『サラダ記念日』を上梓した俵万智の近著『ちいさな言葉』に心洗われている
「『嫁さんになれよ』だなんてカンチューハイ二本でいってしまっていいの」
「『この味がいいね』と君が言ったから7月6日はサラダ記念日」
俵万智がそんな句の入った『サラダ記念日』を上梓したのは、1987年5月。当時24歳だった。以来、もう23年の月日が流れた。
「してやれることまた一つ減りゆきて子が殻をむく固ゆでたまご」
そして今、そんな句を詠むような、シングルマザーとなっている。
俵万智の近著『ちいさな言葉』(2010年、岩波書店刊)の「あとがき」には、次のように書かれている。
「子どもとの暮らしのなかで、はっとしたり、へえっと思ったり、えっと驚いたり、ふふっと笑ったりしたことを、近況報告のような感じで綴ってきたものです。特に、赤ん坊だった息子が言葉を獲得してゆく過程は、ほんとうにおもしろく、言葉好きの母としては、まことに観察のしがいがありました」。
私は、この本を読み、俵万智が観察し紡いだ言葉を読ませてもらって、とても清々しい気持ちになっている。まさに心が洗われるとはこのことをいうのだろうと思う。
因みに、私が『サラダ記念日』の中での好きな句は次の一句だ。
「『寒いね』と話しかければ『寒いね』と答える人のいるあたたかさ」