荒俣宏の翻訳による古典的ファンタジー幻想小説です。
図書室の屋根裏の鏡から、月光の力で異世界への扉が開かれます。それは欠けた本の内容なのか不気味で不思議な話が続いていきます。
死んでいるように眠っているように死んでいるみたいな人たちが眠る寒くひんやりする部屋からスタートすることになるのですが、そこで眠るように言われた主人公は、当然のように拒否すると元の世界に戻されるのです。
しかし、その不気味な世界を探検したくなる主人公は、再度、月光の力を鏡に受け異世界に挑みます。
この異世界も、現実の世界とは全然違っていて、理解しがたく、死は生きるためにあり、生きている者が、実はずっと前に死んでいたり、実は死んでいなかったりと、訳が分からない世界なのです。この辺の混沌さを楽しめるかどうかが、この小説を読み切れるかどうかに掛かっていると思います。
題名のリリスは、アダムの一番目の妻で、人間ではなく天使なのだそうです。この辺はキリスト教のあの例えで……などと理屈を考えながら自分を納得させようとするとおいていかれることになります。
幻想小説の極致でありながら、古典的なファンタジー小説でもある本作品を味わうことができるかどうか、試してみるのも面白いかもしれません。