tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

米、NAFTA再交渉へ:先進国企業の行動原理とは

2017年08月17日 12時37分14秒 | 国際経済
米、NAFTA再交渉へ:先進国企業の行動原理とは
 世界に先進国と途上国があり、国別の経済格差があるのは現実で、この問題は避けることはできません。一国の中でも地域別経済格差は存在します。

 ただ、国別の経済格差はそのままでいいかというと、誰もそうは考えません。
 途上国はそれぞれに努力して経済水準を上げ、先進国もそれに協力して、世界の国々が、より高い経済水準をクリアーすることを目指し、そうすることが人類の平和共存に役立っていくのだと考えています。

 経済協力や技術協力などが基本でしょうが、先進国企業による直接投資はより大きな効果を持つ方法として、実行されてきました。
 特に植民地がなくなった第二次大戦以降、先進国の企業は途上国、新興国に積極的な投資を行ってきたのではないでしょうか。

 そこで問題になるのが、経済発展と賃金水準の問題です。
 本来から言えば、一国の経済発展のレベルによってその国の賃金レベルは決まるしかありません。経済発展のレベルはその国の生産性の水準という事になりますが、生産性の水準が半分の国なら、賃金も大体半分の水準という事になるのが自然です。

 こういう状態ですと、先進国と途上国の国際競争力は同じという事になります(勿論、平均での話です)。
 ところが、賃金水準が半分の国に、先進国企業が進出し、先進国の生産設備を使い従業員を教育して、2倍の生産性で生産をしたら、賃金の安い部分はそのまま先進国企業の利益になります。

 その国の賃金より多少高い賃金を支払っても、本国で生産するよりずっと有利です。
 アメリカとメキシコの問題の根本原因はここで、アメリカ企業がメキシコへ投資をし、より大きな利益を上げるために考えた方法が、企業の役には立っても、国に損害を与えるという結果になったという、企業と国の利益相反の問題なのです。

 それを助長したのが、NAFTAという自由貿易協定です。そして、アメリカとしては困ったことに、この戦略に他の先進国企業なども相乗りするようになったことです。
 アメリカの多くの先進企業は海外に出ていき、そこで利益を上げ、本国の生産拠点だったデトロイトのような都市は、いわゆるラストベルトになりました。

 もともと、世界一の技術水準を持つアメリが主導した自由貿易システム、自由な資本移動といった世界経済活性化のための理論は、国境を越える企業活動の急速な進展により、目に見える形で企業と国の利益相反を生み出すケースが現実化したわけです。

 トランプさんは、企業経営者から、国の経営者になって、この利益相反問題について、極めて率直に問題提起をしたのですが、それでは元に戻して、自由貿易や自由な資本移動をやめれば(制限すれば)いいかという問題もやはり存在します。

 どこまでの自由がいいのか、どこまでの規制がいいのか、「 真理は中間にある」のでしょうが、理論と現実のギャップは大きいようです。
 その結果が、一国のリーダーの識見が問われるということになるのでしょう。

アメリカ、NAFTA再交渉へ始動

2017年07月19日 14時19分25秒 | 国際経済
アメリカ、NAFTA再交渉へ始動
 万年赤字の止まらないアメリカですが、貿易赤字削減と雇用の増加を目標とするトランプ政権、先ずは、北米自由貿易協定の見直しから開始という事でしょうか。

 トランプ大統領は、アメリカのラストベルトが衰退したのは自由貿易を進めたからだという考え方のようで、結果が「自由貿易協定の見直し」という事になるのでしょうが、ラストベルトが衰退したのは、アメリカの競争力が弱くなった、つまり、コスト(主要なコストは人件費)の上昇が、生産性に上昇を上回り、あるいは品質の面から競争力がなくなって、良いものを効率よく作る国に負けたという事です。

 負けたという事を自覚すれば、本来は、アメリカの栄光を取り戻すためには「頑張って良いものを効率的に作るぞ」と決心するのでしょうが、そうした真面目な努力は苦手なのでしょうか、自分の努力不足は棚に上げて、輸入制限とか、アメリカに工場を作らないのは怪しからんとか、 外国のせいにばかりするようです。

 もともと人件費の安い国に工場を作って、安いアメリカ・ブランドを世界中に売ったのはアメリカですが、自国産業の空洞化で、今度は人件費の高いアメリカに投資しろ、輸出で儲けるのは怪しからん、という事なのでしょう。

 加えて、もう1つ重要なことがあるようです。それは、「為替条項」が入ることです。
 トランプ大統領は、かつてから、中国や日本を為替操作国だと名指したりしていますが、1985年のプラザ合意を思い出していただければ、為替レートが一国経済にいかなる影響を及ぼすかは明らかでしょう。

 日銀の異次元金融緩和で、$1=¥120までいった円レートですが、この所は110円前半です。FTAなどでは何年かけて数%の関税をゼロにするとかが交渉されますが、1割の為替レートの変更はそんな努力をあざ笑うかのように、1国の競争力に影響します。

