tetujin's blog

映画の「ネタバレの場合があります。健康のため、読み過ぎにご注意ください。」

函館 朝市

2009-02-26 01:01:22 | プチ放浪 都会編

 
 
 
 

【撮影地】北海道函館市/青森県青森市(2009.2月撮影)
Copyrights© 2005-2009 TETUJIN
all rights reserved

「カニ食ってけなさい!」
威勢のよいかけ声が響き渡る。函館駅西口のそばには、約400軒もの店がひしめき合う朝市があり、通りは人と車でごったがえす。朝市はまさに台所。魚、野菜、珍味、昆布なんでも揃う。また、大衆食堂もたくさんあり、朝市見学の観光客がここぞとばかりに食欲を満たしていた。
次の朝、二日酔いの頭を抱え、ぼくは、この通りをぶらついていた。
「おにいさん。どっから?」
問い掛けてくる朝市のおばちゃんに、たわいもなくとっつかまり、ぼくの住む町に知り合いがいるからと心をがっちりとつかまれた上、
家族孝行のため土産を買っていけと説教される。さすがは、百戦錬磨。ぼくが二日酔いでヘロヘロというのに、ウニやら、塩辛やら、イクラを試食させた上に、カニまで焼いて試食させようとする。
大汗かいてしどろもどろの言い訳をし、なんとか朝市から脱出。朝市の売り手はおばちゃんに限らず、年齢多様、まさに老若男女の売り子さんたちが、あの手この手で客引きをしていた。そのとてつもないパワーにただ圧倒されるばかりだった。

朝市でパワーをもらって、元町、函館山を再び散策。今日は、空が晴れ上がり、昨夜のみぞれが凍りついた道路や街路樹が、朝の光を受けて輝いていた。だが、歩くほどに二日酔いがひどくなってくる。函館山にまた登り、そこでがまんの限界を感じたぼくは、駅に戻り、駅ビルのレストランで仮眠休憩。結局、この函館旅行では、朝市で試食させてもらった以外に、カニ、ウニ、ホタテ、イカ、イクラといった名物を口にすることはなかった。

”「ね、なぜ旅に出るの?」
「苦しいからさ。」
「あなたの(苦しい)は、おきまりで、ちつとも信用できません。」
「正岡子規三十六、尾崎紅葉三十七、斎藤緑雨三十八、国木田独歩三十八、長塚節三十七、芥川龍之介三十六、嘉村礒多三十七。」
「それは、何の事なの?」
「あいつらの死んだとしさ。ばたばた死んでゐる。おれもそろそろ、そのとしだ。作家にとつて、これくらゐの年齢の時が、一ばん大事で、」
「さうして、苦しい時なの?」
「何を言つてやがる。ふざけちやいけない。お前にだつて、少しは、わかつてゐる筈たがね。もう、これ以上は言はん。言ふと、気障(きざ)になる。おい、おれは旅に出るよ。」”
(太宰治「津軽」より)

旅にでるのなら、もっと若い頃に出かけるべきだったのかもしれない。感性がみずみずしく、いろいろなことに感動できるうちに。だが、昔よりも交通手段が発達した現代では、旅する者の体力を必要としなくなった。夜行列車に乗らずとも、その日の昼過ぎには北海道に到着できる。それでも、2月の北国への旅は、スキー旅行でもない限りよっぽどの物好きと思われるかもしれない。
南へ向かう人々は、希望に満ちての旅立ちなのだろうか。一方、北に向かう人の群れは誰も無口らしい。・・・失意の故の旅路なのか。

私もひとり 連絡船に乗り こごえそうな鴎(かもめ)見つめ 泣いていました
ああ 津軽海峡 冬景色    
(阿久悠作詞『津軽海峡冬景色』より)

寒さの戻った津軽海峡。
歌に出てくる青森から函館に向かう北への4時間の旅、青函連絡船に一人乗って冬の津軽海峡を渡る旅路は、今はしたくてもできない。
二日酔いでひどい頭痛のする中、日が暮れた盛岡の手前で、新幹線の車窓から見た雪深い山間の村。家々の窓辺の明かりが、まわりの雪景色を照らしていた。暖かい人の暮らしがそこにある。トンネルの合間に、ほんのひと時見えた景色に胸がキュンとなった。住む町へ帰ろう。ー了ー

”命あらばまた他日。元気で行かう。絶望するな。では、失敬。”(太宰治「津軽」より)


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函館 最後の止まり木(2)

2009-02-25 20:34:47 | プチ放浪 都会編

 
 
 
 

