自分の好きな事をやり切ってもエンターテイメントとして成り立てば良いのですが、彼の作品はマスターベーションの域を出ない事が多いと思うからです。しかし、このゴジラは幸せな事にある意味オタクイズムがうまく作用した稀有な例となりました。ゴジラと言うより政治ドラマとして楽しめます。キネマ旬報2位(キネ旬選者が選ぶとは!?)

⑤聲の形
「友達からお願いします」そんな風に言いたくなりました。イジメとか障害とかの重い題材が内包されていますが、それもこれも友達から始めましょうよ。わたくしの歳になるとまわり道しなくとも近づける術を知っていたりしますけど、あの年頃はそうじゃありませんものね。だから不器用でも良い、伝わり辛い小さな声でも良いから、「友達からお願いします」と言えると良いね。そしたら少しずつわだかまりは無くなって、素直に好きって言えるんじゃないかな。

⑥オデッセイ
本当に久しぶりです。リドリー・スコット、ちゃんと監督していたんですね。邦題が酷すぎて真意が伝わりませんが、ひとりぼっちで火星に留め置かれたらどんなにか寂しいだろうと感情移入しました。単身赴任が長引いているからでしょうか?そんな環境でも植物を育てるのって、本能的に癒しになるんだなと思った次第です。派手な宇宙活劇も楽しいものですが、こんな地味でも実のある作品も良いもんです。

⑦ハドソン川の奇跡
映画の作り方を学ぶにはもってこいの作品でした。だからってこんな映画を誰もが作れる訳じゃ有りませんけどね。イーストウッド作品は題材によって好き嫌い分かれますが、これは好きな作品です。世界中の人が知っている美談をなんで今更映画にするんだろうと思っていましたが、観てみれば成る程です。美談の陰にはちゃんと人間ドラマと強い使命感があったんですね。納得です。キネマ旬報洋画1位(またかよって感じ)

⑧ちはやふる
広瀬すずが見たくて観た映画でした。特に前編(上の句)は、彼女の魅力が存分に発揮されたアイドル映画の体を成していましたが、見所はそれだけじゃ無く、競技かるたのスピード感ある面白さを観せてくれました。後編(下の句)にリズムの乱れが出てきて、快作とはなりませんでしたが充分楽しめる映画です。残念なのは無理矢理二部構成にしている事でしょうか。長い漫画原作をそのまま映画にしない英断を求めます。

⑨永い言い訳
西川監督が家族を描き出した事を嬉しく思います。師匠の是枝作品とは違った現代日本の家族を、これからも観せて欲しいな。日本映画の得意分野である家族ものは、小津や木下、山田といった世界的名監督によって確立されてきました。今の第一人者は是枝監督ですが、女性監督がいないのです。だから期待しています。オリジナルストーリーで映画が創れる数少ないクリエイターである事も期待しましょう。キネマ旬報5位

⑩葛城事件
出来れば観たくない心荒ぶ映画です。物語には全く救いがありません。暗いとかの短絡的な言葉で表現できないお話でした。家族が壊れてゆく様を見続けていると、ひとつふたつはどこの家庭にも有りそうだからいたたまれないんだと思います。三浦友和演じる主人公の父親がやっている事に、わたくしもそれとなく心当たりがあったりして、絵空事ではありません。

次点
64-ロクヨン–
淵に立つ キネマ旬報3位(かなり高評価だけど)
アイアムアヒーロー

次点が三つもあるなんて近年稀です。それだけ充実した年だったんですね。毎度の事ですが、外国映画は楽しそうなものしか観ないし、邦画も観たいと思いながら縁がなく見逃した作品がいくつかあります。それでも2016年は映画鑑賞として素敵な年になりました。


個人的に感心した事も記しましょう。
監督
これはもう、「君の名は。」の新海誠監督です。
次回作のハードル高くなりましたが、引き続き応援していきます。
脚本
「怒り」の李相日で。
原作よりも心打つ脚本書くのは相当難しいですから。
女優
「怒り」で新境地を開いた宮崎あおいと、
「淵に立つ」の神がかった演技を見せてくれた筒井真理子です。
男優
「怒り」出演の渡辺謙、森山未來、妻夫木聡、綾野剛、松山ケンイチ、の面々に。
特別賞
声の演技として、「君の名は。」上白石萌音と、「この世界の片隅に」のん。


どうしても許せなかった作品も。
「インデペンデンスデイ リサージェンス」「ズートピア」
どちらもアメリカの愚行(中東介入戦争や人種差別)を棚に上げた綺麗事映画にムカつきました。


2017年も沢山の出会いがありますように。ゆったり映画を観られるゆとりある生活が続きますように。良い映画を観た後は、心許せるあなたと熱く語れる日々でありますように。