今日のテーマは「カーストを越える愛」。BBCから発掘した少々古い記事を,例によっての適当な抄訳&再構成でお届け。元記事はBBC Africa Marrying across Somalia's caste lines By Mohammed Olad Hassan,12 December 2006
つまりUICがソマリア南部過半を維持していた時期のお話です。
Sahal Abdi-kafiは首都モガディシュ,バカラ・マーケットで電子機械の大きな店を経営している。35歳だ。彼の家族は,彼が長年付き合ってきたガールフレンドと結婚して以来,会話をもたない。その彼女,Zamzam Ahmedがソマリアの低カーストYahar出身であるからだ。
Sahalの家族の強い反対に関わらず,二人は結婚した―イスラム主義者らの出した教令edictに励まされて。彼らは15年もの無法状態ののち,ソマリア南部を押さえ,首都モガディシュを支配下に置いた。
SahalとZamzamは5年も愛を秘め―ロマンスが結婚に行き着くだなんて思いもしなかった。「僕たちはとても違っていた―ライフスタイルも,思想も,好みもね」とSahalは言う。彼は有名な商人一族の出だ。それに対して,Zamzamの父は既になく,母は麻薬性の植物売りだ。
「けれど僕たちは恋におちて―もし僕の両親がこのことを知ったなら僕らは天に召されようと―最悪の事態を予期し,最悪に備えていたんだ」
何世紀にも亙る深い亀裂。SahalとZamzamのようなカースト横断の結婚は,最近はよくあることになりつつある。
UICの指導者Sheikh Sharif Sheikh Ahmed氏は,世紀をこえる偏見を打破するため,ソマリ人は,如何なるカースト出身であれよきムスリムと結婚すべきと語った。
「イスラムはその伴侶を,その宗教,そのよき性質によって選ぶよう求めるのであって,その社会階層によるものではない」と彼は語った。
Sahalはイスラム主義者を支持する。そして言う,Ahmed師のスピーチは彼に結婚を決断させたと―両親の反対にもかかわらず。
Yahar, Midgan, Eyle, Boonといった下級カーストの者たちは差別にさらされ,金工,犬による狩猟,靴作りや調髪を生業とする。こうした人々との結婚は嫌われ,もしそうした女性と結婚しようものなら,家族から村八分の扱いを受ける。
結婚の話をしたところ,Sahalの父は即座に離婚し同カーストの女性と結婚するよう言った。そうするなら盛大な結婚式を挙げさせると。「けれど愛する人を捨てる事ができますか」,彼は言う:「彼女は美しく,礼儀よく,私に従順で敬虔で神を恐れ―彼女と結婚しない理由なんてない」。
Zamzamは,Sahalを愛し,社会的な相違など考えもしなかったという。けれど日々の営みをSahalと共有するなど,そんなことは彼女の最も荒唐無稽な夢の,さらに向こうを行ったものだともいう。
「愛には歳も,カーストも,思想信条も関係ない。Sahalが私と恋におちたのに,理由なんてないの」とZamzamは言う。「でも彼はご両親の意図に反して私と結婚して,彼の出身コミュニティの親戚や友達とのお付き合いを危うくしたのね」。
「でも結局彼はわたしのもの。私は彼のもの。人生ってときどき,ほんとにボリウッド映画みたいなものなのね」―彼女は笑いながら,言った。
そしてその後,彼らの住む街は戦場になった。
参考:
Somali clan(英語版Wikipedia)
newsSomaliland ソマリア治安部隊がイスラム女性のベールを剥がして燃やす-ソマリアの不可触民問題 (2007-05-10)
そのほか,googleで「ソマリア カースト」を検索。相当数のページが存在する。
つまりUICがソマリア南部過半を維持していた時期のお話です。
Sahal Abdi-kafiは首都モガディシュ,バカラ・マーケットで電子機械の大きな店を経営している。35歳だ。彼の家族は,彼が長年付き合ってきたガールフレンドと結婚して以来,会話をもたない。その彼女,Zamzam Ahmedがソマリアの低カーストYahar出身であるからだ。