 為替レートは価値の基準、度量衡で言えば、『メートル原器』のようなものですから、これが勝手に変わったのでは、経済計画、経営計画などは出来ないはずです。
 戦後、固定レートがいいといったのもアメリカで、変動相場制になったのも、アメリカの赤字が原因です。

 基軸通貨国アメリカの基軸通貨「ドル」の価値にが勝手に動かれては、 まともな国際経済意は成り立ちません。
 その意味で、アメリカが、為替レートはあまり動かさないようにしようと言うのならいいのですが、それなら、マンハッタン中心に動く、 国際投機資本の動きをどうするのでしょうか。

 アメリカの貿易赤字を減らすために、他国の通貨変動に対し規制を掛けるのであれば、アメリカこそが為替操作国という事になるでしょう。
 プラザ合意という苦い経験を持つ日本は、為替についても主張すべきことがありそうです。

OECD諸国と日本、所得格差の立ち位置は?

2017年07月01日 12時45分56秒 | 国際経済
OECD諸国と日本、所得格差の立ち位置は?
 所得格差の問題をいろいろなレベル、角度から見てきていますが、今回はOECD諸国の中での日本の立ち位置を見てみましょう。

 所得格差の程度を表す数字は、ご存知の「ジニ係数」です。完全平等の場合(すべての人の所得額が同じ)はジニ係数=0で、完全不平等(1人の人がすべての所得を得ている場合)はジニ係数=1で、現実はその中間にあるという事になります。

 どの程度の数字が適切かは、その国の国民の受け入れ方によって違いがあるでしょう。
 アメリカンドリームを掲げ、頑張って「夢実現」を信条とするアメリカは、ある程度の格化は受け入れる国と言われてきました。しかし、最近は少し変わってきたようで、夢を失ったラストベルト(錆びついた産業地帯)の人たちの支持でトランプ大統領が生まれた、などと言われます。

 日本は昔から「乏しきを憂えず、等しからざるを憂う」などと言われるように、格差を嫌う国のようです。
 現実に格差の少ない国と言えば、北欧諸国というのが常識ですが、この辺りはOECDの資料でもはっきりとしています。

 OECDが2015年に発表した加盟国(+ロシア)のジニ係数で見ますと
・スウェーデン 0.273  平等度 9位
・日本     0.336  同   26位
・アメリカ   0.389  同   31位
となっています。

 もう一つ厚生労働省が平成24年版「厚生労働白書」で説明している、日本の「相対的貧困率」の動きを見てみましょう。(相対的貧困率とは、全体を所得順に並べ、真ん中の人の所得(中位数)の半分以下の所得の人の全体の中での割合)
相対的貧困率:所得再分配前
・1995年前後   19%
・2000年前後   24%
・2005年前後   27%
・2010年前後   29%
と、まさに異常な上昇を続けています。おそらくは長期不況のせいでしょう。

相対的貧困率:所得再分配後(税、社会保障で調整された後)
・1995年前後   8%
・2000年前後   10%
・2005年前後   9%
・2010年前後   10%
となっていますが。国際比較しますと、アメリカ11% スウェーデン4%です。

 かつては所得再分配後のジニ係数は北欧並と言われたこともある日本ですが、長期不況による所得格差の拡大は否定できないようです。
 にわかには信じがたいような格差の拡大が起きてしまった日本ですが、2013年以降の円高是正、日本経済復活の動きの中でも、非正規労働者問題、児童の貧困率の問題等、この所の日本経済は、格差縮小にはあまり動いていまいように感じられます。

 この点を、最近の政府の考え方、税制や、働き方改革などの側面からも見ていきたいと思います。

国家間経済格差問題 1960年代と現状の違い

2017年06月30日 09時55分35秒 | 国際経済
国家間経済格差問題 1960年代と現状の違い
 経済格差の問題は国家間でも当然存在し、時にいろいろな問題を引き起こします。
 あまり古い時代の問題は別として、戦後について見ていきますと、戦後巨大な経済力を持っていたのはアメリカです。 

  幸いなことに、当時のアメリカはほとんど無傷の経済大国として、寛容、寛大な国でした。戦争で荒廃したヨーロッパにはマーシャルプランでその復興を助けました。OECDの前身OEEC(欧州経済協力機構)はそれを契機に作られた組織です。
 アジアの占領地に対しては、ガリオア・エロア資金を供給、経済的復興と人材交流に多大な力を発揮しました。

 1960年代に入りますとこうした復興開発援助の動きは、復興した先進諸国が、解放された植民地を含む後進国・低開発国(当時の用語)を援助する形で進められることになります。
 OECDの下部機構として置かれたDAC(開発援助委員会)加盟の先進国、米・加・西ヨーロッパン諸国・日本などは、国連の低開発国援助計画に則り、政府ベース、民間ベースで多様な援助を行っています。

 急速な復興を成し遂げた日本も急速に援助額を増やし、1971年には60年に比べ8.7倍に援助額が増えています(欧米主要国は2~3倍)。
 国連は1960年代を「開発の10年」として、国連貿易開発会議(UNCTAD)を設立、成長の遅れる途上国援助を打ち出しています。

