最近の賃金問題についての補足など:日本的経営と賃金
人事制度や賃金制度は、欧米は欧米なりに、日本は日本なりにそれぞれの社会・文化的背景によって決まってきています。
一部分だけのすり合わせをしたとしても、それが全体のバランスを崩すようなことであれば、結局はうまくいきません。
戦後日本の経営者の中には、欧米の職務給は大変合理的だと考えた人もいたようです。当時経営者の団体であった日経連(日本経営者団体連盟:2002年経団連と統合して日本経団連、通称経団連に、)は、職務給を導入すれば、日本の賃金制度は合理的なものになると考え、職務給を導入しようと試みていました。
アメリカから職務給の在り方を学び、職務分析の手法を導入し、日本語に翻訳して職務分析のセミナーを長期に継続して実施し、昭和39年には「職務分析センター」を設立、職務給の導入に尽力していました。
しかし現実に企業のやっていたことは、賃金の大部分は年功的な「基本給」で、一部に「職務給的な部分」を付け加えるというのが一般的でした。
日本の企業は、職務があって、その職務に人を採用するのではなく、「いい人」がいれば雇って、会社の中でいろいろな役に立つ仕事をしてもらうという方式です。
欧米では企業は「職務の集合体」、日本では「人間集団」です。職務に人を当てはめるのではなく、その人に適した職務をやってもらうのです。ですから、日本の企業では、人事異動があって、いろいろな仕事を経験し、優れた「社員」に育てます。
人事異動で職務が変わるたびに賃金が変わるようでは巧く行きなせん。結局、人事異動で職務が変わっても賃金は同じで、賃金は、仕事ではなく、『人』についていることにらざるを得ません。
こうして数十年たった今も職務給は流行らず、年功と能力をブレンドした「職能資格給」が一般的です。
一方、非正規の賃金は、日本でも「職務と地域」によって決まってきます。これは企業が決めるのではなく、地域のマーケットが決めるのです。企業はマーケットの賃金で非正規従業員を雇います。
簡単に言ってしまえば、この非正規従業員の賃金制度を全従業員に適用すれば、職務給が貫徹することになります。しかしそれでは日本の企業はうまくいかないでしょう。
日本の企業は、戦後、従業員の身分を廃して全員を社員とし、地域のマーケットではなく、その企業の賃金制度を適用することにしてきました。これは人間を労働力として雇うのではなく、企業という人間集団の仲間に入れるという考え方です。
そしてこれは日本の社会文化的背景からきているのです。
失われた20余年の深刻な不況の中で、企業はサバイバルのためにコストの安い非正規従業員を増やしました。そして将来不安からこの癖がなかなか抜けません。
大事なことは非正規の賃金を上げることではなく、非正規を出来るだけ正規にすることです(時にはそれで手取り賃金が下がることもあるようですが)。それこそが雇用の安定のための本筋です。
今、企業の中では、こうしたことを労使で十分に話し合って、双方にベストの道を探るような労使の話し合いと協力、そして努力が必要なのでしょう。
人事制度や賃金制度は、欧米は欧米なりに、日本は日本なりにそれぞれの社会・文化的背景によって決まってきています。
一部分だけのすり合わせをしたとしても、それが全体のバランスを崩すようなことであれば、結局はうまくいきません。
戦後日本の経営者の中には、欧米の職務給は大変合理的だと考えた人もいたようです。当時経営者の団体であった日経連(日本経営者団体連盟:2002年経団連と統合して日本経団連、通称経団連に、)は、職務給を導入すれば、日本の賃金制度は合理的なものになると考え、職務給を導入しようと試みていました。
アメリカから職務給の在り方を学び、職務分析の手法を導入し、日本語に翻訳して職務分析のセミナーを長期に継続して実施し、昭和39年には「職務分析センター」を設立、職務給の導入に尽力していました。
しかし現実に企業のやっていたことは、賃金の大部分は年功的な「基本給」で、一部に「職務給的な部分」を付け加えるというのが一般的でした。
日本の企業は、職務があって、その職務に人を採用するのではなく、「いい人」がいれば雇って、会社の中でいろいろな役に立つ仕事をしてもらうという方式です。
欧米では企業は「職務の集合体」、日本では「人間集団」です。職務に人を当てはめるのではなく、その人に適した職務をやってもらうのです。ですから、日本の企業では、人事異動があって、いろいろな仕事を経験し、優れた「社員」に育てます。
人事異動で職務が変わるたびに賃金が変わるようでは巧く行きなせん。結局、人事異動で職務が変わっても賃金は同じで、賃金は、仕事ではなく、『人』についていることにらざるを得ません。
こうして数十年たった今も職務給は流行らず、年功と能力をブレンドした「職能資格給」が一般的です。
一方、非正規の賃金は、日本でも「職務と地域」によって決まってきます。これは企業が決めるのではなく、地域のマーケットが決めるのです。企業はマーケットの賃金で非正規従業員を雇います。
簡単に言ってしまえば、この非正規従業員の賃金制度を全従業員に適用すれば、職務給が貫徹することになります。しかしそれでは日本の企業はうまくいかないでしょう。
日本の企業は、戦後、従業員の身分を廃して全員を社員とし、地域のマーケットではなく、その企業の賃金制度を適用することにしてきました。これは人間を労働力として雇うのではなく、企業という人間集団の仲間に入れるという考え方です。
そしてこれは日本の社会文化的背景からきているのです。
失われた20余年の深刻な不況の中で、企業はサバイバルのためにコストの安い非正規従業員を増やしました。そして将来不安からこの癖がなかなか抜けません。
大事なことは非正規の賃金を上げることではなく、非正規を出来るだけ正規にすることです(時にはそれで手取り賃金が下がることもあるようですが)。それこそが雇用の安定のための本筋です。
今、企業の中では、こうしたことを労使で十分に話し合って、双方にベストの道を探るような労使の話し合いと協力、そして努力が必要なのでしょう。