Sahalの家族の強い反対に関わらず,二人は結婚した―イスラム主義者らの出した教令edictに励まされて。彼らは15年もの無法状態ののち,ソマリア南部を押さえ,首都モガディシュを支配下に置いた。
SahalとZamzamは5年も愛を秘め―ロマンスが結婚に行き着くだなんて思いもしなかった。「僕たちはとても違っていた―ライフスタイルも,思想も,好みもね」とSahalは言う。彼は有名な商人一族の出だ。それに対して,Zamzamの父は既になく,母は麻薬性の植物売りだ。
「けれど僕たちは恋におちて―もし僕の両親がこのことを知ったなら僕らは天に召されようと―最悪の事態を予期し,最悪に備えていたんだ」
何世紀にも亙る深い亀裂。SahalとZamzamのようなカースト横断の結婚は,最近はよくあることになりつつある。
UICの指導者Sheikh Sharif Sheikh Ahmed氏は,世紀をこえる偏見を打破するため,ソマリ人は,如何なるカースト出身であれよきムスリムと結婚すべきと語った。
「イスラムはその伴侶を,その宗教,そのよき性質によって選ぶよう求めるのであって,その社会階層によるものではない」と彼は語った。
Sahalはイスラム主義者を支持する。そして言う,Ahmed師のスピーチは彼に結婚を決断させたと―両親の反対にもかかわらず。
Yahar, Midgan, Eyle, Boonといった下級カーストの者たちは差別にさらされ,金工,犬による狩猟,靴作りや調髪を生業とする。こうした人々との結婚は嫌われ,もしそうした女性と結婚しようものなら,家族から村八分の扱いを受ける。
結婚の話をしたところ,Sahalの父は即座に離婚し同カーストの女性と結婚するよう言った。そうするなら盛大な結婚式を挙げさせると。「けれど愛する人を捨てる事ができますか」,彼は言う:「彼女は美しく,礼儀よく,私に従順で敬虔で神を恐れ―彼女と結婚しない理由なんてない」。
Zamzamは,Sahalを愛し,社会的な相違など考えもしなかったという。けれど日々の営みをSahalと共有するなど,そんなことは彼女の最も荒唐無稽な夢の,さらに向こうを行ったものだともいう。
「愛には歳も,カーストも,思想信条も関係ない。Sahalが私と恋におちたのに,理由なんてないの」とZamzamは言う。「でも彼はご両親の意図に反して私と結婚して,彼の出身コミュニティの親戚や友達とのお付き合いを危うくしたのね」。
「でも結局彼はわたしのもの。私は彼のもの。人生ってときどき,ほんとにボリウッド映画みたいなものなのね」―彼女は笑いながら,言った。
そしてその後,彼らの住む街は戦場になった。
参考:
Somali clan(英語版Wikipedia)
newsSomaliland ソマリア治安部隊がイスラム女性のベールを剥がして燃やす-ソマリアの不可触民問題 (2007-05-10)
そのほか,googleで「ソマリア カースト」を検索。相当数のページが存在する。
前に記事を書いたときに調べた限りでは、まだまだ差別は根深く、一緒に食事をとるのはおろか、結婚なんてとんでもない!という感じだったので、実際に結婚までいきついたカップルがいるというのは初耳でした。
そもそも男性の方は、子供の頃から被差別階級はアンタッチャブルだという教育を受けてきたでしょうに、それを乗り越えて愛が芽生えたというのがすごいです。イスラム法廷会議の人もいい演説しますね。
こうしたカップルが,苦労しながらも真面目に生きて,社会に認知されていくなら素晴らしいことです。そうした事実こそが,差別を実質的になくす王道でしょうから。ああ,でも,戦争が起きて,彼らの住処は平らにならされちゃった。
今はどうしてるでしょう。Sahalさんは,もし彼の商売が立ち行かなくなっていたら,氏族の援けのみこみは薄い。そもそも生きているだろうか,二人とも。
彼らを,いくさは飲み込んでしまったんじゃないかと―。