 UNCTADはGDPの1%を途上国援助にというスローガンを掲げたと記憶しますが。1970年代になると、アメリカのニクソンショック(ドルと金の兌換停止)を筆頭に、先進国経済が次第に健全性を失い、「先進国が後進国を援助する」といった構図は次第に影が薄くなったようです。

 しかしこうした取り組みの結果、後進国は経済成長の重要性に目覚め、後進国から発展途上国へ進化( 経済成長の原動力)していったのではないでしょうか。
 21世紀はアジアの世紀などと言われるのも、早期に経済発展の重要性に目覚めた国がアジアに多かったことの結果ではないかと思っています。

 顧みると、1960年代は、国連やOECDが国家間の経済格差に関心を持ち、ともに経済発展をすることが世界の平和・安定をもたらすと考えて一生懸命活動した時期だったのではないでしょうか。

 残念ながら、1970年代以降は、先進国も、自分自身の頭のハエを追うことにかまけて、他をおもんぱかる余裕がなくなったのでしょうか。
 この面から見ても、1960年代は、人類社会が、先進国中心に、格差縮小に一生懸命になった大変良い時代だったということが出来るのではないでしょうか。

<追記>
 現状では、新興国への援助は、先進国からの直接投資といった民間ベースが主流でしょう。勿論これも途上国の経済発展に貢献して来ました。政府にカネがなくても、先進国企業には資金がります。これは5S、カイゼンなど多くの産業人材育成のノーハウを持つ日本の得意技かもしれません。
 しかし直接投資は、時に途上国の低賃金を利用した先進国企業の収奪手段とみられる側面も持ちます。国連が児童労働の禁止、Dcent Workの順守などを強く言うのはその故です。格差縮小には、アダムスミス(道徳情操論)が言うように、倫理観が重要です。

 今、強力に援助活動をしているのは中国です、一帯一路構想、それを支えるAIIBなどはその象徴です。これが、資源獲得競争などを含め、中国を豊かにするためか、そうではなく、世界の国々の経済格差を縮小する共存共栄のためなのか、これは、これからの中国の行動が明らかにするでしょう。













米抜きTPPのすすめ

2017年06月21日 11時34分34秒 | 国際経済
米抜きTPPのすすめ
 「米抜き」と書きましたが「米」は「コメ」ではなく「アメリカ」です。

 TPPについては、動きがあるごとに取り上げてきました。最初の視点は、経済的に力が落ちてきたアメリカが、経済力をつけてきている環太平洋諸国を巻き込んで、何とかアメリカの役に立つようなシステムを作り上げたい、と考えてやっていることだから、何となく胡散臭いと見ていました。

 しかし、現実に交渉が進展し、大筋合意が見えてくるころになって、見方が変わりました。
 これは環太平洋諸国にとって、経済発展を刺激する、経済発展への努力の道筋をつける前向きなものになるのではないか、という様相が見えてきたからです。

 アメリカを代表して交渉に当たったフロマン代表の理念や人柄もあったのかもしれません。日本の甘利代表も、フロマン代表とは肝胆相照らす仲となったようでした。

 という事になりますと、これは必ずしも アメリカの利害を優先するものにはなりません。アメリカも立派になったなと思っていましたら、トランプ政権は「TPPなどクソくらえ」という事なのでしょう。公約第1条で離脱です。

 アメリカ・ファーストを掲げるトランプ政権が離脱を表明したという事は、つまりは「TPPはアメリカのためでなく環太平洋諸国のためのものになった」という事の間接的な証明でしょう。

 今、アメリカ抜きの11カ国でTPPを生かして使おうという構想が出てきています。いまのTPPならば、環太平洋諸国のために生かして使うことは十分可能なのではないでしょうか。自国の利害より、参加国すべてにプラスというシステム作りが可能と考えるからです。

 勿論、本来の精神として、共存共栄、参加国の「共生」を考える日本の役割は重要でしょう。
 覇権国からずり落ちようとしているアメリカが、また世界と共にと考えたとき、そのレールを示す事にもなるでしょう。

 世界が統合から分断に動くのかとも見える今日、国際相互理解、国際協力はますます大事になっています。日本は一貫して、地球市民の相互理解、協力・交流、共生と発展への強い志向を世界に発信し続けるべきでしょう。
 (ところでISDS条項は、11カ国でよく話し合うことが必要なように思われます。)

一帯一路、AIIB、中国の構想

2017年05月16日 12時45分10秒 | 国際経済
一帯一路、AIIB、中国の構想
 北京で14、15両日開催された「一帯一路」についての初めての国際会議が、昨日終了しました。29カ国の首脳をはじめ130カ国以上の国、さらに国連、IMFなどの国際機関からも参加、中国の一帯一路構想についての世界の関心の深さを示しました。

 習主席は「幅広い合意に達し、前向きの成果が得られた」と今後の活動についての積極的な姿勢を示したと報道されています。

 折しも、自由貿易のリーダーを自認してきたアメリカではトランプ大統領が、「アメリカ・ファースト」「保護主義容認」打ち出したところです。今度は、社会主義市場経済を標榜し、自由化とは一線を画してきた中国が、一帯一路では「あらゆる保護主義に反対する」とまさに攻守所を変えた形となりました。

