河川敷広場、ウイークデーの午後は人影はなし。外周の雑草が草紅葉となって広場を囲んでいる。その上空10メートルほどを1機のヘリコプターが飛んでいる。高度や飛行方向を変えながら旋回する。時にはホバーリングもする。飛行状態によってエンジン音がうなったり単調になったりと変わる。
「目下ラジコン特訓中なもので上手く飛ばせないんです」と小さな送信機を操作しながら笑う人。定年になって始めたが着地失敗などで修理は複数回、今日は修理が終わったのでテスト中、など立ち見している私に話し始める。全長1.5メートル位の赤い機体は送信機の指示に従い足もとに還ってきた。
問いもしないのに機体について解説が始まった。その話しぶりから、定年になって始めたラジコンヘリを操縦することが「嬉しくて嬉しくて」という気持ちが伝わる。初対面の人で何も知っていることはないが、夢中になれるもの見つけたことをこれほど話す人に始めて出合った。
充電バッテリーで1回の飛行時間は5分間という説明に驚いた。特訓中ならずとも楽しむには幾つものバッテリーが必要になる、そう思ったが聞くことはやめた。また見せてください、そう言って立ち去る。後ろから追い越すように草紅葉の上を旋回し見送ってくれた。話を聞いたことへのお礼だろうか。