tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

人生第2の転換点、決めるのは誰、そして結果は? 

2022年11月01日 17時46分27秒 | 経済
日本人の平均寿命の伸びに年金財政問題も絡んで、前2回書いていきましたが、今回は「就労から引退」という人生第2の転換点をみんなで考えて決め直そうという問題です。

これは学業から就職という人生第1の転換期の後にいつかは来ることで、平均寿命の伸びと密接にかかわる問題で、ほとんどの日本人が今最も関心を持つものでしょう。
これは本来、個人々々が考える問題で、政府が決めることではありません。

日本人は、欧米人と歴史や文化の違いから働くことを善とし、また働くことが好きで、大切にします。その意味で、日本人の考え方に相応しい方法で対処すべき問題でしょう。

前提になるのは、平均寿命の伸びに準じた「健康寿命」の伸びです。
厚労省の調査によれば、2001~2019年の間に、健康寿命は平均寿命とほぼ比例的に伸び、2019年には、男72.68歳、女75.38歳になっています。

現実に、我々の周囲の人たちの話を聞いても、今一般的に適用の多い旧定年年齢の55歳あるいは60歳で、それまでの仕事を降り、賃金も一律に大幅に減り、職務も異動になるといった方式には不満が多いようです。

できれば自分の得意な仕事を続けたい、あるいはそれを生かして若年層のOJTをやりたいという希望もあるでしょう。慣れ親しんだ授業で、特異な仕事を続けられたらという希望は多いのです。

そして、この気持ちを大事にするのが、こうした従業員たちを雇用する企業の役割でなければなりません。

問題になるのは賃金です。企業が定年制に固執してきたとすれば、その背景には年功賃金制があったはずです。
年功賃金自体がもともと55歳迄の生涯賃金で従業員の貢献度と生涯支払賃金がバランスするというシステムでした。旧定年年齢後は賃金引き下げという今の賃金制度が一般化したのもその故です。

この、旧定年年齢以降の賃金は別体系という現在の一般化した制度を前提にすれば、企業として従業員の雇用延長は多様な可能性を持つでしょう。

企業のサイドから考えれば、これから即戦力の従業員がますます必要になってくる中で、まさに即戦力である自社で育成した人材群を、定年制や賃金制度の硬直性のために有効に活用できないような状況は早急に解消されなければならないという視点が重要になってくると考えられます。

少なくとも、企業が長い年月をかけて育成した高度人材が、中国や韓国に職を求め、かの地で重要な即戦力として貢献した結果が日本産業の衰退の原因だ、などと指摘される状況は避けなければなりません。

ここに雇用継続による企業サイドの大きな利点が発見できるのではないでしょうか。
賃金について言えば、雇用者の4割を占める非正規従業員は殆どすべてがジョブ型賃金ですし、今後、ジョブ型賃金の活用の重要な分野として、企業の雇用ポートフォリオの中で、定年再雇用者のジョブ型賃金が注目されてきているのではないでしょうか。

こうして、従業員サイドの働き続ける意欲と、企業サイドの、自社育成の人材群を、育成コストのコスパ改善意識をもって徹底活用するといった2本のベクトルが一致することで、
人材不足、育成コストの相対的効率化が達成されれば、日本産業社会の持つ本来の力の発揮が当然可能になるでしょう。

こうした構想は日本ですから可能になるので、働くことは出来れば避けたいといった意識の残る欧米の文化では不可能かも知れません。

日本の労使がその気になった時、公的年金支給時期のさらなる延伸は当然可能になるでしょう、その結果、年金財政の健全化もついて来るでしょう。
政府は、辞を低うして民間企業に、人材活用の推進を要請する必要がありそうです。

日本の人材が日本の経済発展に尽力すれば、経済成長率も高まり、ゼロ金利政策の終わり、蓄積資本には利息が付き、さらなる年金財政の公転、嘗ての様な厚生年金基金の活況、個人貯蓄の金利による増加といった長期不況以前の正常な経済活動への復元が可能になるのではないかと考えています。