 一帯一路構想で中国が打ち出しているような陸と海のシルクロード、ユーラシア大陸から南アジア、アフリカまで含む経済圏ということになりますと、これはまさに巨大です。

 中国には「愚公山を移す」という諺がありますが、いずれにしても長期の話です。今回の会議で議論されたような、インフラ建設を中心に、経済基盤の充実が図られれば、その効果は計り知れないでしょう。
 AIIBを増資し、勿論その程度では足りないでしょうから広く資金を調達し、相対的な経済発展を目指すとすれば、膨大な投資と、成功すれば巨大な経済圏の発展が可能になるでしょう。

 ところで、この巨大構想が成功するか否かの分かれ目は何でしょうか。
 見方はいろいろあると思います。しかし、長い目で見れば、中心となる国・組織が自国の利益を中心に行動するか、コストを払ってでも、全体の繁栄を図り、その上でその成果を共有するか、どちらの態度をとるかでしょう。

 現在の中国を見ますと、周辺を収奪し、自国の利益を図るのか、という危惧を持つ国も多でしょう。南沙諸島に見られる版図拡大、軍事利用へといった動きは、皆見ています。
 
 しかし、こうした試みは、いずれ失敗するようです。旧ソ連も崩壊しました。アメリカが自国中心に転換したのも、自国の利益を図るつもりが結局そのコスト高に耐えかねたからでしょう。

 古くは植民地崩壊から始まり、単なる「富の移転」による収益確保(収奪)は次第に許されなくなってきているのです。
 一帯一路もこうした地球市民の意識の進化の中で考えれば、この巨大な地域全体の経済の底上げが現実になって、初めて成功すると考えなければならないのでしょう。

 広い関心を得て、スムーズな出発の情景を見せた「一帯一路」構想です。今後のさらなるスムーズな発展を期待したいと思います。

自由貿易と保護主義の間

2017年05月15日 10時27分54秒 | 国際経済
自由貿易と保護主義の間
 今回のイタリアのバーリでのG7でも、常套句の「あらゆる保護主義に対抗」という文言は入りませんでした。

 覇権国・基軸通貨国アメリカのトランプ大統領が「保護主義」を主張しているからということで、議論の末そうなったというより、何か「忖度」したような雰囲気もありそうです。

 ここで、些か考えてみたいと思うのは、トランプ大統領の保護主義と、これまで主要な国際経済会議ではまさに常套句になっていた「反保護主義」と、本当に違うものだろうかという問題です。

 マスコミは通常、「自由貿易」対「保護主義」という形で取り上げます。確かにその方が感覚的には解り易いということもあるでしょう。
 しかし、それぞれの主張の中身に入ってみれば、実は、どうも本質的な違いではなく、「程度」や「進め方」の問題だということになるようです。

 アメリカ自体、日本とは「日米自由貿易協定」を目指し、自動車や農産物の自由化問題を持ち出してくるだろうと言われています。日本では当然、関係省庁が身構えています。

 こうした状況を、「自国には保護主義を、他国には自由貿易を」と言ってしまえば実も蓋もない話ですが、本当の所は、
 ・理想としての自由貿易を旗幟に掲げる主張
 ・まともに自由化したら勝ち負けがハッキリしすぎるから交渉しつつ漸進的に
という自由化の仕方、速度の違いでしょう。

 勿論理想を掲げることは大事ですが、TPP のような多国間でも、FTAのような2国間でも、各国政府が一生懸命やっていることは、「自国の特定の産業の保護をどこまで認めてもらうか」ということがメインのようです。

 これは当然で、その努力の成否に政権の維持や、国の産業構造の盛衰がかかっているからです。
 
 自由競争(自由貿易)は競争の刺激によって、競争力の弱い産業の生産性を引き上げ、経済発展を進めるための重要の手段です。
 国内競争だけでは往々にして甘くなるので、国際競争の中で、みんなが生産性向上に努力し、世界経済のより良い成長発展を目指そうというのに反対の国はないでしょう。

 しかしスポーツ選手などと同じで、無理して鍛えることは禁物で、故障の原因にもなります。自分の体に合わせて、徐々に力をつけることが重要なのです。
 「自由貿易」対「保護貿易」というのも、実はこの「スピードの差」という問題に尽きるのではないでしょうか。

G20 (Apr.2017) は「合意」を強調

2017年04月23日 10時45分49秒 | 国際経済
G20 (Apr.2017) は「合意」を強調
 4月21日、今回のG20は幅広い合意があったということで閉幕しました。しかし今回は合意文書もなく 、議長が合意したといっても、何かムードみたいなことのようです。

 しかしG20はやっぱりやった方がいいでしょう、トランプ政権登場以来、世界の覇権国、基軸通貨国であるアメリカの方針が、180度変わって見たり、また何か少し修正されたり、使われる言葉も自由貿易対保護貿易だったのが、公正な貿易などという未だ定義されないような言葉が出てきたり、参加国はみんな戸惑っています。

