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住まいは人権! 一般社団法人協働舎
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ちょっと遅いけど「世界」8月号を読んだ

2019-09-23 | まいにち

社会保障財源論のまやかし  伊藤周平さん

安倍晋三政権のもと「社会保障改革」と称して社会保障費の削減が加速している。社会保障の削減と政策後退は、国の財源不足や制度の維持可能性を理由に行われている。マスコミを動員して増え続ける社会保障費を賄う税財源は消費税しかないとの宣伝が執拗に繰り返されてきた。しかし、消費税増税による増税分の大半は、法人税や所得税の減税による減収の穴埋めに使われてきた。

日本の社会保障は、高齢化の進展に伴い、財政規模が拡大している。消費税はその導入当初から、社会保障の主要な財源と言われてた。そもそも社会保障は国民生活に必要な制度であり、国や自治体の予算が優先的に配分されるべき分野だ。多くの予算が社会保障に当てられることは極めて正常な財政の姿。

問題は安倍政権のもと、国の財政赤字や歳入不足を理由に社会保障費が削減され続けていること。2012年当時の民主党政権のもと「社会保障・税の一体描改革」がうたわれ「消費税収は全額社会保障4経費に充てる」と閣議決定した。しかし財務会計制度では社会保障4経費を他の歳入・歳出と区分はしていない。消費税は一般財源とされているのだ。この間の法人税の減税は消費税増税とセットとなってきた。しかし、法人は減税されても労働者の賃金には回ってきていない。労働者の実質賃金は安倍政権になって5%も減少する一方で、大企業の内部留保は約450兆円とか過去最高額を更新している。 

日本の消費税はほぼ全ての商品やサービスの流通過程にかかるため、家計支出に占める消費支出の割合が高い低所得者ほど負担が重くなる逆進性の強い税である。法人税は赤字であれば課税されず、所得税は課税最低限までは課税されないが、消費税は年商1000万円以上の事業者であれば、事業が赤字であっても納税額が発生し滞納が生じやすい。消費税は輸出還付金などで輸出大企業に恩恵を与える一方、雇用破壊税としての性質も有している。正社員を減らし必要な労働力を派遣や請負などに置き換えれば消費税の仕入れ税額の控除対象となる。実際消費税位率が5%に引き上げられた1997年以降、それに呼応するかのように、労働法制の規制緩和が進み、非正規労働者や派遣労働者が激増した。このように消費税は、貧困と格差を拡大する特徴を持つ不公平税制だ。社会保障財源の主要財源を消費税に求める限り、貧困や格差の拡大に対処するためには社会保障支出の増大が不可避となり、消費税を増税し続けなければならない。消費税は、社会保障の財源としてもっともふさわしくない。一般歳出予算には「ノン・アフェクタシオンの原則」があり特定の歳出と特定の財源を結びつけてはならないことになっている。一体改革が打ち出した消費税の社会保障財源化はこの原則に明らかに反する。

その他の社会保障の財源では日本では社会保険料収入が大きな比重を占める。日本は社会保障給付費の9割以上を社会保険方式で実施している社会保険中心の国だ。個人の所得税負担より社会保険料負担の方が大きいのは主要国の中では日本だけだと指摘されている。国民県保健、社会保険、介護保険は全て低所得者の負担が非常に大きい。

憲法25条から導出される「応能負担原則」や「最低生活費非課税原則」に従えば、社会保障の主要な財源は、累進性の強い所得税や法人税に求めるべきで、所得税や法人税の累進性を強化し、大企業や富裕層への課税を強化する税制改革が必要でる。所得税については1986年まで15段階、最高税率70%であったが現在は7段階、最高税率55%と累進性が大きく緩和されている。少なくとも最高税率の水準を1986年水準に戻せば相当の税収増になる。また、分離課税の総合課税化によって、累進課税の対象外となっている金融所得を累進課税の対象とする必要がある。所得税の基礎控除が極めて低額であり、生活保護基準に及ばない収入の人でも納税義務を負わされる。「最低生活費非課税原則」からも、基礎控除の額は現在より引き上げられる必要がある。法人税も累進税制にすれば法人税収は19兆円増加し、資本金5000万円以下の中小企業は減税になるとの試算がある。

