2016春闘集中回答日:目立つ労使の慎重さ
今年の春闘は昨3月16日(水)が集中回答日でした。マスコミは今年の春闘妥結額は「官製春闘は失速」とか「昨年を大幅に下回る」といった論調です。
このブログでも、繰り返し書いてきていますように、今年は、政府の自己都合による「労使の意向を無視した」大幅賃上げ論で、正常な労使の春闘論じも混乱して、どうなることかと思っていましたが、結局は労使の自主性により、無理のないところで落ち着くようで、よかったと思うのと同時に、この先、さらに労使のきめの細かいフォローアップを期待したいと思うところです。
リーダー格であるトヨタの場合を見ますと、ベースアップは昨年の半分の1500円、それに定期昇給相当分が7300円、合計8800円ということになります。
長期不況の中では賃金体系の維持(定期昇給は確実に実施)の要求が基本で、定期昇給さえも延伸とか減額とか中止といった場合もありましたが、定期昇給の完全実施は当然、1500円とはいえベースアップがあり、加えて賞与は満額回答ということになれば、現状の経済情勢から見れば、それなりに適切な水準と言えそうです。
しかも連合の主張をベースに 組合側から自主的に要求金額を前年より下げ、余裕があれば下請け・中小への配分を可能にするといった、意図を考えれば、まさに日本的な、経済社会全体を考えた労使の良識ある対応といえましょう。
経済学における所謂トリクルダウンを、労使の手でやろうなどと発想する労使関係が、日本では現実に存在するというのは、些かほめ過ぎかもしれませんが、正に稀有のことではないでしょうか。
選挙を前に政権が最も気にする消費不振は、格差社会化を本質的に嫌い、その進展を危惧する多くの国民の将来不安に根差すのです。それに気づかず「賃上げさえすれば」と考える現政権の発想に貧困が嘆かれるところです。
もともと人口1億人を超え、GDP500兆円の規模の巨大な日本経済が、長期の不振から元気印に変わるのには時間がかかります。それは社会全体から将来不安感が薄らぎ、これからの生活に庶民が希望を持てると確信するようになって初めて動き始めるのです。
経済政策といいますが、金融政策や財政政策はあくまでも医者の処方する薬のようなもので、良い医者は「薬が治すのではありません、あなたの体の回復力が治すのです」と教えてくれます。
必要なのは国民の気持ちの中に、「明日は回復して元気なる」という意識、確信を持たせることなのでしょう。これはスローガンではできません
スティーグリッツやクルーグマンの講義を聞いても、財政出動をしなさいとか、消費増税はダメとかマイナス金利は良くないとか、経済学者としての意見を述べるでしょう。大事なことは、聞いた生徒がいかにそれを咀嚼して適切な判断を下せるかです。
しかし、政権は安心してください。今度の選挙には間に合わないかもしれませんが、日本経済は、賢明な労使の判断と対応で、徐々ながら着実に前進していくでしょう。
日本国民と日本の労使は、それだけの判断能力と行動能力を持っています。
今年の春闘は昨3月16日(水)が集中回答日でした。マスコミは今年の春闘妥結額は「官製春闘は失速」とか「昨年を大幅に下回る」といった論調です。
このブログでも、繰り返し書いてきていますように、今年は、政府の自己都合による「労使の意向を無視した」大幅賃上げ論で、正常な労使の春闘論じも混乱して、どうなることかと思っていましたが、結局は労使の自主性により、無理のないところで落ち着くようで、よかったと思うのと同時に、この先、さらに労使のきめの細かいフォローアップを期待したいと思うところです。
リーダー格であるトヨタの場合を見ますと、ベースアップは昨年の半分の1500円、それに定期昇給相当分が7300円、合計8800円ということになります。
長期不況の中では賃金体系の維持(定期昇給は確実に実施)の要求が基本で、定期昇給さえも延伸とか減額とか中止といった場合もありましたが、定期昇給の完全実施は当然、1500円とはいえベースアップがあり、加えて賞与は満額回答ということになれば、現状の経済情勢から見れば、それなりに適切な水準と言えそうです。
しかも連合の主張をベースに 組合側から自主的に要求金額を前年より下げ、余裕があれば下請け・中小への配分を可能にするといった、意図を考えれば、まさに日本的な、経済社会全体を考えた労使の良識ある対応といえましょう。
経済学における所謂トリクルダウンを、労使の手でやろうなどと発想する労使関係が、日本では現実に存在するというのは、些かほめ過ぎかもしれませんが、正に稀有のことではないでしょうか。
選挙を前に政権が最も気にする消費不振は、格差社会化を本質的に嫌い、その進展を危惧する多くの国民の将来不安に根差すのです。それに気づかず「賃上げさえすれば」と考える現政権の発想に貧困が嘆かれるところです。
もともと人口1億人を超え、GDP500兆円の規模の巨大な日本経済が、長期の不振から元気印に変わるのには時間がかかります。それは社会全体から将来不安感が薄らぎ、これからの生活に庶民が希望を持てると確信するようになって初めて動き始めるのです。
経済政策といいますが、金融政策や財政政策はあくまでも医者の処方する薬のようなもので、良い医者は「薬が治すのではありません、あなたの体の回復力が治すのです」と教えてくれます。
必要なのは国民の気持ちの中に、「明日は回復して元気なる」という意識、確信を持たせることなのでしょう。これはスローガンではできません
スティーグリッツやクルーグマンの講義を聞いても、財政出動をしなさいとか、消費増税はダメとかマイナス金利は良くないとか、経済学者としての意見を述べるでしょう。大事なことは、聞いた生徒がいかにそれを咀嚼して適切な判断を下せるかです。
しかし、政権は安心してください。今度の選挙には間に合わないかもしれませんが、日本経済は、賢明な労使の判断と対応で、徐々ながら着実に前進していくでしょう。
日本国民と日本の労使は、それだけの判断能力と行動能力を持っています。