2018年は充実した年だったと思います。
映画館通いは不思議なもので、間が空くと足を運び辛くなりますが、面白い映画を観ると次々に新しい作品が気になってしまい、結果またあの暗がりの椅子に座ってしまいます。
年間目標本数を超えることができた2018年はわたくしにとって、映画当たり年だったということですね。
それでは力を振り絞って、楽しませてくれた作品を紹介しましょう。(偉そうに書いてますけど、二十数本しか観てませんので毎年のごとく洋邦取り混ぜてのBest10です)
⑩「若おかみは小学生」
ふざけてBest10に入れたわけじゃないですよ。
メインターゲットは題名の通り小学生(それも低学年)です。父母を交通事故で亡くした女の子が、あの世に行くことができない子供の幽霊や鬼の子に励まされながら温泉旅館の若女将として成長してゆく物語です。人の気持ちを思いやる心がどれだけ大切なのかを感じてもらえるように作られてもいます。その丁寧な作りは、大人の心もしっかり掴んだということなのです。
⑨「ボヘミアンラプソディ」
わたくしその世代ですが、クイーンがそれ程好きなわけじゃありません。
それでもやっぱり初期の頃からビッグバンドになるまでの70年代のクイーンには、洋楽かぶれしていたニキビ面の自分が投影されてしまいます。ラスト20分のライブエイドは本物の感動がありましたし、フレディを筆頭に4人のバンドメンバーと彼らを取り巻く時代感も上手く演出されていました。
⑧「今夜ロマンス劇場で」
多分、今観るとBest10に入るような作品じゃないのかもしれません。
それでも、好きという気持ちには嘘がつけずランクインです。日本版「ローマの休日」みたいな映画を誰かに作ってもらいたいと常々思っていたので、所々粗が目立ちはしますがファンタジーとして気持ちよく泣けたことに感謝してます。綾瀬はるかのツンデレお姫さまを堪能するにもうってつけの映画です。
⑦「アリー/スター誕生」
何度もリメイクされている鉄板のコンテンツです。
ショウビズ界を描いたアメリカ映画の傑作は多いけど、ほろ苦さをラストにもってくると日本人には受け入れやすいですね。強引にハッピーエンドを押し付けられるより説得力ありますもん。ガガ様なんで心配してましたが、一番良い出来のスター誕生になりました。
⑥「シェイプオブウォーター」
日本公開作品名をもう少し考えればいいのになと感じました。
怪物と人間の女性の間に芽生える愛する気持ちが悲しいほどに伝わってくるのだから、映画とは不思議な娯楽ですね。絵画や音楽では無理だし、小説でもかなり難しいだろうと思います。監督の異形(マイノリティ)へ対する優しい愛着があるからこそゲテモノ映画にならず、普遍の恋愛ドラマに成り得たのだろうと思います。
⑤「カメラを止めるな」
今年一番のトピックスはこの映画が大ヒットした事です。
SNS無くしてはこの現象はありえなかったけど、大金をかけなくとも面白いものを作れば人は喜んでくれるし、ちゃんとお金を払ってくれることが証明されましたね。日本映画だけの問題ではありませんが、有名作家の小説や人気の漫画原作を安易に脚色してそれらしい役者で装飾した映画に毒された我々も、自ら審美眼を磨かねばいけません。
④「寝ても覚めても」
とらえどころの無い、不思議な恋愛を描いた映画でした。
瓜二つの顔を持った、全く違う男を愛してしまった女の心の彷徨いを描いているようにも思えますが、観客の心の重心はひと所に留まるわけではありません。結局主人公の女と同じように彷徨ってしまうのです。それでいて、染み入るように体の奥底が温まるような本当に不思議な恋愛映画なのです。
③「グレイテストショーマン」
ハリウッドがまたミュージカルに本腰を入れてるのでしょうか?そうだとしたら嬉しいな。
明るく楽しいミュージカルではありません。フェリーニの世界観にフォッシーが振り付けしたダークな味わいが魅力的な作品ですが、肌に合わない人は楽しめないかもしれません。踊りも歌もハリウッド謹製だから文句のつけようがありませんし、物語の背景はわたくし好みですし大いに楽しめたミュージカルでした。
②「ちはやふる 結び」
2016年公開の「上の句・下の句」の完結編が「結び」となりました。
競技カルタ部の面々も2年の年月を経て成長しています。最上級生になり後輩もできて、学園ドラマならではの輝きも加わりカルタ名人との絡みまであるのに、物語に蛇足感も中だるみもありません。カルタ一枚に伸びる手のスピードが映画全体のリズムを作っていて、とてもスリリングな完結編となりました。広瀬すずをはじめ、若手の役者が熱気あふれる演技でこの映画を盛り上げていたのも忘れ難く、素晴らしい青春映画になりました。
①「万引き家族」
パルムドールは今までブレる事無く小さな家族の普遍的な生活を追い続けた事へのご褒美です。
是枝監督にとって、この作品がベストではないと思います。しかし、都会のビルの谷間に埋もれてしまうように生きている小さな家族を、寓話的ではあってもリアルに描いたその視点に賞賛の拍手を送りたいと思います。是枝作品を愛し、ずっと観続けてきてよかったとしみじみ思っています。樹木希林を失ったことは不安材料でもありますが、リリーフランキーや安藤サクラのような心強い味方もいますので、休む事無く走り続けて欲しいと思います。応援してます。
次点
「来る」怖さのエンターテイメントを楽しみました。
「マンマミーア ヒアウィーゴー」何を置いてもABBAの音楽でしょ。
「ハンソロ」そんなに悪くありませんでしたよ。
監督
小泉徳宏「ちはやふる 結び」
三部作の仕上げをこれ以上無い青春映画に昇華させた手腕とこれからの期待を込めて。
脚本
上田慎一郎「カメラを止めるな」
誰でも一つ二つは思いつくアイデアを上手く絡め、エンターテイメントに仕上げた構成力に。
女優
安藤サクラ「万引き家族」
子を持てなかった女の寂しさ悔しさみたいなものが否応なく画面から迸るその演技力と説得力。半端ない。
趣里「生きてるだけで愛」
演技なのか素なのか分からないほどの力強い叫びにも似た姿は未知数であるけど可能性を感じる。
男優
東出昌大「寝ても覚めても」
演技が上手いわけではないけど、存在感がどんどん増しているように思う。地道に階段を登って欲しいと。
凄かった人
樹木希林「万引き家族」「日日是好日」
様々な映画で出会ってきたが、最期まで映画女優だった。謹んで哀悼を。
来る年も素敵な映画に出逢えますように。
皆さんにも、良い年が訪れますよう。