昭和のミリタリー小僧の間で、もっとも有名な将軍と言えば、砂漠のキツネことロンメル将軍だと思います。第二次世界大戦中、北アフリカ戦線で少数戦力のドイツアフリカ軍団を率い、イギリス軍を蹴散らした将軍です。そして、ヒトラーの暗殺を計画した一人として自殺を強要され最期を迎えました。
しかし、彼の生涯は、誇張された英雄譚や、逆に貶めるような書物も多く、現実の姿をつかみにくいことも確かでした。日本でのロンメル研究も古いものの流用や誇張が多く、遅れており、自衛隊のドイツ語の堪能な古参が引退するとともに、その傾向が強くなっていきました。
本書では、できるだけ真実に沿ってロンメルの生涯をつかもうと、嘘は嘘、真実は真実、不明なものは不明とハッキリと明記し、その実像にせまります。
ロンメルは、陸軍のエリートコースを歩めず、アウトサイダーとして歩を進めることになります。第一次世界大戦中から、才能を発揮し大きな戦果を上げ、その後、ヒトラーのお気に入りとなり出世コースに乗りました。
フランスでは、88mm対空砲の水平射撃でフランス重戦車を撃破し、味方のピンチを救います。そして、北アフリカ戦線で壊滅の危機に瀕したイタリア軍を救うことになるのです。
最初は防衛を目的に送り込まれたロンメルでしたが、直ちに攻撃に移り奇襲となったためイギリス軍を大きく後退させることに成功しました。
その後、一進一退がつづきますが、ついにトブルクの要塞を陥落させ、砂漠のキツネの異名でイギリス軍から恐れられることになったのでした。
本書による総合的な評価は、戦術レベルでは天賦の才があるが、参謀としての教育を受けていないため作戦レベルでは兵站軽視(あるいは無視)の動きが多くあり、最前線で指揮を取るため、しばしば行方不明になるなど問題がありとなります。
一見、猪突猛進型に見えますが、迂回攻撃など臨機応変な動きを見せ、退却戦も見事にこなしています。アフリカ軍団の敗戦は、イタリア海軍の軍事物資の輸送が滞ったためとロンメルは言っていますが、実際は8割以上が陸揚げされていました。ただ、その物資が全線まで届かなかっただけで、トラック不足だったということで兵站軽視の姿勢が明らかとなります。
ロンメルの魅力は、騎士道精神で戦い、非人道的な命令は例えヒトラーからのものであっても従わなかったフェアな将軍だったということだろうと結ばれていました。
北アフリカ戦線を題材にしたプラモデルも作りました。