 さらにフランスの選挙をまぢかに控え、イギリスも総選挙が前倒しなど、先行きが大変不透明の中で、主要国の経済運営の責任者が、何はともあれ、出来るだけ話し合うということは一層重要になっているということではないでしょうか。

 幅広い合意の内容についてですが、
・保護主義については、前回「保護主義への対抗」の文言に反対したアメリカから今回は特に発言はなく、トランプさんの言う「公正な貿易」についても特に発言はなかったとのことで、アメリカも日本などとの2国間のFTAを控えて、多少は軌道修正するのではないか(麻生財務相)などいろいろな理解が含まれるようです。

・通貨安競争の回避でも一致した(麻生財務相)ということですが、トランプさんが「ドルは高すぎる」と発言していることから、ドル安を目指すのか、ムニューシン氏が強いドル指示したこととどう関係するのか、日本の財務省同行筋からは、為替問題は主要議題にはならなかった、などの声もあるそうで、問題は煮詰まっていないようです。

 報道されるこんな情報から見えてくるのは、アメリカ自体が、どの方向に進むべきかを未だ決めかね、状況を見ながら、自分の進むべき道を選択しようというような試行錯誤の段階にあり、その結果、各国とも疑心暗鬼の状態ということのように見えます。

 ドイツ(議長国)や日本は、できるだけ、自由貿易、為替安定の従来路線で纏まることを望みながら、融和を目指し希望的な観測を「幅広い合意」の内容にしたと考えていることの結果が、議長の報告になっているのではないでしょうか。

 7月のサミットまでに如何に調整されるかが大事という見方が多いようですが、アメリカ自体(トランプさん自体)がどの辺りで辻褄を合わせるか、未だはっきりわからない状況では、試行錯誤状態は当分続きそうです。

 日本として大事な事は、為替の安定のためにも、常に問題になる貿易黒字、経常黒字をできるだけ削減し、世界経済の安定的な発展に積極的に協力していますということを、経済実績で示していくことだと思われます。

 そのためにも、最も大切なのは「 消費拡大」を実現することでしょう。今まで全く出来ていないこの問題を、どうやって実現するか、これが安倍政権にとって、さらには、日本経済の成長回復、日本国民の生活レベル向上にもつながる最重要課題のようです。

「TPPから日米FTA」への背景、貿易黒字の動向?

2017年04月20日 11時25分15秒 | 国際経済
「TPPから日米FTA」への背景、貿易黒字の動向?
 2017年3月の貿易収支が2か月連続黒字と発表になり、同時に、2016年度の貿易収支が6年ぶりに黒字になったということです。
 3月の貿易収支黒字は6147億円で、2016年度の貿易収支黒字は4兆86億円、2016年に入って、貿易収支の黒字が増えてきています。

 通常、貿易収支が黒字になるということは良いことだと考えられます。勿論赤字より黒字の方がいいということは、我々の家計でも同じですが、国際収支の場合は外国との関係もこれあり、いろいろと考えなければならないようです。

 ところで、アメリカのトランプ政権は、纏まりかけたTPPを蹴飛ばして、二国間のFTAを進めたいようです。
 アメリカは万年赤字国ですから、何とか黒字にしたいのでしょうが、それを目指して主導したTPPでは、各国の主張も強く(フロマン代表が人が良かったせいもあるのかな?)こんなのではアメリカの赤字は減らず、雇用も増えないというのがトランプさんの意向でしょう。

 当然日本とは、二国間交渉でFTAをという事になりつつあるようです。二国間協定ではやっぱりアメリカは強いですから、日本もこれからは大変でしょう。 
 かつて日米繊維交渉から、自動車交渉、半導体交渉まで日本は苦労しましたが、今度は農業分野でしょうか。

 アメリカの貿易赤字を増やしている国として、中国と日本が先ず挙げられているようです。最初アメリカは為替で赤字解消を図ろうとして、中国と日本を為替操作国だと言いましたが、その後の事情で、中国は為替操作国ではなくなりました。

 今後の日本とのFTA交渉で、アメリカがなんと言いうかわかりませんが、基底にあるのは、アメリカは万年赤字、日本は万円黒字という関係です。
 特に日本は、対外投資収益などの入る経常収支で、大幅黒字、2016年度の経常黒字はGDPの3.7%以上、1760億ドル、18兆円ほどとの予想になっています。アメリカはGDPの2.5%、4700億ドルの赤字予想です。(データは「世界経済のネタ帳」)

 この差は、日本人は頑張って働き、アメリカ人は楽して儲けようと考えるからでしょうか。直すのは大変でしょう。トランプさんは、アメリカに雇用さえ持ってくれば大丈夫と考えているようです。それで駄目ならその次は為替操作でしょう。

 こんなことになるのも、日本の黒字が大き過ぎるからで、この点は、アメリカに言われなくても、日本自体が真剣に考えるべき問題です。
 次回その点を見ていってみましょう。

なんなら「固定相場制」はいかが?

