今日総務省から2023年12月の家計調査の「家計収支編」が発表になりました。
早速、2人以上勤労者世帯の「平均消費性向」を見てみました。
38.4%で昨年12月の37.2%、一昨年12月の37.3%を1ポイント強上回っていて、家計の消費意欲の高まりを示していると喜びたいところですが、周辺の関連数字を見ますと、どうも手放しで喜べないような気がして些か憂鬱さが残ります。
平均消費性向の推移(2人以上勤労者世帯、%)
資料:総務省「家計調査」
12月はボーナス月ですから、年越しの支出も必要ですが、同時に出来るだけ貯金に回し翌年6月のボーナスまで6ヶ月の生活の支えにするというのがサラリ-マン家庭の習慣ですから12月の消費性向は図のように低くなります。
その中でも平均消費性向が1ポイント以上高まったのですから、昨年の年末商戦はいくらか良かったのも頷けるところですが問題は、サラリーマン家庭の収入の問題です。
2人以上全所帯は、自営業世帯(1割強)も無職世帯(3割強)も含まれますから収入の数字の集計は無く、消費支出の数字だけですが、その消費支出の数字を見ますと12月の対前年同月比は名目僅0.4%の伸び、実質値はマイナス2.5%という事で消費は不振です。
その内の勤労者世帯の場合は、収入と支出の両方の数字があって、世帯の実収入は名目マイナス4.4%、実質マイナス7.2%という大幅なマイナスです。
同じく今日発表になった毎月勤労統計の事業所規模(企業規模ではありません)5人以上の12月速報の現金給与総額は対前年同期比で1.0%の伸び(1~12月平均1.2%)で実質は当然マイナスです。
家計調査では、家族の誰かが勤労者であれば勤労者所帯に分類で、家計補助者が勤労者の場合も集計されるので(零細企業勤務?)実収入のマイナスが目立ちます。
今春闘は円安の中で日本の賃金の低さに多くの人が気付き(連合は合少し遅れたようですが)、賃上げの必要性が経営側からも指摘される状態になって、勤労者の意識も少し明るくなったのでしょうか、収入が増えない中で消費堅調の原因は「?」です。
しかし、いずれにしても、消費需要を伸ばさなければ日本経済は「自家製デフレ」脱出は叶いませんから、消費性向上昇は貴重です。
そしてそれを後からでも確りサポートするような賃上げが必要なのですが、これは今春闘の基本的な課題です。(昨年は賃上げ率3.6%で、上記毎金統計の12月は1.0%)
単に昨年以上の賃上げでは、今年度のマイナス幅が少し小さくなくなる程度で終わる可能性もあります。
一方主要企業は収益好調で、日経平均はバブル期の38,000円を越えるだろうと言われています。日本経済の分配のアンバランスはすでに歴然です。
経団連の会長は、政党への寄付は企業の社会的責任と言われたようですが、従業員の賃金の適正水準化の方がより重要な経営者の社会的責任でしょう。
賃上げコストの「価格転嫁OK」というお墨付きも、公正取引委員会から出ています。去年今年の春闘は、「円安の場合の賃金決定はどうあるべきか」という特殊事情が背景なのです。
その点を確り認識し、経済理論に則った(大幅な)賃上げの実現を期待するところです。