夏にコロナ感染したことで暫く映画館に通えなかったのと、秋以降観たいと思う作品が少なかったこともあり結局映画館で鑑賞した新作は20本止まりでした
少ない鑑賞作品でもそれなりに満足した一年だったので、良しといたしましょう
濱口監督の傑作を2本観ることができたし、想定外の良作に出会うこともできました
以下の並びはいつもの様に、今感じているわたくしの好きな映画の順番です
❶あのこは貴族★★★★★
東京のお金持ちのお家で生まれ育ったお嬢様と、田舎から苦学して東京の大学に入学し社会人になった女性を対比させながら、自由に生きることの意味とか幸せを清々しく語ってくれました。門脇麦の上手さは知っていましたが、水原希子の存在感に唸りました。わたくしも田舎から上京して都会に住む人たちの羨ましいところも可哀想なところも見てきましたので、この映画はとても感銘したのです。脚本・監督の岨手由貴子の名前は覚えておこうと思います
❷街の上で★★★★★
学生時代に通り過ぎた町、下北沢。その街の上で今を生きる若者たちを淡々と描いていて、懐かしさと共に何だか感傷的になってしまう、そっと誰かにお勧めしたくなるような作品です。あれから40年近くの歳月が過ぎ、当然街並みはがらりと変わっているのでしょうけど、そこで今を生きている彼らはかつてのわたくしたちがそうであったように、悩みを持ち人を好きになったりすれ違ったりしているんですね。愛おしい映画でした
❸偶然と想像★★★★★
2021年に公開された映画の中でも屈指の傑作だと思います。もしかしたら世界中でも一番じゃないかしら。三話からなる短編集だけど、どの話も偶然と想像が織りなす物語。何だか不思議な異世界に紛れ込んだような感覚になるから、基本二人の会話劇なんだけど隣で一緒に話を聞いているような臨場感もあります。もっと沢山の人に観ていただきたいのに、日本興行界の限界でしょうか?濱口監督の才気に嫉妬したくなる作品です
❹ドライブマイカー★★★★★
コロナに苦しんだ夏に公開され、長尺であったことも言い訳にして回避しようかと思っていたのですが、ちゃんと観ておいて良かったです。濱口監督の恐ろしいほどの快進撃にちょっと戸惑っています。NY、LA、ボストンとアメリカの批評家たちからも絶賛されてますので、もしかするとアカデミーの旧外国語映画賞はいただけるかもしれませんね。急逝した妻の闇と向き合ってゆく中年男が蘇生してゆく様はキリスト教世界にも理解できるんですね。流石、村上春樹?
❺彼女が好きなものは★★★★★
NHKのドラマが先行してましたから、ドラマを楽しめた人はこの映画も気に入ってもらえると思います。わたくしはラストに用意された穏やかなシーンが大好きで、こんな風にマイノリティの方や自分を認められず苦しんでいる人達の理解者になりたいなと思わせてくれました。これからも日本の映画やドラマはLGBTQの題材と向き合うでしょう。指針になるような作品でした
❻すばらしき世界★★★★★
今までの生き方をリセットしてまっとうな人生を生きようとした男の姿を、時には滑稽に描きどこか悲哀を感じさせるお話は、題名をどのように解釈すればいいのか悩ましく感じます。人は本当にやり直すことができるんでしょうか。西川美和は今までの作風と一緒で命題に対して分かりやすい回答を出しません。その意地悪さも含めて彼女らしい作品でした
❼空白★★★★★
ちょっとだけ説教の臭いが強かった分素直に受け入れられないところもありましたが、生前分かり合うことの出来なかった娘を亡くした父親の気持ちは痛いほど感じ入ってしまいました。下手糞だけど父親の描いたイルカの雲は、この居たたまれない物語に少しだけ暖か味を与えてくれました。映画ならではの問題提起として存在をアピールしています
❽ノマドランド★★★★★
アメリカの荒涼とした大地を彷徨うノマドは文明の利器を自在に取り入れながら、しがらみに縛られるのを拒むように流れて行きます。この感覚は島国の日本人にはいつまでたっても理解できない感覚なんでしょうね。広大な土地に育った中国人監督だからこそ映像化できたんだとも思いました。不確かな明日を生きるのって結構しんどいんじゃないでしょうか
❾竜とそばかすの姫★★★★★
久し振りに細田守作品で楽しめました。奥寺佐渡子脚本から離れて失敗作が続きましたので、最早これまでの作家だったんだろうと諦めかけていたのですが、みごとに復活しました。仮想世界で歌うことで自信を取り戻した主人公の女の子が現実世界でも成長してゆく姿には無条件で拍手を送りたくなります。それでも脚本は他人に任せた方が良いと思いますが
❿ヤクザと家族★★★★★
ヤクザの世界には未だ昭和感覚の義理とか人情が生きているんでしょうか。わたくしもドップリ昭和時代に生きて参りましたので郷愁みたいなものはありますが、反面煩わしさも感じてしまうのです。娑婆に帰ってきて浦島太郎状態になっている昭和的ヤクザが苦悶する時代間の壁は、取り残されてゆくわたくしども老境に差し掛かるオヤジにも通じる疎外感です
次点 騙し絵の牙★★★★★
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監督 濱口竜介(ドライブマイカー)
脚本 濱口竜介(偶然と想像)
主演男優 若葉竜也(街の上で)
主演女優 フランシス・マクドーマンド(ノマドランド)
助演男優 松坂桃李(空白)
助演女優 水原希子(あのこは貴族)
応援 山田杏奈(彼女が好きなものは)古川琴音(街の上で、偶然と想像)中村佳穂(竜とそばかすの姫)
そして恒例の奥様ベストテン
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/03/74/ec385afcbfd7ceb15e0c1c76777b949d.jpg?1641002594)
何と今年は一本だけ被りましたよ
「街の上で」
すごい映画です。奇跡は起こるのですよ
来年も沢山お気に入りの映画を観られる一年でありますように