株価は上がっていますが、それと反対に、消費者物価の沈静化は一層明瞭になってきました。
輸入物価には一部多少の上昇が見られることは2月13日付のブログでも触れましたが、国内発の物価上昇要因が消えて来た事で、ここ当分消費者物価は沈静傾向を続けるものと思われます。
昨年秋まで加工食品、飲料、日用品などいわゆる生活必需品の価格上昇の波が激しかった原因は、下の図をご覧いただくと解るような気がします。
消費者物価主要3指数の対前年上昇率の推移(%)
資料:総務省統計局「消費者物価指数」
そうした品目が中心の「生鮮食品とエネルギーを除く総合指数」(緑色の線)が2021年から22年初めにかけてコロナによる消費不振で値上げできずに我慢した利益圧縮の取り返しをかけて22年から23年にかけて一斉に波状値上げに動いたことが大きかったように思います。この動きは昨年秋から、もうこの辺でっという事でとなったのでしょう。
「総合」や「生鮮食品を除く総合」が2023年2月に大きく下げているのは政府の電力ガスなどへの補助金のせいです。今後補助金が消えれば3本の線は収斂に向かうでしょう。
という事で、改めて2021年からの、輸入物価の上昇の中での日本の消費者物価の推移を見ますと下図です。
消費は物価3指数の推移
資料:上に同じ
日本は資源輸入国で、資源などの輸入物価の上昇分は結果的に国民が負担する事が比較的整然と行われます。これは1973年の第一次石油危機の経験から学んだ結果です。
アメリカやヨーロッパの様に海外物価の上昇率を国内価格にも賃金にも転嫁しようという動きは小さく、国内価格は輸入価格のようには上がりません。輸入物価上昇に対応する便乗値上げも便乗賃上げも大きくならず、物価上昇は合理的な範囲で収まるようです。
その結果、アメリカやヨーロッパの様に、輸入インフレの激化を金利引上げで抑えようといった政策は必要ないのです。
結果的に国際競争力が強くなるのに、更に円安になるといった困ったことが起きます。
欧米は金融引締めで物価を抑え、日本は賃上げをして物価を引き上げて彼我のギャップを小さくする必要があるのでしょう。今春闘で労使とも、更に政府も高めの賃上げをというのもその結果でしょう。
日本が少しづつ賃金インフレを起こして問題解決に近づいていくのではないでしょうか。