tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

2025春闘:賃上げ「も」重要ですが

2025年01月23日 14時27分17秒 | 労働問題

一昨日、連合、経団連の会長が会談し、2025春闘のキックオフとなりました。今年はどんな展開になるのでしょう。

時代の流れとしては23年春闘から、経団連サイドに、不況脱出には賃上げも必要なのではという「経済と賃金の関係」への気づきが生れ、昨春闘でそれが一気に加速し、今春闘では、労使ともに、それが良かったようで、継続しようという雰囲気でしょうか。

日本の労使関係らしいところは、そうして雰囲気の中でも連合は背伸びをせず、要求基準は、基本は昨春闘と同じで、中小企業だけ+1%の6%とし、経団連の方も賃上げの「モメンタム」を重視し、中小企業の賃上げにも気を使うという相互理解の面が見えることです。

企業経営の実態の方は、すでに、賃上げ6%を発表する企業もあり、特に大企業の収益状況は日本経済の混乱にも関わらず好調を保つ所も多いようです。

経団連も、種々やりにくい面もあるのでしょうが、経営者は本来、従業員の生活をより良くすることも使命と考えるのも日本的な伝統です。

日本中の企業の代表としては、連合と共に中小企業の賃金の向上にも努力するのならば、従業員を育てて生産性を上げ、良い品やサービスをより安価で提供するという企業の社会的責任を果たす意味も大きいでしょう。

そう考えれば、親企業はサプライチェーンをなす下請け企業を育てるという責任があるのでしょう。中小企業の6%要求は高過ぎる発言をする前に中小の生産性向上に大企業が協力し努力する姿勢の徹底も重要と思われます。

連合は、定昇程度という円高不況期を脱してから、定昇+2%(実質経済成長率)という要求方式で、少し経営サイドにとって甘すぎたようですから、それに政府・日銀が掲げる物価上昇2%をプラスするとか、円安になったら、円安で日本のコストが下がった分を勘案するとかという、労働サイドとして合理的な範囲の目一杯の要求基準を決めてもよかったのではないかと思います。

経営者の中にも、かつてはラッカ-プランのように、経営の成果(付加価値)は労使が等分する(労働分配率一定)という考え方もありましたが、近年は先行き不安だから、内部留保を厚くし、BPRが1倍割れで安心したい気もありますから、もう少し頑張って要求してみてもいいかなという気がします。

ただ、これまでの労使の話し合いの中で、一番気になるのは非正規労働者が40%いるという問題です。経団連も連合も非正規の賃上げと言いますが、本当に重要なのは、「正規の正規化」です。

労働力の4割が非正規という労働力構成では嘗ての15%程度だった時代に比べて日本産業の生産性が上がらないのは当然です。

必要なことは、非正規を出来るだけ「正規化する」ことでしょう。正規化とは、正規の教育訓練をして、生産性を上げ、正規の賃金を払うことです。

就職氷河期、非正規でキャリアを始めた世代は、50歳になっても、非正規を転々として80:50問題を作り出しています。

このブログではアベノミクスの初期から非正規の正規化を指摘してきましたが、大企業でさえ、コストの低い非正規を多用する癖が治りません。

今は就職氷河期ではありません、可能な限り正規採用し、教育訓練をしましょう。非正規社員は教育訓練をしつつ正規に格上げしましょう。

非正規社員の比率が下がれば、当然、平均賃金は上がりますが、同時に従業員の平均能力も上がり、生産性も上がるのです。これが本来の人材活用です。

それが出来て日本の雇用構造は本来のあるべき姿に戻るのです。これは日本の労使に残された宿題です。忘れられては困るのです。