2017年04月13日 12時13分32秒 | 国際経済
なんなら「固定相場制」はいかが?
 トランプ大統領は、これまで繰り返してきた「中国は為替操作国」という発言を訂正し、「中国は為替操作国ではない」といったようです。

 確かにかつて中国は輸出振興のために、 アメリカの人民元切り上げ要請などに応じず、頑張っていましたが、近ごろは、逆に、人民元安になると、海外からの投資資本が流出して、中国経済は危殆に瀕するという可能性もあり、人民元の高値維持に気を使わなければならないといった事情も出てきています。

 トランプ大統領は、中国の為替操作国指定を解除する代わりに、「ドルは高すぎる。私のせい(アメリカを強くするといったから)でもあるが、他国が通貨を切り下げている中で競争するのは難しい」と主張しているようです。

 相手を特定の国から、多くの国々に切り替え、ドルの独歩高への心配をあらわにしたということなのでしょう。トランプ大統領も経済原則には敵いません。
 当然のことながら、金利引き上げで金融正常化を目指すFRBの方針についても「金利は低い方が望ましい」と言っているようで、イエレンさんは何というでしょうか。

 これまでも書いてきましたが、 トランプさんの主張はもともと経済的には矛盾が多く、いずれ修正と思っていました。今後日本について何と言って来るか解りませんが、すでに108円台の円高になっていて、日本はドル高の先を行っています。

 そんなこんなで、これから世界中が為替レートで揉めるようなら、どうでしょう、思い切って、1970年以前の様に「固定相場制」に戻した方がいいのではないでしょうか。
 1960年代の世界経済は極めて健全でした。 それを壊して変動相場制に持ち込んだのはアメリカです。

 基本的に変動相場制というのは、経済力が弱くなったら、為替レートを切り下げて済ます(経済力回復などの努力は面倒)というシステムです。
 固定レートをいくらに決めるかで大騒ぎになると思いますが、 先ずは「固定相場制」の賛否を取れば、為替操作国かどうかのリトマス試験紙になるのではないでしょうか。当然日本は賛成だと思っています。

有事のドルか、安定の円か

2017年04月12日 16時29分03秒 | 国際経済
有事のドルか、安定の円か
 トランプ大統領は、選挙戦の最中から「アメリカは、もう世界の警察官は止める」と言っていました。
 アメリカの経済を立て直し、雇用を増やすためには、そんなことにまで手を出す余裕はない、ということだったのでしょうか。

  しかし今回のシリアの政府軍基地のミサイル攻撃の報道を見て、「えっ、やっぱり世界の警察官をやる気なんだ」と思った方も多いと思います。
 トランプさんの頭の中では多様な変数が複雑に組み合わさり、結果としてミサイル攻撃という結論になったのでしょう。

 そして、世界の論調も、真っ二つに分かれているようです。アメリカが強くないと困るという人と、アメリカが強いと困るという人がいるということでしょう。本当は、世界が2つに分かれていることが一番困ったことなのでしょう。

 ところで、経済の立場から見ますと、このところ「有事のドル」という印象は薄れ、「とりあえず円」ということで、円が買われることが多かったのですが、久方ぶりに「有事のドル」という言葉がマスコミに登場し、米国債が買われると書かれていました。

 しかし現実には円高が進み109円台になっています。今後どう動くかについては正反対の意見も含めていろいろあるようで、結局は誰にも良く解らないということなのでしょうが、やっぱり「有事のドル」という反応は、かつてとはだいぶ違うようです。

 ということになりますと、結局は「世界の警察官」の役割は、負担は高いが経済的な成果にはつながらない、ということになるのでしょうか。
 トランプ大統領の決断がどのようなものなのか、それがアメリカ経済にどのような影響を持つのか、世界はそれにどのように反応するのか・・・・。
 あまり結果も見えない複雑なパズルに進んでいかないことを願うばかりです。

「保護主義に対抗」を削ったG20

2017年03月19日 11時06分40秒 | 国際経済
「保護主義に対抗」を削ったG20
 ドイツの保養地バーデンバーデンで開かれていたG20は昨日閉幕しました。
 結果は、アメリカのトランプ政権の威力は絶大という事を世界に示す形となりました。

 第2次大戦後の世界経済は、基本的に自由化路線、保護主義からの訣別を標榜して、世界経済の成長を支えてきました。しかし、その先頭に立っていたアメリカで、従来路線とは正反対の「アメリカ経済保護」「アメリカ・ファースト」を掲げたトランプ政権が登場しました。

 結果はどうかと注目していましたが、表題に書いた通りでした。代わりに入ったのは「世界経済への貿易の貢献を高めるよう取り組む」という文言で、「アメリカが万年赤字のような状態では、貿易が世界経済に貢献しているとは言えない」と読めそうです。

 確かに、アメリカが万年赤字では世界経済は不安定です。赤字をファイナンスするのは金融ですから、いつまたリーマンショックのようなことが繰り返されるのか不安は付きまといます。

 共同声明では、さらに「過度の世界的な不均衡を縮小し、さらなる包摂性と公正さを高め、格差を縮小するために努力する」という事だそうで、解りにくい表現ですが、貿易不均衡を縮小しよう、アメリカの赤字を少なくしようという趣旨なのでしょう。

