前回のこのブログで、「継続的賃上げ」が出来るような日本経済にしなければならないという点を指摘しました。
これは、これまで長期に賃金が上昇しなかった(物価上昇を差し引いた実質賃金が20カ月も前年同月より低かった)日本の家計からの本当に切実な要望でしょう。
幸いなことに、今年の春闘に向けては、労働組合サイドは勿論、経営サイドの代表である経団連も「継続的賃上げ」の必要を強調しています。
労・使・生活者が揃ってその必要性を指摘しているのですから、これからは多分それが実現されるだろうと思うのですが、今回はそのために何が必要かを考えてみましょう。
昔の日本の賃金制度では、この点は、年功賃金制度の中で「定期昇給」として考慮されていました。若い時の賃金は安くても、結婚し、子供が出来るころには、家族手当も含めて、それなりの賃金になるというシステムです。
今でも連合の賃上げ要求の中に定昇分2%という形で残っていますが、戦後の高度成長とインフレの中では定期昇求10%などという企業も沢山ありました。
世の中変わって、初任給が高くなり定昇は小さくなって、定昇は若い時代中心の習熟昇給の色彩が濃くなっています。ですから「継続的賃上げ」という事になりますと「定昇+ベア」という事になって、ベースアップの重要性が高まります。
勿論正社員でないと定昇はありませんから「賃上げ」は一般的な言葉で「賃金水準の引上げ」と言い替えた方がいいのかもしれません。
ということで、上の表題は、企業が毎年従業員の賃金水準(平均賃金水準)を引き上げていくための条件は何かという事になります。
最も基本的なことは、日本人は日本のGDPで生活しているという事です。GDPが増えれば生活は良くなります。GDPは企業の資本費(収益と支払金利など)と従業員の人件費(賃金と福利厚生費など)の合計ですから、標準型はGDPの伸びた分(経済成長)、経済成長率と同じ分だけ、企業利益も賃金も増えていくという事です。
この場合のGDPは実質値です。
ですから、毎年日本人の平均賃金水準が上がるという事は、毎年日本が経済成長するという事で可能になります(経済活動以外の必要条件は戦争に巻き込まれないこと)。
これから日本経済も多分成長経済になるでしょうから、その分毎年平均賃金は上がることになるでしょう。
今迄上手く行かなかったのは、成長が少ない中で、消費者(買い手)の賃金は増えずに生産者(売り手)の利益は増えるという形になっていて、生産者が作っても売れないので生産を減らし賃金も減らすという形で経済成長が低迷していたからです。
そこで生産者(売り手)の方も、消費者(買い手)の方にGDPを分配して売上をのばさなければ経済が成長しないという事が解って、賃上げをしようという事なったのです。
複雑が事情があってこうなってしまったので、誰が悪いというより「直す」ことが大事ですから、春闘で、みんなが本気になって確り賃上げをすれば、経済は生産と消費のバランスが回復して、成長を取り戻すでしょう。
分配を直せば成長が戻ってくるという事で、岸田さんの「成長と分配の好循環」になるわけですが大事なことは「分配と成長」で順序が逆だという事です。
単純化し過ぎていろいろ意見はあると思いますが、政府も学者も企業も労組もそうならないように日頃から気を付けることが大事なようです。