日本では、近年、インバウンド(外国人観光客)の急激な増加の結果、いろいろな議論が起きています。
もともと日本は外国人観光客の誘致には積極的でした。今はインバウンドという言葉が一般的になったので、このブログでも「インバウンドの盛況」といった言い方をしていますが、観光客も含めて外国人が日本に来ることについては、基本的に賛成です。
日本は極東のさらに最東端にあって、かつては行きにくい国だったかもしれません。しかし、日本の伝統的な文化や社会の在り方を知って「日本というのはいい国だね」 と言ってもらうには、実際に来て日本の人や文化、自然に触れてもらうという草の根の交流が最も大事でしょう。ですから今日のようなインバウンドの大盛況は大いに歓迎すべきだと思っています。
もちろんインバウンドの増加は日本経済にも貢献します。我々自身、海外旅行に行くときはそれなりの資金を用意しますが、今や、日本でもインバウンド消費は巨大な外貨収入になっています(昨年は5兆円超:GDPの1%弱)。
アベノミクスのようにこれにカジノがあればもっと増えるという意見もあるでしょうが、これは日本文化とは関係ない金だけの話です。
ところで、ここまでインバウンドが盛況になりますと、オーバーツーリズムという問題が起きてくるようです。これは、観光客が多すぎて、問題がいろいろ起きるという事でしょう。
もちろん観光地に観光客が来過ぎるという問題であれば、それは外国人か日本人かを問わずありうるわけで、インバウンドだけがオーバーツーリズムの原因ではありません(インバウンドは観光客全体の2割)。
これは世界中で既に起きている問題で日本はやっと今始まったという事でしょう。
例えばミラノでダ・ヴィンチの「最後の晩餐」を最初に見た頃は、ぶらりと行って「こんな教会に?」と一人でのんびり見ましたが、後年家内とツアーで行ったときは、囲いができて長蛇の行列でした(バチカンも同様)。
オーバーツーリズムは、いわば贅沢な難題という事でしょう。それだけ日本の文化や観光資源に興味を持っている人が世界に多いという事なのですから、単純に「制限をすれば」などという発想ではなく、これには知恵を絞って、出来るだけ観光客の思いに添いながら、解決する方法を、それぞれの置かれた状況に即応しながら対すべき問題でしょう。
この問題に関連してですが、姫路城の外国人向け入場料の高額設定についての議論があるようです。
といっても外国人が来ると余計なコストがかかると決めつけるのは問題があるでしょう。やはり日本人も同じと考えるべきでしょうし、外国人は金持ち、外国の観光施設の入場料は高いというのは理由にはならないでしょう。
かつてのべトナムで日本人町のあったホイアンにベトナム人と一緒に行ったとき「済みません、日本人の入場料は高いです」といわれ、まだバイクも走っていないべトナムでしたから「気にしないでください」 と言いましたが、途上国の外貨事情を考えれば了解というところでした。途上国ではと理解できても、日本では、合理的な説明は難しいでしょう。
日本はラーメンもカレーも寿司も安いですが。日本に来たら、日本人と同じ気持ちで、というのが草の根交流の原点ではないでしょうか。
それにしても日本は安いですねと言われそうですが、それは実はアメリカが利上げし、日銀がいつまでもゼロ金利だからです。日銀が金利を上げれば(上げると言うだけでも)円高は進むでしょう。日銀も、早く金融の正常化を進めなければと考えているはずです。
円高になればインバウンドは多少減るでしょう。オーバーツーリズムに関わる問題も、日米の金利差の影響を受けた、現時点での現場の苦労の一側面と考えておく必要もあるように思います。