tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

国際収支の行方、円レートの行方は?

2023年08月08日 13時16分35秒 | 経済
今年の3月、「日本の国際収支は大丈夫か?」を書きました。
丁度発表された1月の経常収支が、未曾有の大幅赤字を計上したからです。

その際、今後も動きを見ていきますが、未だあまり心配する事はないのではないでしょうかといった感じで書いていました。

今日、今年上半期の経常収支が黒字になったという報道がありましたが、やはりまだ日本は、アメリカのような万年赤字国には、未だ、ならないよう頑張っているようです。

この1年半ほどは国際的なエネルギー価格の高騰などもあり経常赤字の月も出始め、何と無く心配でしたので、財務省の国際収支統計でそのあたり様子を見てみました。

結果は、下の図のような状況です。茶色の柱の貿易収支は昨年来マイナス幅の大きい月が多くなり、マスコミも貿易収支の赤字化を報告していました。

      経常収支、貿易収支、第一次所得収支の推移(単位億円)

                     資料:財務省「国際収支統計}

一方、常に黒字を稼いでいるのは第一次所得収支で、これは課外投資の収益で外国から受け取る利子や配当です。貿易赤字が第一次所得収支の黒字より大きくなりますと経常収支は赤字転落となります。

実はこのほかに、万年赤字のサービス収支(海外へのパテント料の支払いや海外映画の輸入代など)、第二次所得収支(海外への援助・贈与など:当然赤字に計上です)がありますが、グラフにしても目立たない程度のものです。

この1年半の動きを見ますと、下図で、貿易赤字の大幅な月が多いことが解ります。茶色の柱が下に伸びて、上に出ている第一次所得収支の柱の長さに近づくと、青い柱の経常収支が低くなり、10月や12月や今年1月のように、経常収支のゼロやマイナスの月が出て来ることになります.。

      輸出額、輸入額の推移(単位億円)

                        資料:上に同じ

こうした傾向も今年に入って2月からは貿易収支の赤字幅が小さくなったことで経常収支の黒字幅が確保され、矢張り現状では、日本の国際収支は、海外の資源価格が安定すれば黒字基調という事が見えてきたように思います。

という事で、赤字幅を広げた貿易収支について輸出と輸入の状況を見てみますとこれは下の図で、青い輸出の柱は、それほど低くなったわけではありませんが、茶色の輸入の柱が随分高くなり、その差である貿易赤字が拡大したことが解ります。

傾向的に輸出は伸びず、傾向的に輸入が増えるのであれば、これは赤字国への道ですがそうではなさそうです。

しかし、モノには限度があって、あまり経常黒字が大きくなると、アメリカ始め赤字国の目が険しくなります。

一方今後、欧米はインフレが鎮静化すれば金利を下げるでしょうし、日本では日銀が金利引き上げをしなければならない立場にあるようですから、これは円高材料で、円高は貿易赤字要因ですから、適切な舵取りが要請されるところでしょう。

余計なことを書きますと、インバウンドはますます増えるようですが、人気のあるmade in Japanを観光客が購入した分は「輸出」になるのだそうですから、輸出が増えるかもれませんね。