「陳情一元化ルールと箇所付け先行内示」、日本の議会制民主主義はどうなる
「陳情窓口を党に一元化する新ルールについては『脱官僚実現には、政府イコール行政、政府イコール与党という原則を徹底して打ち立てる必要がある。地域主権を推進するなかで、新しい時代の国の出先機関は与党の地方組織であるべき。地方の首長が霞ヶ関の官僚に右顧左眄する文化もなくしたい。今年は陳情一元化ルールを徹底的に浸透させる』」(今月号の津村啓介衆議院議員)
こうした新ルールの中で、「民主党は29日、2010年度予算案の国土交通省の子個別の配分額を、省に先行して都道府県連に『内示』した。県連を通じて吸い上げた『重点要望』に対する回答で、実際の配分はおおむね、それにこたえる内容だった。夏の参院選に向け、権力移行を誇示する『示威行動』といえそうだ。(2010年1月30日付け朝日新聞)
「箇所付け」の内示を受けた県連は、首長に連絡する。その連絡を受けた首長さん方は、大いに困惑したことだろう。石井岡山県知事もその一人だ。
「2010年度の国土交通省関連公共事業の予算配分方針(箇所付け)が民主党県連から事前に伝達されたことに、『これから予算審議が始まろうというときに連絡があり、非常に戸惑った』」(石井岡山県知事、2010年2月6日付け山陽新聞)
国の予算審議は始まったばかりの段階で、もう既に「箇所付け」を連絡する。確かに民主党が与党であり、成立は間違いないとは言え、成立した後に初めて連絡できるものであり、予算審議の段階での連絡は異常としか言いようがない。
自治体職員であった私の経験からしても、もしも予算審議の段階では一切外部には、情報は出せないことは自明の理だった。だから、新年度の事業委託の入札なども、成立後にしている。私が以前働かせていただいていた公民館の新年度の清掃委託の入札は、年度末ギリギリの3月30日に行われている。
「新しい時代の国の出先機関は与党の地方組織」、そんな論理はあり得ない。政党と政府は異なる、自明の理だ。「都道府県連を通じての『公共事業の箇所付け内示』」、まさに利益誘導政治だ。こんなことがまかり通っていいのだろうか。日本の議会制民主主義の根幹に関わる大問題だ。民主党政権になって幾つかの施策の前進などもあり期待もしているが、その一方で「政治と金、政治倫理の問題」やこの「新ルールや箇所付け内示問題」での民主党には「NO」を突きつけないわけにはいかない。