 為替については、「為替相場の過度な変動や輸出を増やすための通貨切り下げへの誘導はいけない」とのことですが、 マネー・マーケットはどう反応するでしょうか。

 感じられたのは、トランプ路線をそのまま代弁したアメリカ代表のムニューシン氏の威力です。アメリカは悪くない、世界の輸出を受け入れ、輸出国はアメリカに頼り、結果はアメリカの万年赤字、輸出国は節度を考えろ、アメリカへの輸出ばかりに頼るな、という事なのでしょう。

 気持ちは解らないでもありませんが、通常の場合は、貿易赤字だったら、働いて生産性を上げ、産業の競争力をつけ、世界が買ってくれるような良い品物やサービスを出来るだけや安くできるようになることこそが重要なのですよ、という所ですが、今のアメリカにはこうした思考回路はないようです。

 トランプさんはもともと不動産業ですから、製造業などに比し生産性概念が希薄なのかもしれません。
 それでも、アメリカという大猫の首に敢て鈴をつけるような意見は、矢張り出ないのでしょうか。

 翻って日本は、貿易収支はともかく、経常収支では万年黒字国です。何時、不均衡という矢が飛んでくるやも知れません。
 このブログでも繰り返し書いていますように、 消費拡大を本気で考え、黒字減らしを自主的に目指すべきでしょう。
 それはアメリカのためにもなるでしょうが、本来、日本経済の安定成長への道なのです。

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<いつもお読みいただき有難うございます>
 お陰様で、昨日でアクセス数が10万を超えることが出来ました。2006年にplalaのbroachで出発して以来の累計は37万を超えています。お読みいただいている皆様には、心から感謝申し上げます。
 今後も、出来るだけ客観的データをベースに、続けてお読み頂けるような論評を書いていきたいと思っております。
 何卒、宜しくお願い申し上げます。(tnlabo)
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国際貢献の役割を大切にしよう

2017年03月13日 20時49分21秒 | 国際経済
国際貢献の役割を大切にしよう
 サウジアラビアの国王が来日しました。王子、閣僚、財界人など多くの人たちを同伴、総勢ほぼ1000人という報道です。
 サウジアラビアの国王の来日は46年ぶりとのことですが、報道によれば、今回の来日は、日本からの技術援助が主眼という事です。

 世界第二の産油国の王様としても、今後、長い目で見て、産油国というだけでは永続的な経済発展は望めないかもしれない、今から持てる資源を有効に使って、科学技術立国を目指さなければならないとお考えなのでしょう。
 そして、今回、訪日という選択をされたのだと拝察するところです。

 サウジアラビアが日本に目を付けたという事は、諸種の事情はあるでしょうが、日本にとっては大変有難いことだと思います。
 権力を持たず、人畜無害で平和の希求し、無資源国にもかかわらず世界有数の経済大国、科学技術、文化、芸術からアニメまで世界有数の実績を上げている国日本が、サウジアラビアに協力できることは沢山あると思います。

 戦後、平和国家になった日本は、アジアにおいては、文化交流、経済協力、技術協力を通じて、21世紀はアジアの世紀と言われるアジアの発展にそれなりの貢献をし、ともに発展をしてきたと思います。
 こうしたチャンスが、はからずも今回は中東の雄、サウジアラビアとの間で進む可能性が出てきたという事ではないでしょうか。

 もう1つの大事なニュースは、岸田外相が、5月にPKOの自衛隊が撤収する南スーダンに600万ドル(6億9000万円)の人道援助をすると記者会見で発表したことです。
 人道援助はもちろんカネは必要ですが、同時にその金には心がついていなければなりません。

 南スーダンに平和をもたらすことが最高の人道支援でしょうから、岸田外相も、今回に援助については、単に食糧援助の資金といったものではなく、政治的なプロセス、包括的な国民対話、人材育成も重視したものと言われたようです。

 国内的には現状の日本経済はいろいろと大変です。しかし、客観的に見れば、日本には卓越した技術もあり、国民の貯蓄に支えられた資金もあるのです。
 こうした日本特有の資源を有効に使うチャンスが、恐らく次第に増えてくるでしょう。その中で、(出しゃばることの嫌いな日本ですが)次第に、前回も触れましたように、触媒的な役割、仲介者としての役割を果たしうるチャンスも増えるでしょう。

 アジアの中でも、日本は平和な国か、好戦的な国か未だ評価は分かれるようです。国際理解には色々な要素もあり、定着には長い時間がかかるでしょう。しかし、日本がその道を進むことに、何かフォローの風が吹いてきているように感じられます。

1兆ドル必要はトランプのアメリカの話、日本は・・・

2017年03月02日 11時23分14秒 | 国際経済
1兆ドル必要はトランプのアメリカの話、日本は・・・
 昨日はトランプ大統領の両院議会演説に影響される前にと急ぎ、午前中に「トランプのアメリカ」を書きましたが、午後報道されたトランプ演説の内容からも、矢張り、本当の問題点は消えないように感じられます。

