てっきり、DVDを観た時は村上春樹氏の原作を読んでいないと思った。ところが、原作の英語訳を手に入れて読んだら、日本語で読んだことがある短編だった。
それぐらい、原作の主題と映画(DVD)は、主張するところが違っていた。
もっとも、ぼくも
"Nah, I'm like a chicken: three steps, and my mind's a ablank."
読んだら内容をきれいさっぱり忘れているから、たぶん、日本語で再読したとしても、初めて読んだ後と同じ感覚を持つかもしれない。
小説の方は「東京奇譚集」とあるとおり、怪奇小説に村上ワールドがさく裂したものだ。サチは最愛の息子が自分の前に現れてくれなかったことで、理不尽さを感じて泣き明かす。そうやって、自分の気持ちを整理していくのだ。
彼女の旅は終わらない。ハナレイ・ベイで彼女を待ち続けているものを彼女はいつも想う。それこそ村上ワールド。ぼくらの想いの斜め上だ。