【撮影地】北海道函館市(2009.2月撮影)
Copyrights© 2005-2009 TETUJIN
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その店で、一人で飲みつづけていると、「あけみ」という子が、そして、しばらくして「さやか」という子が出勤してきた。2人とも年は20代前半で、超ミニの今風の派手なパンクファッションを身にまとっている。ファッションは、地方の方がいつも派手めだ。豹よりも豹柄がよく似合うような2人。アイラインをばっちり決めた目は、いつも暗く輝きを失っていて、会話をしても目を合わせることはない。ヤンキーによくありがちな・・・。
それとはなしにママに聞くと、彼女たちは借金返済のためにその種の仕事についているらしい。いわゆるワケ有り。彼女たちが時折見せるさびしそうな顔つきは、そうした生活からくるのかもしれない。見知らぬ客から電話が入り、指定の場所に出かけていく。そして一仕事を終えて、30分ぐらいで戻ってくる。

「あけみ」という子が2度目の仕事に出かけた時に、「さやか」という子が最初の客から戻ってきて、カウンターの向こうで「最悪だった」とため息をついた。きっと、しつこい客から嫌なことをされたのだろう。しかし、何があったのか聞かなかったし、向こうも聞かれても答えるつもりはなかったろう。
23時ごろ、遅れて出勤してきた「サキ」という子が、ママに遅刻を叱られた。叱られていても、ふてくさるこなく素直に言うことを聞いている。化粧も薄く、ファッションも普通のOL風で、"水商売"には不向きな感じで痛々しかった。それでも彼女は、屈託のない明るさがあっで陽気だった。カウンターの席の端っこに座った彼女は、ちょっとしたことにも笑顔を見せた。編みタイツが好きというぼくに、「今日は編みタイツなのよ」と足を見せてくれたりする。
そのうちに、「何処から来たのか」という話になったんだろうと思う。
「京都にいたし、それから静岡へ」
彼女のこの言葉が、どきんとぼくの胸にひびいた。流れ流れて函館へ。彼女の20幾年かの人生で、いろんなことがあったろう。寂れた港町。人生の吹き溜まり。サキという子の言葉は、ぐさっとぼくの胸に突き刺さった。彼女の人生からくる言葉だった。
「待っててね」深夜を過ぎて客の呼び出しがかかった時、彼女は、こう言い残して店を出て行った。
ごく普通のOLにしか見えない彼女。自分の武器を知っているとすれば、彼女は最強であるとしか言いようが無い。
だが、ぼくはこうした擬似恋愛をするには、あまりにも汚れちまっていた。実際に今日の格好ですら、乞食に近いものがある。

浸るにはあまりにも辛い世界を見せられて、ぼくは酔うに酔えなくなってしまっていた。サキちゃんが店を出てまもなく、ぼくは店を出て、もう一軒、飲み屋へ立ち寄った。こうせずには、滅入ってしまいそうだったのだ。結局、次の店で3時まで飲んだのだが、ほとんど覚えていない。
普段できないような深い人生経験を、ぼくはこの函館でした。だが、人生の深淵を垣間見たはずなのに、ぼくは酒を飲みすぎて記憶を無くしちまっていた。いつのまにか天気は回復し、凍てつく函館の空に大きな月がぽっかり浮かんでいたのを、帰りがけに見かけた記憶だけが頭にこびりついていた。


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函館 最後の止まり木(1)

2009-02-24 21:52:55 | プチ放浪 都会編

 
 
 
 

【撮影地】北海道函館市(2009.2月撮影)
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“汲めや美酒 うた姫に 乙女の知らぬ 意気地あり”
(与謝野鉄幹「人を恋うる歌」より)

港町函館。函館は本州に最も近いことから、明治時代から本州と北海道を結ぶ海上運輸が発達した。また、北洋漁業の基地でもあり、漁船団がひしめく漁港の町でもあったのだが、ロシア(当時はソ連)の200海里経済水域の設定以降は、そのにぎわいが消えてしまった。
追い討ちをかけるように、高度成長時代に賑わいを見せていた地場産業の要の造船とその関連産業も、オイルショックを境に一気に冷え込み、街は活気を失った。港町であった函館の人の流れが変わった。
繁華街は五稜郭周辺に移り、かつての盛り場の十字街地区は、かろうじて観光という資源を利用して再開発化が進んでいるものの、函館駅から山の手に向かう大門地区には空き地やシャッターを閉めた店が目立つ。

多くの港町がそうであるように、どこかに飲み屋街があって、地元の漁師などが飲み歩いているはず。そう思ってみぞれの降る中、通りから通りへJR函館駅前を彷徨ったのだが、かろうじて軒を連ねる小さな飲み屋が数軒あるばかりだった。そのうちの一軒の店。明るいうちに見れば廃屋としか言いようのスナックだった。
中に入ると、60代半ばをとうに過ぎたママが店を開く支度をしていた。もちろん、客は誰もいない。店のコート掛けには、サンタクロースも恥ずかしくて逃げ出すような、真っ赤なウールのコートがかかっていた。