社会保険は所得のない人や住民税非課税世帯については保険料免除とすべき。

景気後退局面に入ったとみられる現状での消費税増税はさらに景気を悪化させ、企業倒産の増加、失業率の上昇をもたらす可能性が高い。消費税増税は法人税収減の穴埋めに使われており、財政再建にはほとんど寄与していない。また複雑な軽減税率やポイント還元制度などの導入は、現場に大混乱をもたらすこと必至である。

財政危機や「社会保障財源=消費税」との不正確な宣伝が行われ、十分な検証も反論もなされていない。財政危機だから社会保障削減も仕方がない、年金なんかもらえないと諦めている若い人が多い。年金制度の正確な仕組みと170兆円を越す膨大な積立金があること、積立金をハイリスクな国内株式などで市場運用することをやめていけば、生活保護基準を上回る恒例基礎年金の支給が可能なことを話そう。政治や社会は変えられないと諦めている人たちに、明確な選択肢を示せば、投票行動につなげることができる。

                             


司法と福祉・協働のための研究会

2019-09-23 | 暮らし・社会

21日の司法と福祉協働のための研究会は連休の初日にも関わらず30名の方が参加くださいました。

  19日の中国新聞が記事を書いてくださり、この記事を見て申し込まれた方も2・3人おられました。ありがとうございます。

 

 松山の更生保護施設・雄郡寮の松田辰夫さんは矯正施設勤務41年、長崎刑務所で高齢受刑者等に対する社会復帰支援指導に関わる中、社会福祉分野の人たちとも出会い受刑者の出所後の生活のための支援が必要と感じるようになり、高松や広島刑務所でも実践してきたこと。社会福祉士資格を取得し地域福祉の推進やあらゆる生活課題への対応が必要だと感じ愛媛県更生保護施設長に就任したのちは利用者の「居場所」と「出番」の確保、「自己肯定感を高める取り組み」に力を入れてきたのご自身の体験を語られました。

 雄郡寮の様々な取り組みについてはたくさんの写真を元に説明くださいましたが、近隣の人たちとの交流についてとても力を入れておられること、また長い間のこの施設の取り組みの積み重ねがあることを強く感じました。

 

 

午後は「元祖・更生支援計画」兵庫の社会福祉士原田和明さんの「刑事司法における福祉的支援とは」

障害者・高齢者が犯罪を起こしたのではなく、犯罪をした人に障害があった、高齢者だった。障害などが犯罪を起こしたという考え方は危険。犯罪をした、そこに生きづらさを見る。

刑事処分は、公権力が強制的に生活上の制限をかけ、一方的にその処分を解除するもので、自己決定によるものではない。福祉は自己決定に基づき生活の支障を解決することを社会として支援していくことである。再犯防止は支援の結果得られるものであり、ソーシャルワークの一義的な目的ではない。

触法障害者・高齢者問題は、生活上のリスクである。犯罪をしない生活を送る自己決定を促すための環境調整を行う必要がある。これは不利益処分ではできない。

犯罪しないで生活することの快適さを認知することは自立更生にとって重要である。

司法と福祉の連携と輪型支援体制の構築は重要である。

強制された生活では矯正はできない。自らの生活を自ら選ぶことが大切。

医療観察法対象者も地域における支援の対象者である。

これからは地域共同社会における更生がポイントとなる。

「更生支援計画を作ってみよう」

司法は権威であり、他律性である。対して福祉は自律性だ。直接的な再犯防止は「『再犯させない』再犯をさせない」という他律性であるが福祉が担えるのは「『再犯しない』という自己決定を支援する」こと。たとえ不起訴や執行猶予になっても再犯しないという自己決定がなければ意味はない。再犯しない生活を送るために福祉サービスを利用することと、刑事処分を軽くするために副サー微雨を利用することは違う。

弁護士にとって刑事処分を軽くするのは仕事だが、ソーシャルワーカーにとって刑事処分を軽くするのは仕事だろうか?

そのあと、これまで原田さんが作ってきた更生支援計画を事例をもとに一つずつ説明してくださいました。

 

                             パレスチナの子どもたちに平和を