 演説そのものは、極めてまともだったように思います。特に脱線もなかったようで、名前はドナルドですが、今回の演説は説得調で「それが出来れば素晴らしい」という理想も随所にちりばめ、最後には「夢」を語り、「演説としては」素晴らしかったように思います。

 “America first” “ Make America great again” といった繰り返されるフレーズは、アメリカ人のプライドをくすぐる「殺し文句」でしょう。
 トランプ大統領自身の変化、共和党内の結束、アメリカ国民の融和、の3条件が、この演説で見れば、一歩前進と思われるところですが、その実現を願うところです。

 「言うは安く、行うは難し」です。演説の内容をどう実践していくかですが、経済・経営的な目から見れば、減税や画期的な医療システムなど収入減、コスト増に関わることは具体的中身は示されず、1兆円のインフラ投資といった支出増が目玉に置かれていることです(その分、他の財政支出が減るとのことですが、その中身は不明)。

 本来なら、そのためには「アメリカ人が勤勉に働かなければならない」という指摘になるはずです。アメリカを「偉大な国に再建」と言っても、それは、アメリカ人が働いて、「生産性」を上げなければ万年赤字国脱出不可能です。しかしトランプさんの頭の中には「生産性」という言葉はないようです。

 トランプさんの望みの綱は、海外企業がアメリカに投資し、その力で、アメリカの経済が活発化することのように見えます。人は入れないが、カネは入れる。これは確かにアメリカにとっては合理的です。しかし、コスト高のアメリカでどこまで可能でしょうか。

 生産性を上げず、コスト高を放置して「偉大な国」になるには、 ドル安でコスト高を消すか、他国のカネを上手に(安価に)活用するといった方法しかないでしょう。
 現状、マネーマーケットはアメリカの「まだ見ぬ将来」を買ってドル高、株高、日本もの円安で株高と快調の走り出しのようですが、長い目で見れば、まだ何もトランプ構想を支える経済基盤はないのです。

 日本としては、アメリカの実体経済の動きを見極め、アメリカは日本の巨大な貯蓄をどう見ているのか(ロス財務長官の日本の 年金基金に関する発言なども含めて)に十分注意を払いながら、アメリカが本当の「健全で」偉大な国になるように協力することが必要なように思われるところです。

トランプのアメリカ、予想される今後は?

2017年03月01日 12時07分50秒 | 国際経済
トランプのアメリカ、予想される今後は?
 トランプ大統領は、お得意のツイッターを中心に、矢継ぎ早に政策の方針を打ち出しています。
 「有言実行」か「論より実行」か解りませんが、成果が上がったと強調することは確りとやっているようです。

 日本としての関心は「それで日本への影響はどうなるの」という事でしょうが、読み方は大変難しいとしても、これまでの様々な状況から、何か見えてくるものがあるような気がします。

 まず「アメリカ・ファースト」は基本的に変わらないでしょう。「トランプ・安倍会談」でも、それを理解してくれる日本には最大の好意を持つのかもしれません。
 台湾問題でぎくしゃくした対中関係も、今修復に動いているようで、具体的な個別問題は別として緊張緩和を目指す方向にあるようです。

 ロシアとの問題は、少し冷却期間を置くのかもしれませんが、緊張緩和、友好の方向を模索しているのではないでしょうか。
 ヨーロッパにはNATOの強化を要請しましたが、それはヨーロッパ体制の補強が必要と考えているのでしょう。

 この2つは相矛盾するようですが、トランプ大統領のアメリカとしては、もう「世界の警察官はやめる」、「アメリカはアメリカ自身の問題に専心する」というが本来のスジだとすれば、それなりに理解できると思います。端的に言えば、国内に専心するためには、海外での金がかかることは出来るだけ減らそうと考えるのが自然でしょう。

 今回は防衛予算の1割増額を打ち出しました。オバマ大統領の時代に2割ほど削減したのを逆転させたという事ですが、これは多分、世界の紛争に積極的に介入しよう(世界の警察官)ではなく、国内に専心するためには、防衛力を圧倒的に強くすることが必要、という甲殻類的な発想の結果ではないでしょうか。

 であれば、これは当面国内産業を潤します。ある意味では「アメリカ・ファーストのためのインフラ投資(劣化した軍隊の再編と言っています)」でもあるわけです。そう考えれば、「老朽した」国内インフラへの積極投資の一環とういう意味合いを持つのでしょうか。

 FRBとの関係はまだわかりませんが、政権の中にはマネーマーケットの手練れが増える様相です。高コスト国アメリカのファイナンス戦略は予断を許さないものになるのかもしれません。

 こんなアメリカの姿を想像すれば、国内経済は繁栄(繁忙)を続けながら、実体経済面におけるアメリカの国際的プレゼンスは次第のその比重を小さくするという結果になっていくのではないでしょうか。この辺のアメリカも為替戦略との組み合わせは正直現状では予測できません。

 実体経済に軸足を置いた日本経済は、こうしたアメリカの動きの中で、いかなる経済戦略を立てていくか、RCEPへの取り組みも含めて、難しい局面での真価が問われそうです。