経団連、同一労働・同一賃金に異議
経団連の正式な文書を入手したわけではありませんが、報道によれば、経団連が安倍政権の主張する「同一労働同一賃金」に異議を唱えたということです。
理由は「日本では勤続年数や将来性などを考慮して賃金を決めている」だから「欧州型の導入は困難」そして「企業ごとの同一労働の基準を作ってきちんと説明できることが必要」ということのようです。
それぞれに自社の賃金制度を整備している大企業の組織体である経団連が、政府の言う「同一労働・同一賃金」を認めたら、傘下の企業は未曽有の賃金制度の大改革を強いられることになるので、経団連としても、一言いっておかなければならないのは当然でしょう。
政府の言う「 同一労働・同一賃金」はもともと極めて単純な発想の産物のようで、それは同じ仕事をしている非正規労働者の賃金が、正規労働者の賃金より大幅に低い、これはおかしいということで、増加している低賃金の非正規労働者の支持を得たいというもののようです。
これは一見妥当で、賃金が違っていいのだという説明は難しいので、多くの人もそうだなと思い、心情的に賛成し、経団連もあえて異論は唱えなかったのでしょう。
しかし先日困った判決が出ました。60歳で定年再雇用になったトラック・ドライバーが、仕事は変わらないのに賃金が2-3割下げられた、と訴えた件で東京地裁で「定年前に戻すように」との判決が出たのです。
すでに「 日本型賃金制度をどう裁く」書きましたように、定年再雇用時の賃金引き下げは、年功賃金制の中のもので、賃金制度として労使が合意しているものです。
これには経団連もびっくりしたでしょう。
この判決が定着するとは思いませんが、こうした問題が起きる背景には、欧米文化と日本文化の質的な違い、その反映としての企業組織の意味合いの違い、それによる人事・賃金制度の違いといった文化人類学的なものがあり「舶来崇拝思想」では対応も解決もできない部分があるのです。
例えて言えば、賃金は日本では人間についている「属人給」が基本で、欧米では仕事についている「職務給」が基本です。その背後には、日本の企業と人間の関係は基本的に長期的で、企業が人を雇う「入社」で、欧米では、職務に人を当てはめる「欠員補充」が通常の形になります(新卒定期採用などはありません)。
日本的経営は欧米の経営とは文化的背景が違うのです。そして、多分これからも、日本的経営と欧米型経営は競い合って、お互いに長所を取り入れながら進化していくでしょう。
しかし数千年、1万年という長い時間をかけて形成された社会・文化についての基本認識の習合には更に長い時間がかかるでしょう。
単なる近視眼、鳥の目でない虫の目で、部分だけを見て判断するといったことは決して良い結果を生まないでしょう。
今回の経団連の意見表明は、こうした基本的な視点を含めて論評されるべきものではないでしょうか。
経団連の正式な文書を入手したわけではありませんが、報道によれば、経団連が安倍政権の主張する「同一労働同一賃金」に異議を唱えたということです。
理由は「日本では勤続年数や将来性などを考慮して賃金を決めている」だから「欧州型の導入は困難」そして「企業ごとの同一労働の基準を作ってきちんと説明できることが必要」ということのようです。
それぞれに自社の賃金制度を整備している大企業の組織体である経団連が、政府の言う「同一労働・同一賃金」を認めたら、傘下の企業は未曽有の賃金制度の大改革を強いられることになるので、経団連としても、一言いっておかなければならないのは当然でしょう。
政府の言う「 同一労働・同一賃金」はもともと極めて単純な発想の産物のようで、それは同じ仕事をしている非正規労働者の賃金が、正規労働者の賃金より大幅に低い、これはおかしいということで、増加している低賃金の非正規労働者の支持を得たいというもののようです。
これは一見妥当で、賃金が違っていいのだという説明は難しいので、多くの人もそうだなと思い、心情的に賛成し、経団連もあえて異論は唱えなかったのでしょう。
しかし先日困った判決が出ました。60歳で定年再雇用になったトラック・ドライバーが、仕事は変わらないのに賃金が2-3割下げられた、と訴えた件で東京地裁で「定年前に戻すように」との判決が出たのです。
すでに「 日本型賃金制度をどう裁く」書きましたように、定年再雇用時の賃金引き下げは、年功賃金制の中のもので、賃金制度として労使が合意しているものです。
これには経団連もびっくりしたでしょう。
この判決が定着するとは思いませんが、こうした問題が起きる背景には、欧米文化と日本文化の質的な違い、その反映としての企業組織の意味合いの違い、それによる人事・賃金制度の違いといった文化人類学的なものがあり「舶来崇拝思想」では対応も解決もできない部分があるのです。
例えて言えば、賃金は日本では人間についている「属人給」が基本で、欧米では仕事についている「職務給」が基本です。その背後には、日本の企業と人間の関係は基本的に長期的で、企業が人を雇う「入社」で、欧米では、職務に人を当てはめる「欠員補充」が通常の形になります(新卒定期採用などはありません)。
日本的経営は欧米の経営とは文化的背景が違うのです。そして、多分これからも、日本的経営と欧米型経営は競い合って、お互いに長所を取り入れながら進化していくでしょう。
しかし数千年、1万年という長い時間をかけて形成された社会・文化についての基本認識の習合には更に長い時間がかかるでしょう。
単なる近視眼、鳥の目でない虫の目で、部分だけを見て判断するといったことは決して良い結果を生まないでしょう。
今回の経団連の意見表明は、こうした基本的な視点を含めて論評されるべきものではないでしょうか。