tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

2022年7-9月GDPは家計消費支出に注目

2022年11月15日 14時26分53秒 | 経済
今日、内閣府より今年7-9月の四半期GDPの速報が発表になりました。

マスコミでは、四半期ぶりのマイナス成長でマイナス02%、年率1.2%のマイナス
といった見出しで、コロナ第7波と輸入物価の上昇、加えて消費者物価の値上がりで、日本経済は不振といった感じですが、どうなのでしょうか。

確かに原油価格上昇をはじめ、円安問題が起き、消費物資の広汎な値上げの集中といった何か日本経済の異常事態といった時期に入り心配も多い所ですが、見方を変えると違った面が見えてきます。

下の図表は、このブログではいつもそうですが、少し長期的な動きを見ようと対前年同期比の実質成長率を見たものです。
    
    GDPと消費支出の年間成長率(実質)の推移:%

        資料:内閣府「四半期GDP速報」(2022年7-9月)

この図表だけ見れば、日本経済は、消費支出を中心に順調に伸びているように見えますが、一方では、輸入価格高騰による国際収支のマイナスや政府支出の制約などで、消費が久方振りに元気に伸びたのにGDPは増えないという事になっているのです。

アベノミクスが立派なスローガンを掲げても、長く不振を続けてきた日本経済は、コロナ禍で一層の打撃を受けてきました。
このブログでも、その原因が消費の不振にあると毎度指摘して来ました、消費不振は、アベノミクスのアキレス腱でしたが、ここに来て少し様子が変わってきました。

このブログで毎月追いかけている「平均消費性向」(2人以上勤労初世帯の「可処分所得に占める消費支出の割合)が今年に入って長期低迷を脱して来るような動きをしているのです。

家計の消費支出はGDPの半分強を占めるGDPの最大の構成要素ですが、これまで長い間、将来不安・老後不安などで、家計は貯蓄に専念し、日々の生活である消費支出は、常に切り詰められるような状況でした。

ところが、コロナ禍で蟄居生活を強いられた反動でしょうか、この所、収入は伸びなくても、今日の生活を少しは楽しもう、もう我慢も限界という事でしょうか、平均消費性向の上昇が顕著なのです。

上のGDP速報のグラフでも昨年の7-9月に比べて今年の7-9月の家計消費は4.4%伸びていますが、今日のGD速報の「雇用者報酬(7-9月に支払われた賃金の総額)」は前年同期比でマイナス1.6%なのです。(数字は実質値)

つまり、日本人も勤倹貯蓄一本槍から、少し今の生活を楽しむような気分になって来たのかなと思われるような数字の動きなのです。

皆様のご家庭はどうでしょうか。こうした意識変化が現実であれば、これからの日本経済に必要なのは、来春闘で、長らく抑えられていた「賃金の上昇」を実現し、それにより経済の生産と消費のバランスのとれた日本経済をとっり戻す事でしょう。

昨今の輸入原材料などの値上がり、アメリカの都合で起きた円安、国内の日用品等の一斉値上げといった状況は、基本的には一過性のもので、混乱の時期が過ぎれば、いずれ正常な状態に戻るでしょう。

少し長期に日本経済の動きを見れば、そろそろ長期低迷のトンネルを抜ける条件が揃いつつあるような見方もできるのではないでしょうか。

国民の意識変化と上手にマッチした政府の政策、加えて労使の対応が期待されるところです。