tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

経済政策は労使で 1

2022年11月25日 20時04分11秒 | 経済
「新しい資本主義」「成長と分配の好循環」などのスローガンで始めた岸田政権の経済政策も、中身のはっきりしないままに行詰まっている様相です。

現状、日本経済は、世界の混乱の中ですが、長期の低迷から抜け出すための条件は何とか準備されている状況ではないかと思っています。

そうした条件の中で、政府が上手く動けないのならば、実体経済の現状を最もよく解っている民間の産業人がきちんとした方向を見定め、具体的なアクションを自主的に取っていくことが益々大事になっているのではないかと思われます。

産業人、つまり産業に携わる人間、具体的には「労使」ですが、この労使が平成の長期不況の中で動きが取れなくなり、財政出動を中心に、政府に頼むことが多くなって、労使という経済活動の主体が、自分たちの力で、日本経済を動かしていくという意識を希薄化させてしまったようです。

振返れば、1985年、政府が「プラザ合意」で「円高OK」と答え、為替レートが$1=240円から120円に、2倍の円高になった状況の中で、労使に出来ることは、日本のコスト(人件費が最大のコスト)を半分にして、国際競争力を回復するしかなかったのです。

企業に出来る事は、先ず賃下げ、人減らしですが、当時の日本企業は、雇用安定が社会の安定の基盤という意識でしたから、雇用を維持し賃金引き下げが至上命題でした。

その結果、失業率は最高でも5%でしたが、正規従業員の代りに非正規を増やすことで平均賃金を下げるという対応策の選択になってしまいました。
 
一方、労働組合に出来ることは、雇用の確保を要求する事と、賃金交渉ではゼロ回答、賃下げを受け入れる事しかありませんでした。

当然経済は不振、景気悪化ですから、あと出来ることは、政府に財政出動を頼む事ぐらいでした。

当然財政赤字は増え、財政の不健全化は進みます。当時、財界トップセミナーで、小沢一郎氏を呼び、講演の後で参加者から「財政の不健全化」を問う質問が出て、小沢氏はそれに対して、「財界が、財政出動を要請するからだ」と答えたという話を聞いたことがあります。

それでも当時の労使は辛苦の果てにリーマンショック前の2006~7年には、新卒採用が「売り手市場」になるほどまでに合理化、生産性向上に頑張ったのです。

しかし、そこでリ-マンショックでした。円レートは$1=80円に、また大幅円高です。
その後の日本経済の惨状は目を覆うほどで、「頑張れば円高」などと言われ、経済学者の中には「円レートは$1=50円になって日本は潰れる」など言う人もいました。

この惨状から脱出したのが2013~14年の黒田日銀総裁の「異次元金融緩和」です。
円レートは$1=120円となり、これは、日本の実力(購買力平価)相応の水準の回復でした。日本産業は長期不況の間にここまで生産性を上げて来ていたのです。

さてここで日本経済の復活のために何をするかが問題になります。本来アベノミクスは、為替レート正常化に次ぐ二本の矢で、日本経済を長期不況前の元気な状態の戻すことを正確に、キチンとすべきだったのでしょう。しかし・・・

次回は、アベノミクスがなぜ失敗したのかの検討も含め、今後の方向を探りたいと思いますます。