行政の各種審議会の会議の内容、たとえば指定管理者の選定委員会の議事録など、その審議過程の透明性が求められる時代に入りました。
行政側の都合のよい審議結果の公表でお墨付きを与えないためにも、行政機関の審議の記録を保存し、かつ、情報公開されなければなりません。
各種会議の議事録が作成された場合に、行政機関がその正当性を立証し、住民が真偽あるいは間違いの有無を確認するためにも、録音の記録はきわめて重要です。 その音声記録が公開される意義はきわめて高いものです。
会議録等作成のための録音記録を公開することには自治体でバラツキがあります。
録音テープに関しては、原告側が敗訴した判例が、地裁、高裁、最高裁でそれぞれ存在します。非公開体質の自治体はこれら判例に寄りかかって非公開とするようです。
昨年11月2日に開催された福井県の男女共同参画審議会の会議の録音の音声記録について、職員が録音しているのに、「情報公開条例の対象ではない」という非公開処分をしてきました。
こんなことは容認できません。
そこで、上野千鶴子さんら相談して、行政訴訟を起こすことにしました。
一昨日、2月17日(土)に福井地裁に訴状を提出しました。
その後、記者会見。会見の報道のことは、明日にでも載せます。
このブログでは、概要の説明をします。
詳細は、各リンク先をご覧ください。
【本稿および下記各情報の転載転送・歓迎】
事件番号「福井地方裁判所 平成19年(行ウ)第2号 福井県男女共同参画審議会音声記録非公開処分取消請求事件」
訴状の目次のみ 印刷用PDF版 105KB テキスト版 4KB
訴状の全文 印刷用PDF版 361KB テキスト版 45KB
証拠説明書 テキスト版には可能な限りのリンクをつけた
証拠説明書 PDF版 92KB テキスト版 4KB
原告代表上野千鶴子の意見書
印刷用PDF版 118KB テキスト版 6KB
提訴の報道記事は ⇒ ◆福井県男女共同参画審議会音声記録の情報非公開処分取消請求事件の提訴のこと
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●(1) 録音テープや音声記録の公開の必要性
議事録が行政や特定の人物、機関などに都合のいいように、恣意的に作成されていなかを検証する必要があるから。
今回の福井県の場合、要約版であり、実際に傍聴者の記録からは、一部に相違があるようにうかがわれる。
●(2) 「異議申し立てより訴訟」の理由
◎ 異議申し立てのメリットは早い・お金が要らない
デメリットは、いい結論が出にくい、出たとしても行政に無視される可能性もある
◎ 福井県の公文書公開審査会は、「早く答申しようとする意識がない」。
実際、データをみても1年から2年の期間を要して答申している実態がある。
◎ 福井県知事選は来る3月22日告示、4月8日投票。
マスコミが「知事選の争点」のひとつにしてくれる可能性もある。
●(3) 費用や時間
行政訴訟は収入印紙13.000円と切手代を納めれば提訴できる。
本人訴訟でやるなら、その他は不要。
先日1月18日には、三重県知事の非公開処分について津地裁で勝ちました。
三重県の訴訟
その弁論は3回でした。三重県は、控訴せずに確定。
今は、判決に従って、三重県が文書を開示する手続きの途中です。
今回も短期で済ませたいです。
●(4) 法律や条令の「公文書」の定義
福井県の条例 (トップにある3人の○○ガール???!)
本件福井県の条例の争点部分は第2条第2項
「この条例において『公文書』とは、実施機関の職員が職務上作成し、または取得した文書、図画および電磁的記録であって、当該実施機関が管理しているものをいう」
10年ほど前、岐阜県の裏金作りで問題になった実行委員会の関係書類について、県職員が机の上に持っているけど、情報公開条例の第2条第2項の公文書に該当しないとして非公開にした事件。 岐阜地裁は、非公開を適法としたが、名古屋高裁は違法とし、一昨年、最高裁で確定した判決。
岐阜県の実行委員会の文書の非公開(不存在)処分の訴訟
●(5) 行政機関の中での情報公開の対象とする文書の法令上の位置づけの歴史
◎ 初期=Aタイプ
「決裁・供覧等の手続的を了したもので、実施機関が管理しているもの」
◎ 中期=Bタイプ
「実施機関が管理しているも」
◎ 現在=Cタイプ
「職員が組織的に用いるものとして、当該実施機関が保有・管理しているもの」
情報公開法の施行をきっかけに、全国の条例改正が進められた。
・法にスライドして改正させた自治体が少なくない(Cタイプ)
・従来、「紙の文書」だけだったところ、に「図画、写真、フィルム及び電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られた記録をいう。)」が加えられた。
●(6) 「公文書」という情報公開の対象の変遷
◎ Aタイプの条例では、役にある文書のうち、決済の印が押してある文書とそれに添付された一連の文書だけが対象となる。
◎ Bタイプの条例では、基本的に役所にある文書すべてが対象になる。
◎ Cタイプの条例では、中期のパターンから「組織的に用いるもの」という限定がつけられ、つまり、一見、狭められた。もっとも、現実的には、「役所にあるもの全部」として運用しているらしい(少なくとも岐阜県では)。
Cタイプの場合の、「職員が組織的に用いるものとして、当該実施機関が保有しているもの」とは、当該実施機関がその組織において業務上の必要性に基づいて利用・保存している状態にあるものをいうと解釈されている。
各自治体の情報公開の解釈と運用を説明したところの「手引き」の当該部分の比較。
◎ 「組織において業務上の必要性に基づいて利用・保存している状態」(岐阜県)
◎ 「具体的には、グループリーダーの職(それに相当するものと所属長が認める職を含む。)以上の職にある者と他の職員が共に利用することとなった状態をいう」(三重県)
