2021年12月6日 中国新聞文芸「詩壇」掲載
柔らかい日もそうでない日も
多い日もそうでない日も
居心地がいいからと出渋る日も
朝の個室で健康確認
六十五歳になったとき
家庭医が潜血検査を薦める
年一回の検査で数年過ぎたころ
思ってもいなかった内視鏡検査に
結果は初期の大腸がんが見つかる
人生初めての手術
患部を切断除去した
手術は完璧でした
写真を見せながら医師の説明
それから五年は定期検診
おめでとうございます完治です
定検終了と医師の太鼓判
院外の澄んだ秋の空気を
胸いっぱい吸い込んだ
数匹の赤トンボが祝ってくれた
さらに五年が過ぎる
マーカー検査で経過観察は続く
異常な値は現れていない
あの時の腸管洗浄剤の飲みづらさ
今はなつかしい思い出
今朝も元気に感謝している
「評」最初に読んだとき一連目の意味がわからなかったが、わかったあ
とくすりと笑った。少しユーモラスに始まるが、真面目で深刻。「定検終了」
に読者も安堵する。赤トンボが目の前を横切ったのは祝福であり、心配だっ
た日々は「思い出せる幸せ」であるという受け止め方に、心を動かされた。
柔らかい日もそうでない日も
多い日もそうでない日も
居心地がいいからと出渋る日も
朝の個室で健康確認
六十五歳になったとき
家庭医が潜血検査を薦める
年一回の検査で数年過ぎたころ
思ってもいなかった内視鏡検査に
結果は初期の大腸がんが見つかる
人生初めての手術
患部を切断除去した
手術は完璧でした
写真を見せながら医師の説明
それから五年は定期検診
おめでとうございます完治です
定検終了と医師の太鼓判
院外の澄んだ秋の空気を
胸いっぱい吸い込んだ
数匹の赤トンボが祝ってくれた
さらに五年が過ぎる
マーカー検査で経過観察は続く
異常な値は現れていない
あの時の腸管洗浄剤の飲みづらさ
今はなつかしい思い出
今朝も元気に感謝している
「評」最初に読んだとき一連目の意味がわからなかったが、わかったあ
とくすりと笑った。少しユーモラスに始まるが、真面目で深刻。「定検終了」
に読者も安堵する。赤トンボが目の前を横切ったのは祝福であり、心配だっ
た日々は「思い出せる幸せ」であるという受け止め方に、心を動かされた。