第100回の芥川賞受賞作家さんです。
私小説っぽい感じですが、読者へのサービス精神がちりばめられているので、退屈することなく読み切れました。
山間の町に住むパニック障害に苦しむ中年の医師が、海辺にある学生時代の友人の家に療養に行った5日間を描いています。
精神を病んだことがないので、そういう人たちの気持ちが解らないことも多く、戸惑うこともあるのですが、この本を読むと少しわかる気がします。
パニック障害から逃れるために、自分を客観視することを試みると有効なようで、主人公も、不自然なまでに、自分の行動を客観視しようとしています。
それが、自分を卑下しているように感じますが、そこまでしないと不安に押しつぶされるような苦しみであることが理解できました。
人間はみんな大したことがない利己的な個人でしかないので、徹底的に客観視すると、大したことがない利己的な個人であることが浮かび上がってきます。
それでも、思いやりあったりしながら生きているから、暖かいのだろうなと……
読者として感じてしまうのです。