◎ 「課長補佐に相当する職以上の職にある者又は主任主査に相当する職にある者(班長に相当する職を命ぜられたものに限る。)と他の職員が共有し,保有しているものをいう」(宮城県)
もちろん、このような行政側の解釈が正しいとは限らない(この部分については、私は上記の「手引き」の解説の仕方には異論がある)。だから、非公開処分取消訴訟になって実施機関が敗訴する例がたくさんある。
とはいえ、手引きは、わかりやすい指針。これを利用して勝とうと進めることは割と容易なこと。
●(7) 情報公開の現状
会議録等作成のための録音記録を公開することには自治体でバラツキがある。
録音記録に関しては、原告側が敗訴した判例が、地裁、高裁、最高裁でそれぞれ存在するところ、公開意識の高い自治体は平気で公開するし、非公開ベースの自治体はこれら判例に寄りかかって非公開とするようだ。
全国の人が利用できる判例にするには、「組織的に用いる」というCタイプの条例でも勝てる理屈にしたい。(ちょうど、福井県知事も、異議申立に対する非公開理由の説明で、「組織共用文書」的なニュアンスの主張をしている)
そのためには、「組織共用文書」であることを崩す必要がある。
●(8) 判例
◎ 訴状で、原告が負けた判決を引用することは、専門の弁護士の皆さんは通常はやらない手法だろう。今回、上野さんの「手持ちは全部出して早期決着を」という意見を尊重して、かつ、私の、全国の自治体で使える「汎用型」の訴状もしくは訴訟にしたいということで、手持ちは全部、最初から使うことにした。本人訴訟ならではの訴状だと思う。
◎ 平成14年(行ウ)第17号「議事録テープ非公開決定処分取消請求事件 平成15年9月16日 岡山地裁判決 (確定)
H14年の岡山地裁の判例」(判例自治253号25頁から28頁)
Cタイプの条例についての判断であるが、判示は「職員が組織的に用いるものとして」の解釈を「決済、供覧等の手続きが終了し、組織としての供用文書として利用・保存されている状態になっているもの」という決定的な過ちをおかしている。原告が控訴しなかったから確定しただけというしかない。
判示の要点は以下である。
「議事録が、議会会議規則等による記載要件を備えていなかったり、記載内容の判読のために、補充的機能を果たすものあるいは説明資料として、議事経過を録音したテープを利用するしかないような場合には、議事録と一体化すべき行政文書として、当該録音テープを位置づける余地があるが、上記のような特段の事情のない限り、議事経過を録音したテープ等は、議事録作成に向けて、その、正確性等を担保するための補助的手段に過ぎないものというほかなく、それ自体では、『実施機関の職員が組織的に用いるものとして、実施機関が保有する行政文書』とはいえない。」
◎ 平成14(行コ)41情報公開・同請求控訴事件(原審・津地方裁判所平成13年(行ウ)第13号・同平成14年(行ウ)第7号) 名古屋高等裁判所 平成14年12月26日
判例集
これは、初期の条例にテープを加えた条例において以下の判断をした。
「Aタイプの条例に関しての訴訟で,公開の対象となるのは行政情報そのものではなく公「文書」である、決裁文書である会議録の起案の準備のためのいわばメモの代わりにすぎないという性格のものである」
原告は、上告せずに確定。
◎ 最高裁 平成16年11月18日判決(第一小法廷) 事件番号 平成14年(行ヒ)第108号
情報公開請求却下決定処分取消請求事件(香川県土庄町)
判例集
Aタイプの条例の場合で、議事録作成前に情報公開請求して非公開とされた場合、議事録が作成されるまでの間は、その処分が容認されることになる。
逆に、議事録を作成して決済の時点で公開の対象となることを示した、ともいえる。
地方自治法第123条所定の会議録作成のために議会の議事内容を収録した録音テープは、会議録が作成されて情報公開条例所定の決裁又は供覧の手続が終了する前の段階では、同条例に基づく公開請求の対象とすることができない。
「本件テープ等に基づいて作成される会議録については決裁等の手続が予定されているが、本件処分当時、同会議録はいまだ作成されていなかった。
本件テープは、被上告人の事務局の職員が会議録を作成するために議事内容を録音したものであって、会議録作成のための基礎となる資料としての性格を有しており、会議録については決裁等の手続が予定されていることからすると、会議録と同様に決裁等の対象となるものとみるべきであり、決裁等の手続を予定していない情報ではないというべきである。したがって、会議録が作成され決裁等の手続が終了した後は、本件テープは、実施機関たる被上告人において管理しているものである限り、公開の対象となり得る。」
●(9) まとめ
福井県の条例は、「『公文書』とは、実施機関の職員が職務上作成し、または取得した文書、図画および電磁的記録であって、当該実施機関が管理しているものをいう」とされている。つまり、Bタイプの条例である。
Bタイプの条例の規定であれば、テープから議事録として成文されて後にテープを破棄する予定であっても(だからこそ私たちは、破棄される前に速やかに情報公開請求した)、対象文書になる。なぜなら、情報非公開処分取消訴訟は、情報公開請求時点の「公文書」に関する処分が対象(最高裁判決)であるから、こちらの主張がとおる。
Cタイプの条例の場合、分かりやすい一つの着眼点は、職員の位置づけである。
福井県に関しては、昨年5月に情報公開でとってある本件担当課の職制から、音声記録を管理している職員は「主査」である。他に担当している職員名も、他の公文書から読み取れる。すると、録音の記録は、「組織共用文書」である。
以上
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