
子どものころにはビワの木には自家製の新聞紙袋が掛けられていた。最近は規格品だろうか、黄色の遠目には実が熟れたのかと早とちりしそうな袋が掛けてある。食べるだけで何も知らなかったが「ビワの木は粘り強いのでいい品です」と息子が剣道をしているとき有段者の知人から木刀もらった。使いこまれたのだろう、濃い茶褐色のそれはどっしりした感触だった。息子もそれを中3まで振っていた。杖や印用の材としても優れているらしい。
ビワのそんな粘り強い性質だからか、毎年、収穫されずにせっかく生った実を落としてもまた蘇ってくる。同じ状態の木は散歩道でも珍しくない。「桃栗3年柿8年」といわれるがビワは9年とも13年ともいわれるほど、実のなるのに時間がかかるという。そんなビワに花がつきはじめた。花は白くて地味なうえに厚くて硬そうな葉に囲まれ気づかれにくい。
実は鶏卵ほどの大きさ、色は淡いオレンジ色になる。表面にある薄いうぶ毛が淡い色に見せるのかもしれない。果実を割ると茶色で光沢のある種が複数入っている。実はそれなりに厚みがあるが、種に災いされて実の割に物足りなさを感じさせる。しかし、一袋にブドウとまではいかないが、何個も実があり満足感をくれる。子どものころ「おばさん貰うで」そう断って食べていたころが懐かしい。
柿の木は「さくいので登るな」と教えられたがビワの木についてそれはなかったが、登ったことはない。木の性質、実が食べられる時期と食べ方などいつか誰かに教わりながら遊んで覚えた。今はスーパーの商品棚で食べころ到来を知る。子どもらに外遊びを粘り強く勧め、自然の果実の美味さを知って欲しいものだ。