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tetujin's blog

映画の「ネタバレの場合があります。健康のため、読み過ぎにご注意ください。」

King And The Clown (王の男)

2007-03-11 22:11:48 | cinema

韓国映画って、どれもこれも似たり寄ったりの恋愛映画という印象があり、その手のたいていは主人公が死んでお涙頂戴といった内容の多くの邦画と合わせて食傷気味だったぼくは、この映画に完全に打ちのめされた。韓国映画も、なかなかやるじゃない。あとで調べたら、韓国のアカデミー賞と言われる大鐘賞で、最優秀作品賞を始め史上最多10部門受賞という栄光に輝いた作品らしい。この映画は、質より量といった薄っぺらいその辺の恋愛ドラマとまったく次元が異なり、物書き屋を目指しているぼくにとって深い憧れと嫉妬を感じるのものであった。人間の愛と死と欲望を見事に描いた秀作だ。映画で取り上げているのは、芸人の世界。この映画と前後して観た邦画「寝ずの番」の世界を彷彿させるものだ。むろん、現代の日本の上方芸人の粋な「しゃれ」の話と、韓国の500年前の古き時代の芸人ではその芸の重さが違うが、ともに生と死を軽いタッチで描いている。
ブログを始めて6ヶ月。この間に、3人の亡くなったアスリート達の記事を書いた。ぼくのブログに訪れたお客さんから、”いくらなんでも多いんじゃない”とのコメントを戴いている。記事として扱ったスポーツがそもそも危険なものであることもあり、どうしてもその話題を避けることができない事情がある。しかし、書くからには愛と死についてはもっと軽く書けるようになりたいものだ。それにはもっと、もっと、人生の経験値を上げる必要があるのかも知れない。

さて、この映画。日本語のタイトルだと、「王に仕える男」って意味になるが、原題を英語に訳したものは「King And The Clown」。従属関係ではなく、王と男は対等の関係だ。 
 この王である燕山君(ヨンサングン、1476年10月7日 - 1506年11月6日、 在位1494年12月29日 - 1506年9月2日)は李氏朝鮮第10代国王だ。第11代国王中宗の異母兄。第7代国王世祖の曾孫で、朝鮮王朝史上前例のない暴君(一部では暗君との見方もあるようだ)として知られる人物だ。
歴史では、燕山君は幼い頃に母を毒殺され、孤独で粗暴だったとされている。宮殿に国中から妓生を招き入れたり、狩りのためにその地区の住民を立ち退かせたり、気に入らない奴は即首をはねたりとやりたい放題だったらしい。一番のお気に入りは妓生上がりの愛妾ノクス。だが耐えかねた重臣達はクーデターを起こし、燕山君の異母弟を王として立てる。燕山君は流刑にされ、30歳で生涯を終えるのだ。 ここまでが、この映画の予備知識。
この映画は例えて言うなら、とある北の国で将軍様を徹底的にこけにして将軍様に気に入られて宮廷で暮らすそんな話だ。一般に、暴君という人間は往々にして心が狭い。したがって、現実的にはコケにされて喜ぶ暴君はまずいない。だから、現実の世界では、暴君をコケにでもしようものなら、すぐさま捕まって処刑されるがオチだ。映画がフィクションとして面白いのは、現実では在り得ない話を展開するからであろう。

生を受けた瞬間から、すべての生物は緩慢に死に向かう。それが宿命だ。果てしない性の衝撃的なエネルギーは、そのまま命の終焉に向かって帰着する。性と死が同じ次元にあり、性の歓喜は死の恐怖に裏打ちされたものだ。多細胞生物は、生殖細胞だけが「一倍体細胞(ハプロイド細胞)/n」で、ほかの細胞は、染色体を2セットもつ「二倍体細胞(ディプロイド細胞)/2n」である。一方、原生生物の中でも有性生殖をしないアメーバなどは、ずっと、ハプロイド細胞(n)で生きてゆく。ハプロイド(n)の単細胞生物には、分裂限界がなく、いくらでも分裂による増殖が可能なのだ。
生物の進化が、個体をディプロイド細胞(2n)からつくられるようせしめた結果、個体の「死」が不可避になった。「有性生殖」をする生物は、ディプロイド体制(2n)とハプロイド体制(n)の間を往復するようになった。つまり、エッチの時に合体する細胞はハプロイド。成長を続ける時はディプロイド体制(2n)。このしくみが、染色体の多様性を産み出し、種が生存競争に生き残るすべを与えた。「有性生殖」というエッチの行為には、生物の「死」が約束されていることになる。

死を賭して演技する2人。プロの芸人としての魂がほとばしる最後のシーンで、スリースタイルスキーのコザックばりの開脚ジャンプを見せる女形芸人コンギル。空中でのきれいな開脚姿勢で映像はストップがかかる。コンギルを演じたのは、新人イ・ジュンギ。かれはテコンドー全国大会に出場したほど運動能力が抜群な韓国青年だそうだ。その華麗な空中姿勢も納得がいく。

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