
「蜘蛛の糸」という芥川龍之介によって書かれた短編小説は子どものお話でも紹介される。それは人の途をさとす話しとして。
ある日の朝、極楽を歩いていた釈迦が、ふと蓮池の水面からはるか下の地獄を覗くと、カンダタという男を見つけた。カンダタは生前に様々な悪事を働いた泥棒であった。1度だけ小さな蜘蛛を踏み殺そうとしたが思いとどまり、その命を助けた。それを思い出した釈迦は地獄の底のカンダタを極楽へ案内しようと、1本の蜘蛛の糸をカンダタに下ろす。
この糸を上れば地獄から脱出できる、そう考えたカンダンは上り始める。途中で自分の後から上ってくる罪人を見て「この糸は俺のものだ。下りろ」と喚いた瞬間、蜘蛛の糸はカンダンの所からきれ、再び地獄へ逆落ちした。この様子を見られていたお釈迦様は悲しそうな顔をして立ち去られた、というお話。
早朝のウオーキングコースには幾つも蜘蛛の巣が道を遮っている。暗くてそれは見えない。人間様がかかっては巣もたまったものではない。かかった人間も顔や腕などにまとわりついたそれを除くのにひと苦労する。風の吹かない日は特に多い。
深さも幅も50センチほどの側溝いっぱいに陣取っている蜘蛛の巣を見つけた。破れたところもあり空き家になったのか主は留守のようだ。よく聞く過疎地の空き家のような寂しさを感じる。
過疎地にも極楽から下りて来た力強い糸のような救済策は無いものかと、下を流れていく枯れ葉を見ていた。
(写真:家主のいない蜘蛛の巣)
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