「16歳から住み込みでこの商売をやってきたよ」
父親が7歳の時に他界。母親が働きに出て、米を買うお金だけは、毎日、渡してくれたらしい。母と弟と三人で1日分、1升の麦入りのご飯は、彼女が16歳になるまでは、彼女が毎日炊いていた。時は流れて、彼女は結婚。昨年、46歳になる長男の1000万円に上る借金の肩代わりをして1年で完済したという店のママは、豪快にグラスの焼酎を飲みながら、そう言った。ひとさまに迷惑を掛けるのが嫌だと。
そのママが、外は冬の雨、今日は客が来ないだろうと言う。
「商いって、店を開けて見なけりゃわからないでしょ。だから、”飽きない”って言うんですよ」
こう、答えたぼくに、ほんとうにそうだねとうなづく。昨晩は、金曜日というのに、まったく客が来なかったとのこと。ここのところ、景気が悪くて、客足がさっぱりらしい。
「うちの店、若い子を5人も使っているのにね」
椅子が4つ並んだカウンターに、テーブルが3つあるだけの店。カウンターの奥の棚には、有線放送のケーブルを取っ払う際に落っことして、左側にひびが入ってしまったという、スターウォーズにでてくるジャバザハットのような超メタボの招き猫が飾られている。カウンターの上に、生ビールと焼酎のサーバーがあるだけ。あまりにも、殺風景な店だった。何で若い子が5人?
後でわかったことだが、その店は合法的なデリバリーヘルスもやっていた。つまり、置屋だった。その昔は、そうとうな荒稼ぎができたらしい。毎日の売上が、数十万という時代がかつてあったようだ。。


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饒舌な桜

2009-02-23 22:11:02 | プチ放浪 海沿い編

 
  
  
 
2/22(日) 田子、天候 晴れ 水温 13.5℃ 透明度 10メートル
(1本目)弁天島

さて、伊豆で出会えた河津桜。河津川沿いの桜並木もよし。桜のピンクと、菜の花の黄色のコントラストが美しい。
しかし、山のふもとにひっそり佇む桜もまた良し。
松崎街道から見える那賀川にはキセキレイ。その鳥たちもまた花見の風情。花を愛でる余裕を、失いたくない時もある。川沿いで一人ぽつんと桜を見る人に混じって、車を停め、しばし鑑賞。桜は饒舌だ。春の希望をにぎやかに歌い上げている。

なお、今日の記事のタイトルと本文は、Dai様よりダメだしがあり、大幅に書き換えました。
厳しいご批評、ありがとうございました(^O^)/。Daiさんち、それから、おやかたさんちのブログ。
携帯の方はココ。
http://pub.ne.jp/rebels_f/
http://pub.ne.jp/oyakata335/

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出る釘をたたいて。。。

2009-02-22 20:55:19 | プチ放浪 海沿い編

 
 
 
   

2/21(土) 田子、天候 晴れ 水温 13.4℃ 透明度 3メートル
(1本目)白崎、(2本目)白崎

ここのところ、週末に低気圧が日本列島を北上し、春一番やら、強風・大荒れのパターン。今回の伊豆行きも、金曜日の晩、潮の飛沫の中を(@真鶴道路)、車のフロントガラスを塩で真っ白にして、下田ダイバーズへ。車から見えた夜の道路沿いの海は、天に届かんばかりの激しい波が舞い上がり、荒波が海岸線を巻き上げて打ち寄せていた。

・・・ダイビングは無理だよなあ。。
そもそも、ちょうど1ヶ月前に、右足首の抜釘(ばってい)手術を受け、骨折脱臼を原因とする1年間に渡る医者通いから無罪放免されたばかりで、ダイビングの復帰は3月だったらOKと言われていたのだった。
しばらくダイビングはできないぼくを心配してくれた下田ダイバーズのヘッドコーチが、花見においでと誘ってくれ、今回の下田行きとなったのだった。

夜遅くショップに着くと、またまたサプライズ。いつも、ぼくのバディをしてくれる子が、ぼくの到着を待っていてくれていた。めちゃくちゃ感激。
というサプライズがあって、バディがいてくれるのなら潜ってみるかと、田子の海を2本流してみたのだが、昨夜の大荒れの天気のせいか、透明度3メートル。味噌汁の中を潜っているようなイメージだった。
ほとんど何にも見えないので、そうそうに、ダイビングを引き上げ、みんなで花見。
残念ながら、早咲きで知られる河津桜は、もうかなり散ってしまって、葉っぱが出ている。それでも、伊豆の道路際のあちこちで、あでやかなピンク色の大きな花が目に入った。

さて、ぼくのブログ。ダイビングの仲間たちも読んでくれているのだが、どうも、ぼくのブログにコメントを寄せてくれている方たちの突込みが面白いと評判なのだ。特に、Daiさんのコメントが女性ダイバー達に、人気絶大だ。
tetujinの本記事よりも、コメントの方が面白いとのこと。・・・それって、どうよ。
まあ、こうして出る釘をたたいておけば、かなりのプレッシャーとなるに違いないと思うのだが、今日のコメントが果たしてどんなものやら。www

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