tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

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消費者物価9月、上昇傾向は続きそうですが

2022年10月21日 11時26分25秒 | 経済
今朝、総務省から9月分の消費者物価指数が発表になりました。
例月通り消費者物価の動きを追いかけてみましょう。

マスコミでは前月2.8%の上昇だった日本の消費者物価上昇率(年間)が3.0%になったという見出しが多いようですが、実は8月から「総合」指数は3.0%で9月も同じという事です。

      消費者物価3指数(原指数)の動き

                  資料:総務省「消費者物価指数」
政府は少しでも低い方がいいという事でしょうか、この頃「生鮮食品を除く総合」の数字を好んで使うようですが、家計費では生鮮食品は当然入って来るのですから「総合を使った方が正直という事でしょう。
      消費者物価3指数の対前年同期比の推移

                       資料:上に同じ
最近は生鮮食品と言っても天候に左右されるよりはハウス栽培で灯油の値段次第という事もあるようで、大体「総合」の方が0.2%ほど高くなっています。9月は、グラフで見ますように、昨年の9月の「総合」指数がちょっと高かったもので、その分今年の「総合」の対前年同月比が低くなって、「生鮮を除く総合」と同じ3.0%になったという事です。

全体的な傾向を見ますと、上の原指数のグラフのように、上昇基調が続いていて、これからも原油やLNGの価格上昇があれば消費者物価は上がり続ける気配です。

更に、此処で気を付けておかなければならない事は、一番下の緑色の線「生鮮食品とエネルギーを除く総合」の動きです。

この指数はエネルギー価格の上昇は入っていませんから、日本の中で自家製インフレが起きているかどうかを示すものです。

昨年あたりは下がっていました。輸入原材料などの価格が上がっても、国内価格に転嫁するのは良くないという雰囲気で、輸入部門が損を被ったり、政府が補助金を出したりで、値上げを抑えて来たのです。

そうした雰囲気が続いた中で、もう我慢できない、値上しなければやっていけないという事で今年に入って、加工食品や調味料など何万品目をメーカーが一斉に値上げ宣言を始めました。

業界によっては、何年もの我慢を続け「もう限界」という事で上げていますから、この動きは次第に、対個人サービス、配達から理美容、その他、多様なサービス料金といった分野にまで広がって来ています。

ただ国際比較をしますと、欧米ではこの分野の上昇率が5~6%に達しているもが一般的ですが、日本は上がって来たと言っても年率1.8%程度ですから、未だ輸入品の価格転嫁は、遅れていて、今後は2%を越えて、上がる可能性はあるのではないでしょうか。

こう見てきますと物価上昇はまだ続くと思われますが、グラフのメモリを見て頂けば分かりますように、日本の場合は8%とか10%と言ったことにはならないという真面目な国民性ですから特に心配することはないように思われます。

心配するとすれば、こうした物価の上昇にきちんと対応するような「賃金の引き上げ」を来春闘にかけて企業がどこまで真面目にやるかでしょう。

そこで企業が、今迄のように賃金を出し渋ると、景気は一層悪くなるでしょうし、それを政府がカバーしようと一律10万円と野党の一部が要求するような補助金で辻褄を合わせようとすると、政府の財政破綻がますます深刻化するでしょう。

インフレが進んだとしても、外国より低い率であれば、日本経済に実害はありません。逆にあまりインフレ率が低いと、また外国から「円高にしろ」という要求が出る可能性が強まりそうで、その方がずっと日本経済にとっての危険は大きいでしょう。

連合の頑張り、経営者の従業員の生活を守る決断が期待されるところです。